「MAツール×DM」で実証実験!圧倒的な結果に
ここで実際にMAツールを活用し、アナログの活用にトライした事例を紹介しよう。第3部に登壇したのはSansanの石野氏と日本郵便の鈴木氏。両社は共同で、MAツールとDMを組み合わせた実証実験を行ったという。石野氏は実験内容をこう説明する。
「メールだけでは商談に至らなかったが過去に名刺交換をした層をMAツールで抽出し、『メールのみ』『DMのみ』『DMとメール』という3パターンでアプローチするというテストを行いました。DMはシンプルなものを作成し、DM送付者にメールを送る際は『お手紙をご覧いただけましたでしょうか』といったように、組み合わせの効果が感じられるよう設計しました」(石野氏)
実証実験の結果は圧倒的で、DMとメールを組み合わせるとクリック率がメールのみの場合の1.8倍、受注貢献も想定の10倍以上であったという。同氏は実証実験を通し、気づいたことがあると語る。
「実証実験を通してまず気づいたのは、圧倒的な受注への貢献効果です。それ以外にもDMならでは効果が三つありました。一つ目はメールが届かない層にきちんとリーチできたことです。メールでアプローチしても反応が低い見込み客の、反応率が高かったんです。二つ目が反応期間の長さ。時系列で見ると、メールは送信後一瞬だけしか効果がないのに対し、DMは数ヶ月後まで効果が続きます。現物が届くと捨てずにとっておく人がいるからだと思います。三つ目はシャワー効果です。上司の方宛に送付したDMが部署内で共有され、部下の方から商談に繋がったケースもありました。これはオフラインのDMならではだと思います」(石野氏)
アナログのDMでこれだけの結果が出せた理由について、前職でデジタルマーケティングに携わっていた日本郵便の鈴木氏はこのように解説する。
「マーケティングは昔からデータドリブンなんです。ただし昔は時間もお金もかかる上に、得られるデータがぼんやりしていました。ところが最近は安く、早く、精緻なデータが得られます。これにより、BtoBもBtoCもダイレクトマーケティング化していると感じています。デジタルはあくまでマーケティング全体の中での一部ですので、デジタルにしてもアナログにしても、それだけに閉じてはいけないと思っています」(鈴木氏)
様々な立場からマーケティングにおけるデジタルとアナログの活用法について議論された本イベント。どの登壇者からも、デジタルにもアナログにも傾注することなく、顧客が望む形・タイミングで接点を増やすことの重要性を訴える発言が目立った。最後に鈴木氏はこう語り、イベントを締めくくった。
「デジタルに長けている人はアナログの知見がなかったり、逆もまた然りでそれぞれが分断されているケースが多々あります。それをなんとかしたいと思っています。私はデジタルはモーメントだと思っていて、コストの安さと拡散力という強みがあるものの、瞬間で消えていってしまうという弱点があります。
一方アナログなDMはコストの高さが弱点ですが、情報のストックという強みがあります。それぞれの特徴をうまく掴み、活用していただければと思います。これまでに実施したことがないことを、最新のツールを導入したからといって一朝一夕でできるわけはなく、何事もやってみなければわからないのですから」(鈴木氏)