“夢を見せる”のではなく、マーケティングは“現実”の時代に
ユーザーからのレビューを得るに当たり、スターズ・アンド・ストーリーズが最も重視しているのが「正直であること」だ。同社を通じたレビュアーは、商品を紹介する際に必ず「この商品を企業から得た」と明記し、企業との間で金銭の授受がないことを伝えることで、ステルスマーケティングにならないように配慮している。
「マーケターとして良いオンラインレビューを得たいと思うのは当然だが、我々はそれをやりたくない。企業はすばらしい商品をもっている。もし良い商品でないなら、市場に投入するべきではないと思っている」と、デン・ボック氏は強調する。

レビュアーにはいつも「正直であるように」と伝えており、多くは「この部分が好きだが、ここは気に入らない」と、両サイドからのストーリーを書いているという。
デンボック氏によると、今や「マーケティングは現実」の時代。かつては「夢を見せる」のがマーケティングの役割だったが、現在は「リアルマーケティングの方がよりインパクトがある」。この動きは、マーケティングの歴史が長いアメリカから始まったという。
レビュアーによるディスクレイマー(免責事項)もアメリカは欧州やアジアに比べて厳しく、消費者のメディアリテラシーもアメリカが断トツに高い。「アメリカのメディアリテラシーを「10」とするなら、欧州は「7」、日本は「4」ぐらい」(デンボック氏)。レビューを依頼した際のレビュアーの反応も、アジアは「もちろん、喜んで!」、欧州では「私は専門家だからやります」というのに対し、アメリカでは「いくらもらえるの?」とシビアな答えが返ってくるのだそうだ。
成長率はアジアが断トツ、日本では「レビュークラブ」を展開

スターズ・アンド・ストーリーズはオランダと日本に拠点を構え、両国のほかドイツ、フランス、スペイン、フィンランド、ポーランド、スウェーデン、デンマーク、アメリカなどで事業展開している(ドイツとフランスは新たに拠点を開設準備中)。
日本進出のきっかけは、オランダの顧客がイギリスのキャンペーンで成功し、日本でもできないかと相談を受けたこと。日本では「レビュークラブ」というコミュニティサイトがあり、ここでユーザーが新商品を無料で試用し、その感想をヨドバシドットコムや価格ドットコムなどECサイトで共有するというシステムになっている。

レビューを書く際には、ここでも「レビュークラブから商品提供を受けている」と明記することが重視されている。レビューの内容にネガティブなことが書かれていてもレビュークラブは関与せず、あくまでも商品レビューの機会を提供するという立場を貫いている。
デン・ボック氏によると、欧米に比べて日本のメディアリテラシーは低く、オンラインレビューにもこれから慣れる必要があるが、これまでのところ日本企業との取り引きはうまくいっている。売上高で市場別の年平均成長率は、アメリカが80%、欧州が100%に対して、アジアは200%。そして、アジア市場では日本が他国をリードしているという。
アジアでは日本市場と韓国市場を攻めた後、将来的にオンラインショッピングが盛んなインド市場にも進出したい考え。また、サービス面では消費者のレビューを活用し、アルゴリズムやマシンラーニングによる分析で、企業の商品開発へのアドバイスに役立てる計画だ。消費者の正直な声を集められる独自のサービスは、大きなマーケティング潜在力をもっている。