Facebookは「モバイルのマーケティングプラットフォーム」である
最近発表された調査結果(※1)では、モバイルからのトラフィックがPCを超えたとも言われる。不可逆だと考えられるこの流れは、各業界の「モバイルシフト」を加速させている。今や全世界で18億人が利用するサービス、Facebookも例外ではない。彼らは自社サービスを「モバイルのマーケティングプラットフォーム」でもあると宣言し、EC事業者の誘致などに積極的だ。
自動車業界を対象とし、「Mobile Moves Auto」と銘打たれた今回のセミナーでは、FacebookやInstagramがどのようにマーケティングを加速させるのか、本国アメリカの担当者なども交えて語られた。
※1 モバイルからのインターネット利用がついにデスクトップを追い越す― StatCounter調べ,TechCrunch 参照
進む「モバイルファースト化」 自動車購入の検討にもスマホを活用
まず登壇したのは、Facebook Japan代表取締役の長谷川晋氏。同氏は冒頭で、自動車を「20世紀最大の発明のひとつ」と称える一方、それと同じ程度のインパクトを持つトレンドとして「モバイルシフト」を挙げ、FacebookやInstagramがそのような時代において、どのような貢献をもたらせるかを語った。
同氏はアメリカの広告マーケットを例に挙げ、2016年にTVとデジタルがほぼ同じ規模にまで成長していることを指摘。またオーストラリアでは、モバイル単体でもすでにTVと並ぶ市場規模を有していることを紹介し、この流れはますます加速するだろうと語った。
長谷川氏いわく、日本国内の18歳から49歳の自動車購入経験者のうち、66%は「モバイルファースト層」であり、自動車という高価な製品の検討においても、モバイルは積極的に活用されているという。他にも、日本におけるスマホ人口が5,500万人を超えた点、メディア接触時間が10年間で7倍になった点などのデータを例示し、それによって「モバイル動画がコミュニケーションの主役に躍り出る」と断言した。
「Facebookだけでも、動画は世界中で毎日80億回も再生されています」(長谷川氏)
スキップされないためには「最初の3秒」。字幕スーパーの重要性も
続いて登壇したのは、広告会社での豊富な経験を持つFacebook Japan執行役員本部長の中村穣氏。長谷川氏から引き継ぐ形で動画の重要性を語った同氏は、動画広告の効果について説明。いわく、動画広告と静止画広告を比較したところ、動画広告のほうが認知効果が9ポイントも高かったという。
しかし、動画広告最大の壁は、視聴者が再生をスキップしてしまうこと。中村氏はこれについて、「最初の3秒」が重要だと語り、その真意を説明した。
「3秒以上動画を視聴した人の65%は10秒以上視聴し、さらにその45%以上が30秒以上視聴することがわかっています。モバイル動画では『最初の3秒』でいかにインパクトをもたらすかが重要です」(中村氏)
同氏はまた、動画広告におけるFacebook特有の仕様である「(デフォルトでは)音が出ない」ことにも言及。アメリカ・トヨタのカムリのTVCMとFacebook用CMを並べて再生し、「字幕スーパー」を利用することの重要性を語った。
Facebookの強みはターゲティング精度。業界平均63%を上回る95%
一口に「車の購入を希望している」といっても、コンパクトカーを探している20~30代の子育て世代、RV車を検討するアクティブ層、高級車に興味のある高所得者など、その属性はさまざまだ。中村氏はここでFacebookのターゲティング精度の高さについて言及。実名制を基本とし、多くのパーソナルな情報を持つFacebookであれば、それぞれの層に的確なメッセージを届けることができると語った。
「業界大手の平均で、ターゲティング精度はおよそ63%と言われています。それに対し、Facebookは95%にも達します」(中村氏)
「半数がTVを持っていない」 モバイルファースト層の現実
今回唯一のゲスト登壇者となった、調査会社カンター・ジャパン クライアント・コンサルティング ディレクターの内田氏からは、同社が18歳から49歳の車保有者に対して行った調査結果を基に、多くの興味深いデータが披露された。同氏はまず、自動車の購入希望者が検討する車種の数を紹介。ネットが生活に密着した現代では、顧客は検索や口コミサイトなどで情報を集めているため、その数がわずか約2.7台であることを指摘し、「トップ3に入らなければ候補にすらならない」ことを強調した。
続いて内田氏は、モバイルファースト層の半数がTVを保有していない、という調査結果を発表。すべてのメディアの中でスマホが占める使用時間割合も66%に達し、その数はTVやPCの5倍以上に及ぶという。
「スマートフォン利用者について、一時期は『TVを見ながらスマホを見る』などと言われましたが、すでに『スマホだけ見ている』状態になっていることが伺えます」(内田氏)
シボレー、キャデラックなど。本国アメリカでの活用事例
今回のセミナーには、Facebook本国のアメリカより、Facebook Client PartnerのBrandon Volas氏とFacebook Creative LeadのChiwei Lee氏の2名が来日。近年のガソリン価格の値下がりも手伝って自動車業界が非常に活況であることに言及しつつ、同業界のFacebook活用事例を紹介した。
まず例示されたのは、シボレーのマリブのプロモーション。今年1月にFacebookに登場した5種類のリアクションボタン(「うけるね」「悲しいね」など)の登場に合わせ、「Love(日本では『超いいね!』)」ボタンとのコラボキャンペーンとして企画されたもので、結果的に1億4,000万人へのリーチと9,000万回の動画再生という成功を収めたとのこと。
また、ゼネラルモーターズが展開する高級車ブランドのキャデラックは、カリフォルニア州のペブルビーチで華々しく行われた同社のコンセプトカー発表の模様を、Facebookのライブ配信機能を利用して世界各地に届けた。他にも、元テスラモーターズのエンジニアらが創設した、EVスタートアップFaraday Futureが利用した360動画などが紹介され、来年デトロイトで行われる予定のモーターショーでは、Facebookのライブ配信機能が活用されることなどが宣言された。
マルチデバイス時代には、Cookieを超えた計測方法が必要になる
続いて登壇したのは、Facebook JapanでMeasurementを担当する大志摩丈嗣氏。同氏は、マーケティングの段階を「認知」「態度変容」「行動変容」の3つに区分し、効果測定に関して語った。
大志摩氏はまず、スマートフォンをはじめとしたデジタルデバイスの世界的な増加について言及。1人が複数台所有することで、現在世界には人口より多くのデジタルデバイスがあると語り、2018年には、1人平均3台のデジタルデバイスを持つことになるとの調査結果も発表した。その中で鍵となるのが「個人の特定」だと語った大志摩氏は、従来のCookieベースでの追跡はデバイスを超えたアプローチに適さないとし、人ベースで高い精度を誇るFacebookこそが次世代のプラットフォームになると語った。
「Facebookは幸い多くの方の信頼を頂き、いろいろな情報が登録されています。この情報に基づき、スマホ、PC、タブレットなど、デバイスをまたいでも個人に結び付けることが可能です」(大志摩氏)
リード獲得広告、ターゲティング精度の高さなど。Facebookが持つ優位性
Facebookが保有するパーソナルな情報の多さは、広告そのものにも優位性を持たせる。その代表格となるのが、リード獲得広告だ。ユーザが商品に興味を持ち、申し込みなどを行おうとする際にはフォームへの入力が必要だが、リード獲得広告では、名前や電話番号などFacebook上にすでに登録がある項目は、システムがそれらの入力を肩代わりし、ユーザの負担を軽減する。
「特にスマホは、PCより入力性に劣る。およそ40%多く時間がかかるという統計もあります。リード獲得広告では、Facebook上に登録してある情報の入力が省け、必要最低限のインプットで済む点がメリットです」(大志摩氏)
また同氏は、調査会社ニールセンが提供しているDARという手法から、Facebookがどれだけ効果的に広告を届けることができるかについて言及。高いターゲティング精度を誇っている点を強調した。
「インプレッションが多ければ、CPAも安くて効果的だと思いがちですが、広告が不要な人たちばかりに届けているともいえます。Facebookはその精度が格段に高いことが、おわかりいただけるのではないでしょうか」(大志摩氏)
明日からでも始めて欲しい、動画広告とキャンバス広告
最後にFacebook Japan執行役員本部長の中村氏が再度登壇し、全体を統括した。
「これまでにお伝えしたように、モバイルファーストの時代がやってきました。モバイルがTVを超えることが予想されている中、モバイルという世界でいかにユーザーとコミュニケーションしていくかが、マーケターにとってキーとなるでしょう」(中村氏)
同氏は、Facebookがモバイルのマーケティングプラットフォームであることを再度強調。Facebookを活用する際、ファンやシェアの獲得といったソーシャルな値をKPIにするのではなく、認知獲得や好意度、購入意向の向上といった、ビジネスにおけるKPIにシフトして欲しいという。
また同氏は、Facebookで行えることは多く、中には準備期間が必要となるものもあると前置きした上で、認知と興味関心のステージにおける動画広告とキャンバス広告は、明日からでも始めてもらいたい、と語った。
なおFacebook Japanでは、自動車業界専門のサポートチームを結成し、モバイルに最適化したクリエイティブの作成や効果測定など、フルサポートを行っていくという。