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マーケが知らない「カスタマーサービス」の世界 攻めのサポート施策によるCX改善の最前線に迫る

「LINEカスタマーコネクト」の展開に期待

 スヴェーン氏の講演に続いて、今や日本人に欠かせないインフラとなったLINEから、戦略企画担当ディレクターの砂金信一郎氏が登壇した。

LINE株式会社 戦略企画担当ディレクター 砂金(いさご)信一郎氏
LINE株式会社 戦略企画担当ディレクター 砂金(いさご)信一郎氏

 LINEのビジネスへの活用は着々と進んでおり、現在公式アカウントは280超。LINEビジネスコネクトの導入社は140社強、町の商店や美容院といった小規模ビジネス向けのLINE@の開設数は25万を突破した。そんなLINEがこの4月にローンチしたのが「LINEカスタマーコネクト」だ。

 カスタマーサービス領域においては、LINEビジネスコネクトを利用する形で、既に複数の大手企業がLINEを窓口にした顧客サポートを行っている。しかし公式アカウントとLINEビジネスコネクトはLINEユーザーに広くリーチする広告媒体としての側面もあり、純粋に顧客サポート目的だけで利用するための費用としては高額であるというフィードバックがLINEに届いていた。

 そこで「LINEカスタマーコネクト」は機能をカスタマーサービス向けに絞ることでコストを抑え、事業会社におけるオペレーター不足やチャットサポートへのニーズの高まりに対応できるようにしたという。

 砂金氏によると、LINEカスタマーコネクトは次の4つのオプション機能で構成されている。

 まず、Auto Replyでテキストベースの問い合わせにAIが自動応答する。即座に対応してユーザーの待ち時間をなくすとともに質問の前さばきをする。次に、有人対応が必要だと判断されれば、Zendeskなどのツールと連携して有人チャットでのサポートにシームレスに移行できるManual Replay。画像やスタンプの送付も可能だ。

 3つ目に、必要な場合はチャットから無料のLINE電話に切り替えて対応できるLINE to Call。4つ目はその逆で、フリーダイヤルなど公衆網の電話からLINEでのテキストチャットに切り替えるCall to LINEである。

「カスタマーサービス」は「接客マーケティング」に進化する

 最後に、Zendeskを活用している企業の担当者によるパネルディスカッションが開催された。登壇したのは、クラウド会計・給与計算ソフトなどを提供しているfreeeの小川紀一郎氏、クラウドソーシングサービスを提供するランサーズの冨樫謙太郎氏、リクルートライフスタイルでPOSレジアプリの「Airレジ」を担当している遠田望氏で、Zendeskの藤本氏が司会を務めた。

左から、株式会社Zendesk 社長 藤本寛氏、freee株式会社 カスタマーサポートマネージャー 小川紀一郎氏、ランサーズ株式会社 カスタマーコミュニケーション マネージャー 冨樫謙太郎氏、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部Air事業ユニット 遠田望氏
左から、株式会社Zendesk 社長 藤本寛氏
freee株式会社 カスタマーサポートマネージャー 小川紀一郎氏
ランサーズ株式会社 カスタマーコミュニケーション マネージャー 冨樫謙太郎氏
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部Air事業ユニット 遠田望氏

 小川氏は、「SaaSは継続して利用していただくことが重要なので、カスタマーサクセスにつながる最高のサポートを提供することを大切にしています。特に重視している指標は顧客満足度です」と語る。ユーザーのセルフサービスによる課題解決をうながすZendeskのguide機能を活用して「ヘルプセンター」を構築しており、チャットや電話で複雑な手順を説明する必要が生じた際は「ヘルプセンター」へと誘導しているという。

 また、ネットプロモータースコア(NPS)を調べるアンケートで「サポートが低品質だ」という回答をしたユーザーには電話をして、どういうところに問題があったかをヒアリングし、サービスの改善につなげる活動もしているという。

 遠田氏は、マーケティング部門やセールス部門が連れてきた顧客のLTVを拡大することをカスタマーサポートチームのミッションにしていると語る。具体的な取り組みとしては、ユーザーに対し、どのようなチャネルでも一貫性を持ってコミュニケーションすることが最も大切だと考えており、各チャネルから寄せられる問い合わせは「チケット」としてZendesk上で管理しているという。

 冨樫氏は、カスタマーサポートをプロダクトとして捉え、サポートチームをプロダクト部に統合して「サポートの品質を高める」こと、「サポートに寄せられた声をプロダクトにフィードバックする」ことの二軸を重視していると語った。つまり、サポートとプロダクトの両軸からCXをあげるためにZendeskを活用しているわけだ。

 具体的には、カスタマージャーニーを描き、ランサーズ利用体験の重要ポイントと問い合わせカテゴリを統一。カテゴリ毎の問い合わせ件数と、サポート満足度を可視化して、どのポイントで多くの顧客が困っていて、サポートに問い合わせることでどの程度満足を得ているかを分析した。

 こうして得られた知見をもとに、「このポイントで現在は”A”という対応をしているが、”B”という対応にすれば満足度が向上し、取引進行のコンバージョンが向上するのでは?」といった具合に、ポイントを狙ってCXを向上させることができるようになったと語る。

 その中で新たに生まれたKPIが、「チャットによる売上」だ。顧客の疑問を解決してコンバージョンが増えたか、データベースを基にして確認している。こうした検証を通じて、チャットでどのようなトークを展開すればCVにつながりやすいかの知見も蓄積されつつあり、現在は体制を拡大中とのことだ。

 3社から共通して聞こえてきたのは、「プロアクティブ」という言葉。「プロアクティブ」とは「先を見越した、先回りした」を意味している。この言葉にも表れているように、3社とも「顧客の希望を前もって推測して、解決策を用意しておくことでCXを向上する」という狙いを持って、Zendeskを活用しているのだ。

 ターゲットや業態が異なる3社ではあるが、いずれも「カスタマーサービス」から「接客マーケティング」への転換を推し進めていることは注目に値する。日進月歩で発展していく「カスタマーサービス」を舞台としたマーケティングの動向から今後も目が離せない。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/07/25 16:39 https://markezine.jp/article/detail/26705

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