生活者は、どんなニュースをシェアしたくなるのか
実際には、どのようなニュースがエンゲージメントされやすいのでしょうか? 2017年1月の1ヵ月間で調べてみると、特にエンゲージメント数が高かったニュースの一つに、横浜市教育委員会の教育長による「いじめ認定」に関する発言があります。これは、原発事故で横浜市に自主避難してきた生徒が、いじめによって同級生に150万円もの大金を払わされていたにもかかわらず、教育長が「いじめと認定することは難しい」旨の発言をしたというニュースです。
これに対してSNS上では、教育長の認識について疑問を呈する声が数多く上がり、エンゲージメント数が31.5万エンゲージメントにまで達しました。
今回のニュースが多くのエンゲージメントにつながった要因は、基本的には、「教育長」の立場にある人物の見解が、あまりに市民感覚とずれていたことによる「失言に対する炎上」だと考えられます。ただし、加えてこの話題が3.11以降、長らく続く「原発いじめ(被災者に対しての科学的根拠のまったくない誹謗中傷やいじめ)」に関連するトピックだったことも注目に値します。
「原発いじめ」は、今回のニュースに限らず定期的に顕在化している社会問題です。本件のエンゲージメントは、元々生活者が抱えていた事象への「興味」や「不満」、「問題意識」などを刺激し、事象について“何か発言したい”という能動的な行動を強く喚起したことが、大きな要素となっていると考えられます。
議論を呼び、高いエンゲージメントを叩き出した事例
「いじめ認定」に関する発言のニュースの他には、おもしろ絵本作家ことキングコングの西野亮廣さんがブログで発表した自作の絵本『えんとつ町のプペル』全ページ無料公開のニュースも波紋を呼びました。
先ほどの、「原発いじめ」のようなニュースとは別次元の内容ですが、2017年1月のなかでは27.9万エンゲージメントと最多クラスのエンゲージメント数です。西野さんは炎上芸人と揶揄されるなど、自身のTwitterやブログを通じて、定期的にWeb上でバッシングを受けるような発言をしています。
しかし、西野さんの発言がここまでエンゲージメントされるのは、単に炎上芸人としての要素だけでは説明が難しいでしょう。むしろ、議論を呼ぶ「アクの強いオピニオンリーダー」として、発言に注目が集まっているからではないでしょうか。
今回のブログ記事でも、言葉の良し悪しは別として、「言っていることには一理ある」と思わせるような“これからのクリエイター論”を発信することで、異論、反論、賛同が入り乱れた議論を呼び、非常に高いエンゲージメント数につながったと考えられます。