インストール数の多さはアプリの成功を示す指標ではない
アプリの改善に関するご相談で特に多いのが「インストール数を増やすためにはどうするべきでしょうか?」というものです。
インストール数を重視する気持ちも理解できます。アプリのことをよく知らない人たちにとってもインストール数はわかりやすい指標ですし、多くの企業が「サービス開始3ヵ月で100万インストール突破!」といったプレスリリースや広告を出すなど、インストール数をヒットアプリの証明として使っているのも事実です。
しかしながら、「アプリによって収益を上げること」をアプリの成功と定義した場合、インストール数の多さはアプリ成功の必要条件ではあっても、十分条件ではありません。
なぜならインストール数は広告費をかければ増やすことが可能ですし、アプリがユーザーに利用され、広告や有料課金による収益につながっていることがわかる指標ではないからです。インストール数がそれほど多くなくても自社の収益に貢献しているアプリはあります。逆に、インストール数が順調に増えていても収益につながっていないアプリも多くあります。
アプリで収益を上げるためには、インストールしてくれるユーザーを増やすより先に、インストールしてくれたユーザーの継続率を高めるべきです。なぜならば、せっかく広告費をかけてアプリの新規ユーザーを増やしても、数日で使われなくなるアプリでは投下した費用に見合う売上がともなわないからです。
スタートアップのためのデータ解析とその活用方法について書かれている名著『Lean Analytics(オライリージャパン)』の中でもインストール数は「虚栄の指標」、つまりKPIにすべきではない指標として挙げられています。特殊な例を除き、一般的なアプリではリリース直後からインストール数の増加を目指して広告費をかけるべきではないでしょう。
CPI重視による新規ユーザー獲得施策の失敗パターン
ではインストール数ばかりを重視し、アプリの継続率を考慮せずに新規ユーザー獲得施策を行った場合、どういった失敗パターンに陥りやすいのでしょうか。ここではアプリの新規ユーザー獲得施策において重視されている指標CPI(Cost Per Install)について考えてみます。
一般的に多くのアプリ運用の現場ではCPIが低い施策、つまり新規ユーザーの獲得単価が低い施策が良いという認識があります。しかしながらCPIだけで施策を評価してしまうと、インストールはされるもののユーザーがすぐにアプリを使うのをやめてしまうものを「良い施策」として評価してしまったり、逆にCPIは高いもののユーザーの継続率も高く、収益に貢献しているものを「悪い施策」と判断してしまったりする場合があります。
たとえばTwitterとFacebookのアプリインストール広告の両方に広告予算を10万円投じて獲得ユーザー数がそれぞれ120人と150人だった場合、CPIは以下のようになります。
FacebookはTwitterよりもCPIが低く、Twitterより多くの新規ユーザーを獲得できているので「Facebook広告により多くの広告予算を配分しよう」と判断することができそうですが、各チャネルで獲得した新規ユーザーの翌月継続率を加味した場合はどうでしょうか。
Facebookは翌月継続率が20%と低く、Twitterの翌月継続率は60%とFacebookの3倍あることがわかります。翌月継続率がわかるとユーザーがアプリをインストールしてから使わなくなるまでの平均継続利用月数も算出でき、さらに月次のARPU(※1)とユーザー数を掛け合わせることでチャネル別の売上を出すことができます。
※1 ARPU: Average Revenue Per Userの略で、1ユーザーあたりの平均収益
FacebookとTwitterから獲得した新規ユーザーのROASまで算出したのが上の表です。
ご覧の通り、CPIがTwitterよりも低く新規ユーザーの獲得数でもTwitterを上回っていたFacebookですが、実はROASが100%を下回っており新規ユーザーを獲得すればするほど損失につながる施策だったことがわかります。逆にTwitterは翌月継続率が60%と高く、ROASも100%を上回っているのでアプリの収益につながる新規ユーザーを獲得できているといえます。
上記は極端な例ですが、このように新規ユーザーの継続率を把握することでROASまで考慮して新規ユーザー獲得施策を考えることができ、効率的な新規ユーザー獲得施策の意思決定が可能になります。