顧客のことを考えつくして成果を出す、ジェットスターの事例
セッションの後半では、オラクルのクライアントであるジェットスターの事例が共有された。ジェットスター航空(以下、ジェットスター)は、より多くのお客様に低価格で安心・安全な楽しい空の旅を提供することをミッションに、2004年に立ち上げられた会社だ。
ところで、エアラインビジネスと旅行業界のマーケティングには、この業界独得のある特徴がある。たとえば顧客は「セブ島にいこう」と思ったその瞬間から、セブ島の情報をかなり能動的に探すようになる。逆に、セブ島への旅行を計画していない段階では、多くの人がセブ島に関心をもつことは皆無に等しいだろう。
「つまり、旅行先に関して興味をもっている時期とそうでない時期がはっきりと分かれているのが、この業界のマーケティングの大きな特徴です。顧客が興味をもっている時期は“Golden Selling Window”と呼んでおり、この時期に適切なコミュニケーションが取れるか否かで、成否は大きく変わります」(中嶋氏)
具体的には、“Golden Selling Window”中に、ホテルやレンタカー、保険、シートのグレードアップなどを勧めるコミュニケーションを取り、追加的な売上を出す工夫を行っている。実際にこの期間に送るメッセージ数は、全体のわずか数パーセントであるにも関わらず、それによる売上は全体の半分を占めるそうだ。
パーソナライズされたインタラクティブなメールでROI向上を実現
では、ジェットスターが実際に展開している取り組みを見てみよう。ジェットスターがまず行ったのは、“Golden Selling Window”のコンセプトに基づいたコミュニケーションのパーソナライズだ。ユーザーがチケットを購入したタイミングから、目的地や出発日、購入オプションなどに応じて、ユーザーが使用する言語で案内する仕組みを構築し、旅行の目的に応じても提供するコンテンツを最適化した。
またメールのコンテンツも動的な要素を取り入れ、顧客とのエンゲージメントを強化した。これはクリスマスやイースター、年末などの稼ぎ時のシーズンに配信するメールで、より成果を出すために、展開されたもの。顧客とのインタラクションを形成できるクリエイティブとして非常に高いROIを実現したそうだ。具体的には、デモグラフィーや旅程に合わせた様々なメールで出発までの期間にアプローチすることで、20%のROI向上を達成した。
さらにメールに反応しないユーザーには、ディスプレイ広告など異なるチャネルでもアプローチし、そこでも高いROIを実現した。最近ではメールを見ないユーザーも増えているが、複数チャネルを利用することで、効果的に異なるタイプのユーザーにアプローチができるため、チャネルをまたいだROIの改善が期待できる。
この一連の施策はOracle CX Cloudの最適化フレームワークに沿った施策の流れとなっている。Oracle CX Cloudの最大の目的は顧客体験を最適化しコンバージョンを獲得すること。新規顧客に対してはファースト、セカンド、サードパーティーデータを活用し、適切なタイミングで適切なターゲットへ広告を配信することで、自社サイトへと誘導する。一方、既存顧客に対してはSNSやプッシュ通知、メール、SMSといった様々なチャネルを組み合わせることから、カスタマーエクスペリエンスの最適化を実現するのだ。
「Oracle CX Cloudでは、既存顧客データを蓄積し新規顧客の獲得施策へつなげます。この一連のフレームワークを提供するのがOracle CX Cloudの『Marketing Cloud』です」(中嶋氏)