スキップできる時代にスキップされないものは……
菅野:広告視点の質問になりますが、現在C CHANNELで最も広告主に評価されているポイントはどこですか?
森川:やはり、ターゲットに商品の魅力を伝えることができる点が最も強いと思います。今までのメディアはリーチや認知を中心にやってきましたが、リーチや認知が必ずしも購買に繋がらない時代になってきたのかなと。それは、企業が言っているメッセージが本当にそうなのかどうか怪しいと見られているのからです。それがC CHANNELだと商品の価値をちゃんと訴求できるし、ユーザーの皆さんはHow to動画という形でやってみることで参加・行動を促すようになっているので、そこは評価されています。
たとえば化粧品の場合、通常、化粧品のCMはきれいな女優さんが出演して「ああきれいですよね」となりますが、「そもそもこの女優さんは本当にこの化粧品を使ってるんですか?」と皆さん思っているわけです。それがC CHANNELだと、普通の人が出てきて「この化粧品はこういう良いところがあってこういうメイクの仕方をするとこんなに変わりますよ」と。
そのようなコンテンツを見れば確実に商品の価値もわかりますし前後での違いも明確なので、ユーザーの皆さんも信頼して結果的に行動に移る、ということが起こっています。

菅野:認知が必ずしもセールスに繋がらないというのは、今がそのような時代なんだと思っていますか? つまり、広告というフォーマットがもう制度疲弊を起こしているというか。そのような感覚をお持ちですか?
森川:おそらく無理矢理広告を見せられた時代と、スキップできる時代の違いかなと思っています。無理矢理広告を見せられた時代というのは、みんな仕方なく見ていたんだと思うんですよね。それが今、スキップできる時代にあえてスキップしないものってなんだろう、ということが重要かなと。それはやはり押しつけではない、ユーザーの求めるものがその中に入っていることが、とても大事だと思うんです。さらにそこに信頼感があればベストかなと、思っています。
孫正義氏が教えてくれたこと「みんなが応援せざるを得ないでかい約束をする」
菅野:森川さんのモチベーションの源泉を教えていただけますか?
森川:責任感ですかね。まあそんなに毎日楽しいことはないです。ほとんどが嫌なことですからね(笑)。
菅野:極論、生きて死ぬまでに何を成し遂げたいかということでしょうか。
森川:以前孫正義さんにお会いした際、「森川くんはいくら借金してるんだ?」と言われました。LINEの時に200億円ほど借金をしていたのでそう答えると、「それだけしか借金してないのか、俺は8兆円借金しているんだぞ」と言われて「いやーすごいですね」と。「それがどういう意味があるかわかっているか?」と聞かれたので、「いやーわかりません」と答えたら、「8兆円も借金したら誰も潰せないから応じてくれるんだ、まだまだ借金しろ」と言われました(笑)。
でも約束なんかもそうで、とんでもない約束をするとみんな応援せざるを得ないので、小さな約束よりは「でかい約束」をしたほうがいいです。期間を重ねれば、いつか約束を守れるかもしれない。「明日までに地球を制覇します」と言っても無理ですが、10年くらいのスパンで言えば。10年後だったらできるかもしれませんからね。
菅野:僕も会社を始めてまだまだですが、やっていく中で当初考えていたことよりも、違う景色がみえるものだなと感じています。

森川:つらいことをやり続けられる人って、結構少ないんですよね。1年や2年はできるけど、じゃあ10年やるかというとほとんどいない。だからそれをやり続けると、違うことが起こるんじゃないですかね。
菅野:では、5年10年ぜひおつきあいさせていただいて……。
森川:ぜひぜひ。逃げないでくださいね(笑)。

森川 亮
C Channel株式会社 代表取締役社長
1989年筑波大卒。日本テレビ、ソニーを経て2003年ハンゲームジャパン(現LINE)入社、07年社長。2015年3月、同社代表取締役社長を退任し、アドバイザーとして顧問に就任。現在C Channel株式会社代表取締役社長。

菅野 圭介
ファイブ株式会社 代表取締役社長
2008年にGoogle Japanに新卒一期として入社。買収後のAdMobの日本オペレーションの立ち上げ、YouTube広告製品等のプロダクトマーケティング・収益化・ビデオクリエイティブエコシステムの拡大を担当。2014年にFIVEを設立。
転載元
この連載は、モバイルでイノベーションを起こす「人」と「仕事の舞台裏」にスポットライトを当てるMOBILE PEOPLEの記事を再編集して掲載しています。