動画広告に感じていた違和感
「昨今の動画広告で気がかりなところがあるんですよね」と取材の冒頭で語るのは、動画専門広告代理店のCyberBullの営業統括を担当する宮田崇平氏だ。同氏によれば昨今の動画広告、特にダイレクトレスポンスを目的にした広告に違和感を覚えていたという。
「成果を上げるために、CTRやCPAを意識して複数クリエイティブを活用して広告配信、運用をしていると思うのですが、ブランドメッセージを伝えきれていないお客様が多く見受けられるんです。もちろん成果が大事とはいえ、動画のクリエイティブでブランドについても語れないのはもったいないと思っていました」(宮田氏)
この問題、CyberBullのクライアントである化粧品の通販事業を行うタカミも同様に悩んでいた。同社も宮田氏が語るような、CTRやCPAなどの指標をKPIとし、獲得効率を徹底的に意識した動画広告を配信し、効果を上げていたものの、ブランドのメッセージは伝えきれていなかったのだ。
表情分析とアンケートで定性調査
宮田氏は新たな施策を提案した。最初に、今回の対象商品である角質美容液「タカミスキンピール」のブランドメッセージを伝えつつ、コンバージョンにもつながる動画を2パターン用意した。
1つは、箱から取り出して、商品から美容水を出すだけの箱開け動画。どういった美容水が出てくるのか、そしてどういったパッケージなのかを伝えるものだ。
もう1つは、動画の中で、実際の使用ステップを紹介するSTEP動画。こちらの動画では「肌は生まれ変わる」というブランドメッセージと商品名、ブランドロゴが盛り込まれており、比較的要素の多い動画となっている。
これらの動画をただ配信、運用していくだけでは意味がない。そう考えた宮田氏は、表情分析とアンケート調査を取り入れた。
「動画広告を配信して数字を改善するだけでは、ブランドメッセージがそれで守れているのかわかりません。そこで、表情分析とアンケート調査を行い、よく笑顔を引き出せたクリエイティブはどれだけ感情の変化を導き出せたのかを明らかにしたかったのです」(宮田氏)
そして調査を行った結果、どちらの動画も笑顔になるシーンはあったものの、STEP動画にポジティブな回答が集まった。つまり、ブランドメッセージを伝えられるのはSTEP動画のような要素の多い動画というわけだ。