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140年の歴史が語る本質 日経が説くデジタル時代のメディア、広告の役割

顧客の期待を裏切るフェイクビュー

押久保:今の流れでお二人に伺いたいのですが、先ほど「信頼できるメディア」という言葉が出てきました。信頼できるメディアを作るために、広告主側、メディア側は何が必要なのかをお聞かせください。

石井:PVは多いがユーザーの“顔が見えない”メディアに対して広告を投資し続けるスタイルは、もはや限界に来ていますし、それが今日のデジタル広告の信頼性の低下を招いた一端と言えるでしょう。

 ではどうすれば良いかというと、それはお客様が「知りたい」と思うことと、広告主が「理解してほしい」と思うことの間を取り持つ、信頼できるメディアに投資することが必要なんです。

押久保:信頼できるかどうか、どのように見極めるのでしょうか。

石井:いろいろありますが、やはり大前提として「これを伝えたい」と、一本筋が通っているメディアであることですね。風向きによって、メディアのスタンスや哲学がコロコロ変わるようでは、信頼は得られません。人と人との関係でも意見をコロコロ変える人と信頼関係は築けませんよね。それと一緒だと思います。

 もちろん広告主側は、伝えたい内容や情報によってメディアを選別していく必要があります。ですから、一本筋を通しているメディアの中で、「ここにはどういう情報を出せば読んでもらえるかな」「あのメディアなら、こういう内容が合うだろう」と考えているんです。

 信頼できるメディアにバランス良く情報を出し続けることで、読んでもらいたい潜在顧客層にリーチできる可能性が高まりますし、良質なメディアをたくさん育てることにもつながります。

押久保:渡辺さん、メディア側としては、信頼を得るために何が必要だとお考えですか。

渡辺:信頼できるメディアであるためには、良いコンテンツがあることが絶対条件ですが、その信頼性を担保に有料課金を受け入れてもらうには、メディア側の意識変革が必要です。手前味噌になりますが、当社はこれまで「読者」と呼んでいた情報の受取手の方を、「顧客」と見るように意識改革を進めています。

 言葉の定義はすごく大切で「読者」というと、発信者側は情報を届けていれば良いという意識になりがちですが、「顧客」という言葉に置き換えると「顧客サービスや顧客満足度を上げるには何が必要か」という意識が生まれる。「顧客の期待を裏切るようなことは、あってはならない」と思うわけです。

 また、世間を賑わせているフェイクニュース問題は、まさに構造問題だと考えます。広告単価が下がる無限の戦いを強いられる中で、コンテンツを作るためのコストはかかります。売上が上がらなければコストを下げる方向にバイアスが向き、その結果取材をしなくなったり、「味を薄めたコンテンツ」を作ることになります。

 ページネーションを必要以上に増やしたり、ページを長くすることで広告枠を確保するといったフェイクビューも同様です。読者とのエンゲージメントを深めるということは、読者を最優先に考えるということ。広告掲載位置も自ずとユーザーエクスペリエンス重視で考えていくことですよね。

 メディアはこうした誘惑にいつもさらされています。その誘惑に負けないためにはもう一つ収益の柱を作る以外ありません。当社の場合は広告費以外に、お客様からの購読費をいただくことで、この構造問題を克服できていると考えています。

押久保:おっしゃるとおりと感じます。私たちが紙の定期購読モデルをスタートさせた理由の一つもまさに収益の多様化です。一方デジタルメディアの中には、少人数で運営している優良メディアや専門メディアなどもあり、競争も激しいと思いますが、その点はいかがでしょうか。

渡辺:先ほどもお話ししましたが、そこでメディア規模という「大きさ」のファクターが重要になると思います。当社が電子版をスタートした時期といえば、ブログブームが起こり、個人での情報発信が注目されていた時期でした。

 これらのブログメディアの中には素晴らしいものも数多くありますが、やはり「継続的な取材」にはノウハウや体力、一定以上の規模が必要になります。当社の場合、組織力に強みがあるので、数々のブログメディアや専門メディアとは異なる独自の位置を自然な形で確立できたと考えています。

セレンディピティを与えられるのか

押久保:メディアの中でも、ここ数年キュレーションメディアといわれる分野が非常に伸びております。この勢いをどうご覧になられていますか。

石井:情報が氾濫する中、キュレーション自体は便利なものだと思います。デジタルの最大のメリットである「データを使って、“これ”に興味をもっているお客様に、“この”情報を届ける」ことができるからです。

 ですが、やはり広告主としては顕在的な部分ばかりに目を向けるのではなく、潜在的なお客様にアプローチして、その層の方が何をどう考えているのかを知りたい。マーケティング的な視点で言えば、そういう方々に、「へー、そうなのか」という新たな視点(セレンディピティ)をいかに与えていくか、に関心があります。

 たとえば新聞であれば、パッと紙面を広げただけで、自分の趣味嗜好や知りたいこと以外の情報もたくさん入ってきて、気付きが得られますよね。お客様が欲しい情報だけを届ければいい、という姿勢でメディアを作ると、それはお客様の視野を狭めるものになってしますし飽きられてしまうのではないでしょうか。

 これからのメディアは、お客様が欲しいものだけをダイレクトに届けるだけではなく、セレンディピティを装いながら欲しい情報を届けられる場であってほしいですね。

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日経はテクノロジーを使った「瓦版」

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/06/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/26578

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