ケーススタディ:MAKER Studios
世界一のYouTuber、PewDiePieを抱えてDisneyに買収されたことなどで有名なMAKER Studiosのサイトを見ると、大きくOUR BRANDSの文字が目に入ります。

MAKERは「ゲーム」「ライフスタイル」「ファミリー」「コメディ」といった4つのジャンルにフォーカスしてコンテンツフォーマットをクリエイターと共に開発していて、「その枠に当てはまらないクリエイターにはむしろ興味がない」とCEOが宣言するほど重視しています。
MAKERのCEOによると「一番重要なのはクリエイターに依存しないフォーマットを作ること」。基本的にどんなクリエイターがMCになったとしても成り立つことが重要だというフォーマットに対するコンセプトが伺えます。
欧米でここ1~2年の間でオンライン動画のアカデミー賞と呼ばれるStreamy Awardを複数回受賞し、2016年はデジタルコンテンツとして初めてエミー賞にノミネートされ、高い評価を得て注目を浴びているMAKERのブランド「Epic Rap Battles of History」は動画一本で常時一億再生を突破するヒットフォーマットです。
2人のコメディアンが歴史やフィクションの人物のパロディをしながら、ラップバトルをするという内容で「もし、スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツがラップバトルをしたら?」など英語がわからなくても日本人でもコンセプトの面白さは直感的に理解できるはず。
スーパーマン vs 孫悟空など、わかりやすくおもしろいペアリングを考えて、実際に動画のコメント欄でラップバトルの優勝者と次にやってほしいペアリングをファンに呼びかけ、一本の動画だけで20万件以上のコメントが集まるほどのファンエンゲージメントを獲得しています。
属人的な日々の動画をほんの一部にして、プレミアムコンテンツをクリエイターと一緒に生み出し、コンテンツにバリュー(価値)を寄せていることに、Disneyというコンテンツカンパニーのアイデンティティが垣間見えているとも言えるのではないでしょうか?
PewDiePieは日々アップする動画に前序のようなコンテンツフォーマットがチャンネルに存在することで、フォーマット自体にファンがつく状態になっているのが圧倒的なチャンネル登録者数を誇る要因になっているのかもしれません。
出演者やプラットフォームに依存せず、コンセプトとクオリティに価値を持たせること。上記のEpic Rap Battles of Historyのコンテンツは出演者の知名度にまったく依存せずに、「歴史上の人物をラップバトルさせる」というコンセプトと、ラップや歌詞を作るプロデューサーがキーファクターになって、出演者を入れ替えても同じコンテンツになります。
Smoshの「Every… ever」や2016年秋にスタートしました「The Big If」という新フォーマットにもSmoshの二人がほとんど出演せず、Smoshが出演者として雇ったSmosh Crewのメンバーが中心になります。Smoshの本人たちがいなくても、彼らのチャンネルのコンセプトに沿ったフォーマットとして成り立っています。
属人的なコンテンツと違って、動画に出ているクリエイターをまったく知らなくても誰でも楽しめるコンテンツが生まれるメリット。それは、コンテンツを別のプラットフォームに向けてライセンスすること、フォーマット自体を別の地域やプラットフォームに展開することなどの様々な可能性が生まれること。つまり、MCNにとってはコンテンツを使って様々なビジネスの可能性が生まれるのです。
そしてこのビジネスモデルは、世界のトップMCNのほとんどが積極的に行っていて、タイアップ案件やYouTubeからの広告収益よりもはるかに大きい収益源となっています。次回は、これらコンテンツビジネスの新潮流について紹介します。お楽しみに。