大ヒット映画となった「シン・ゴジラ」「君の名は。」
毎回、コンテンツがシェアされる理由を分析してきた本連載も第4回を迎えました。過去記事では、選挙期間中の政治コンテンツから音楽PVまでジャンルを問わず、シェア拡散という視点でコンテンツを紐解いてきました(過去の記事はこちら)。今回は、クチコミによる影響がますます強くなる傾向が見られる「映画作品」について解説したいと思います。
今年は邦画が豊作の年だといわれています。制作費が10億円を超えるメジャー大作から、小規模でありながらカルト的な人気を博す作品まで、邦画がここまでバラエティに富んで話題になるのは珍しいのではないでしょうか。
その中でも、大方の予想を遥かに超えて大ヒットしている作品が「シン・ゴジラ」と「君の名は。」です。「シン・ゴジラ」は、日本を代表するキャラクター「ゴジラ」の最新作とあって、東宝が社運をかけた意欲作。2000年以降のゴジラシリーズでは、最も興行収入の多かった作品でも「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」の29億円でした。しかし、「シン・ゴジラ」の興行収入は、2016年9月16日時点で65億円と、ここまでのヒットは誰も事前に予想できなかったのではないかと思われる快挙です。
また、「君の名は。」もしかりで、本作の監督である新海誠監督の前作「言の葉の庭」の興行収入が推定で約1億5000万円だったことを考えると、興行収入が100億円を突破している現状は驚愕に値します。
では、なぜここまでヒットしたのでしょうか。
「シン・ゴジラ」「君の名は。」2作品のヒット要因は、様々な形で分析されています。ここでは、映画の中身に関する論評は他に預け、両作品のソーシャルエンゲージメント状況の分析からヒット要因に迫りたいと思います。
国内映画興行収入TOP10作品のエンゲージメント数は?
まず、2作品のソーシャルエンゲージメントボリュームを見てみます。ここではTwitterのクチコミ数だけで傾向を見るのではなく、Facebook、Google+を含めたエンゲージメント数(※)を集計しています。
※エンゲージメント数:いいねやシェア、コメント、リツイートなどFacebook、Twitter、Google+での総アクション数に加え、対象コンテンツについて取り上げた記事やソーシャルメディア上における口コミなどの総数。
下の図は、2016年9月16日時点の国内映画興行収入TOP10作品のソーシャルエンゲージメント数を比較したグラフです。ここで明らかなのは、「シン・ゴジラ」「君の名は。」2作品のエンゲージメント数が、他の作品と比べて圧倒的に高いということ。興行収入でいうと、「スターウォーズ/フォースの覚醒」が116億円、次いで「ズートピア」が70億円超え、「ファインディング・ドリー」が70億円に迫ろうとしているなど、ディズニー作品が上位を独占しているにも関わらず、エンゲージメント数では「シン・ゴジラ」「君の名は。」が抜きん出ています。