目の前の課題を解決するだけではダメ
野崎:ちなみに現在の両社における課題はなんだと思いますか。
向後:ナショナルクライアントの多くがデジタルに対するリテラシー向上に取り組んでいる中で、そのマジョリティに合わせた提案だけでは変化を続けるマーケティングのデジタル化において、革新的なことはできないと感じています。常に未来を創造する意識で一人一人が価値提供のビジョンを持ち、行動を起こす必要があると感じています。
博報堂DYデジタルの企業理念はendless update_なのですが、会社の革新は社員一人一人の革新だと思っているので、そういう意識は常に持っていますし、重要だと思っています。

野崎:杉本さんはいかがでしょうか。
杉本:向後さんの言葉に近いのですが、今目の前にある課題の解決が目指すべき理想の組織像ではないと思います。クライアントのマーケター、弊社の現場メンバーがど最終的にどこを目指しているのか、どういったマーケティングが最適なのかといった認識を合わせないといけないのが今だと思っています。
人発想でマーケティングを推進する
野崎:理想のマーケティングを推進するために、何か新しい取り組みは行っていますか。
杉本:最近の取り組みでは、弊社のこれまで蓄積してきたマーケティング手法を人基点で統合したフレームワーク「People Driven Marketing」の開発があります。人の意識とか行動をもとに、マーケティングのPDCAを回していくのですが、そのためには社内外の多くのデータが必要になるので、外部パートナーとの連携も推進してます。例えば先日行った楽天との合弁会社設立はその一環です。
その他にもTVCMなどマス広告の出稿データや購買のPOSデータなど、オフライン、オンライン含めた大量のデータを電通独自のパブリックDMP「People Driven DMP」に統合しています。多分ここまでの取り組みができるのは弊社と博報堂DYデジタルさんくらいではないでしょうか。
野崎:博報堂には生活者DMPがありますよね。
向後:そうですね。博報堂DYグループが業界に先駆けて、生活者発想を起点としたデジタルデータの活用でマーケティングを深化させるために、生活者DMPを構築しました。
これまで生活者の意識データを定点観測してきたのに加え、デジタルのアクチュアルデータ、プラットフォーマーとの連携等で進化を続ける生活者DMPのデータを活用し分析することで、カスタマージャーニーの可視化などのデータドリブンマーケティングを実践しています。すでにHandy Marketingでヤフーとの取り組みを進めているのもデータドリブンマーケティング実践の一環となります。
データをベースにした発想&マーケティングの法則を導き出す
野崎:最後にお2人から展望をお伺いしたいと思います。今後どういったキャリアを描きたいかですね。
向後:最初にもお話をしましたが、私はデジタルを中心にキャリアを積んできたこともあり、売上など最終的な目標から、データをもとに逆上がりしていくマーケティング発想を得意としています。そのモデルをより確立して、エグゼキューションまでをコミットできる存在を目指したいですね。
戦略家であり戦術家のような存在として活躍できたらいいなと思っています。それを実現するために成長できる環境が弊社にはあると思います。
杉本:数学をずっと学んできてわかったのは、世の中には原理原則があり、それを読み解いて法則として導き出すことができること。それをマーケティングの領域でも行いたいです。
そして法則を導き出すには、人を良く観察することが必要で、それを実現できるフレームワークが「People Driven Marketing」になると思います。マス、デジタル関係なく全てのデータが可視化されてくることで、原理原則が紐解きやすくなるはずです。
また、将来的にはマーケティングサイエンティストとして、クライアントの事業課題解決を行いながら、人の意識と行動に関する研究が進められたらいいなと思っています。
野崎:お2人ともありがとうございました。今回のインタビューでより両社のリアルがより見えたのではないでしょうか。個人的にはマーケティング自体のデジタル化が進んだことで、マスとデジタルの統合が求められ、それに合わせて必要なスキルセットも変化していることがより実感できました。
将来のキャリアにおけるマーケットバリューを高めるには、当然ながら市場動向を見定めながらスキルセットを構築することが重要です。転職はあくまでも一手段。業界発展のため、転職に限らず個々人のスキルを高めるキッカケになれば幸いです。
