様々な専門家をコーディネートできる人材とは
押久保:お話にもあったように、デジタルマーケティングの細分化が進む今、そういう専門家をどうコーディネートするかが課題になっています。やはり、全体最適を考えて統括する人材が足りないという感覚はありますか?

橋本:あります。大きなプロジェクトだと、社内・社外を含めたくさんの方々が関わることになるので、それを“動かす”力が必要です。大切なことは2つあります。1つは、価値観を共有するということ。もう1つは、専門家に任せるということです。
富永:おっしゃるとおりで、デジタル・アナログという軸とは関係ない能力が必要ですよね。私が考えるに、それは人間に対する好奇心、そして人の反応を見る力だと思います。それがないと、どれだけテクノロジーやメディアに詳しくても意味がありません。共通の物差しとして人間系のスキルがないといけません。私はそこに重きを置いています。デジタルというのは、しょせん知識です。大切なのは、人間に対する理解です。
橋本:お客様との関係をどう作っていくかがマーケティングの根幹なので、人間理解なく、方法論だけでできることではありません。大切なのは人への共感力です。
言い換えれば、“お客様のことを考えるではなく”、“お客様の横に立てる”ということです。自分自身の中にあるお客様を元にお客様を考える、というイメージでしょうか。メーカーの立場でお客様に向き合うのではなく、人は自分と同じではないということをわかった上で、まずお客様の側に立って、そこから色々と想像力を働かせるという意味です。
富永:同意です。マーケターは、こちらの働きかけに対してお客様がどういう反応をするか見ないといけません。それにはお客様と伴走するという感覚は、必須事項だと思います。
今も昔もマーケターに必要なのは「ハート」
押久保:さて最後に、これからの展望と共に、ご自身たちの目標や構想をお願いいたします。
富永:今後、ツールやメディアはさらに変わっていくと思います。ただ、どんなに環境が変わっても、人間の方は変わりません。そこで何が必要かといえば、新旧のメディアを組み合わせた構想力や創造力を身に付けていくことが重要だと思います。
あとは、自分の軸とする見方や物差しがあるといい。たとえば私は行動経済学とか認知科学を勉強していて、ここでは負けないと思っていますし、自分の考えの軸としています。自分も含め、これからのマーケターは創造力・構想力・自分の物差しの三つが重要だと思います。
橋本:これからは「デジタルマーケティング」という言葉がなくなり、「マーケティング」に当たり前のようにデジタルが含まれるようになると思います。その「マーケティング」に何が必要なのか。それを今日、議論させていただきました。
最後に、私がメンバーによく言う言葉をご紹介します。それは「お客様の経験を高めるのは、作り手のハート」ということです。自分としっかり向き合い、他者に共感できるハートのあるマーケターになってほしいと思っています。