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MarkeZine Day 2017 Autumn(AD)

世界のCMOに聞く組織作りで重要な10のテーマ/ジェットスターに学ぶ強いマーケティング組織の作り方

 マーケティングツールの導入において、組織体制が要因で上手く進まないケースは多くある。マーケティング部と営業部の連携が取れていないことが原因で、せっかくMAを導入したにも関わらず活用しきれないなどの課題は、どうすれば乗り越えられるのか。2017年9月27日~28日に開催されたMarkeZine Day 2017 Autumnでは日本オラクルの中嶋祐一氏が登壇。「ツールが先か、組織体制が先か。明日から真似たい他社事例」というテーマで、組織構成のポイントについて事例を多く交えながら解説した。

マーケティング組織の成長に欠かせない、10のスキルとは

 日本オラクルが提供する「Oracle CX Cloud」は、Webサイトやソーシャルメディア、実店舗などにおけるカスタマーエクスペリエンスを様々なアプリケーションを使用して管理できるものだ。同社はマーケティングの領域での投資を繰り返し、Oracle CX Cloudを総合的なソリューションへと発展させてきた。

日本オラクル マーケティングクラウド統括本部 中嶋祐一氏
日本オラクル マーケティングクラウド統括本部 中嶋祐一氏

 今回登壇した日本オラクルの中嶋祐一氏は、BtoBおよびBtoC企業向けの、シニアソリューションコンサルタントとして、日々クライアントに接している。本セッションのテーマは「ツールが先か、組織体制が先か。明日から真似たい他社事例」。マーケティングオートメーション(以下、MA)やDMPなどの活用に関して、様々な事例が紹介された。

 セッションではまず、同社がアメリカのCMO Club(※)というコミュニティを通して行った「グローバルで活躍する20名の先進的なCMOやマーケティング責任者へのリサーチ結果」が紹介された。このリサーチ結果から多くのCMOがマーケティングの組織作りで注力している共通のテーマが見えてきた

【マーケティング組織作りで注力すべき10のテーマ】
  1. 顧客の行動から顧客を理解する
  2. 組織やチャネル間を通じたマーケティング
  3. ソーシャルメディアの活用
  4. 顧客との複数タッチポイントの連携
  5. コンテンツの開発
  6. データの分析
  7. 予測分析
  8. 顧客データ管理とセキュリティ
  9. マーケティングテクノロジーの計画と実行
  10. 試行錯誤から次のイノベーションを探す

 これらのスキルをベースとし、「組織間での協力体制」「迅速な判断と実行」「アカウンタビリティ」の3つを、組織の文化やマインドセットとして育てていくことが重要だと、中嶋氏は指摘する。

 「ここで大事なのは、組織構造を創り上げるとか、お金をかけてスキルを獲得することではありません。組織を運用するために必要な文化をつくることと、それによる組織の成長をいかに促進するかということが重要なのです」(中嶋氏)

(※)CMO Club:THE CMO CLUB with ORACLE MARKETING CLOUD / The CMO Solution Guide For Building A Modern Marketing Organization

世界の先進企業のCMOが重要視する、組織のポイントは?

 続いて中嶋氏は、CMOの具体的なメッセージを紹介した。

 PayPalのCMO、Patrick Adams氏は、マーケティング組織の組成において“顧客の行動から顧客を理解する”ことを重要視しているとのこと。これを受けて中嶋氏は、顧客の興味関心がどのように移り変わるのかを知ることがポイントだと述べた。

 「顧客理解は既に多くの企業で取り組まれていると思います。顧客を理解するためには様々なデータを活用する必要がありますが、顧客の属性情報や購買履歴などのデータ活用にとどまり、顧客の行動情報の活用には至っていない企業が多いのではないでしょうか

 行動情報を自社でカバーできない場合は、サードパーティーデータを活用することで、自社の顧客のことがよりよくわかるはずです。様々なデータを統合して、そこから見えてくる顧客の興味関心とその移り変わりを観察することは、顧客理解の要になります」(中嶋氏)

 次はDellのCMO、Karen Quintos氏のコメントだ。

 マーケティング施策に扱うデータは、収集から分析、活用、改善のそれぞれのフローで部門間をまたぐタスクが多々存在する。実際に中嶋氏が最近クライアントから受けた相談の中にも、マーケティング統合データベースを構築しデータの分析を行いたいなどといった、データ環境の構築に関するリクエストが多いのだという。

 マーケティングデータの環境整備について中嶋氏は「これまで私が見てきたケースで成功している企業は、最初にExcelもしくは簡単なBIツールを活用して、データ分析に必要な部門間のやり取りの大枠を探ってから、本格的なBIツールを導入しています。データ分析における一連の具体的な作業を経ると、そのデータを扱う環境の構築に向けて、本当に必要なデータの絞り込みや実際のタスクも見えてきます」と述べた。

顧客のことを考えつくして成果を出す、ジェットスターの事例

 セッションの後半では、オラクルのクライアントであるジェットスターの事例が共有された。ジェットスター航空(以下、ジェットスター)は、より多くのお客様に低価格で安心・安全な楽しい空の旅を提供することをミッションに、2004年に立ち上げられた会社だ。

 ところで、エアラインビジネスと旅行業界のマーケティングには、この業界独得のある特徴がある。たとえば顧客は「セブ島にいこう」と思ったその瞬間から、セブ島の情報をかなり能動的に探すようになる。逆に、セブ島への旅行を計画していない段階では、多くの人がセブ島に関心をもつことは皆無に等しいだろう。

 「つまり、旅行先に関して興味をもっている時期とそうでない時期がはっきりと分かれているのが、この業界のマーケティングの大きな特徴です。顧客が興味をもっている時期は“Golden Selling Window”と呼んでおり、この時期に適切なコミュニケーションが取れるか否かで、成否は大きく変わります」(中嶋氏)

 具体的には、“Golden Selling Window”中に、ホテルやレンタカー、保険、シートのグレードアップなどを勧めるコミュニケーションを取り、追加的な売上を出す工夫を行っている。実際にこの期間に送るメッセージ数は、全体のわずか数パーセントであるにも関わらず、それによる売上は全体の半分を占めるそうだ。

パーソナライズされたインタラクティブなメールでROI向上を実現

 では、ジェットスターが実際に展開している取り組みを見てみよう。ジェットスターがまず行ったのは、“Golden Selling Window”のコンセプトに基づいたコミュニケーションのパーソナライズだ。ユーザーがチケットを購入したタイミングから、目的地や出発日、購入オプションなどに応じて、ユーザーが使用する言語で案内する仕組みを構築し、旅行の目的に応じても提供するコンテンツを最適化した。

 またメールのコンテンツも動的な要素を取り入れ、顧客とのエンゲージメントを強化した。これはクリスマスやイースター、年末などの稼ぎ時のシーズンに配信するメールで、より成果を出すために、展開されたもの。顧客とのインタラクションを形成できるクリエイティブとして非常に高いROIを実現したそうだ。具体的には、デモグラフィーや旅程に合わせた様々なメールで出発までの期間にアプローチすることで、20%のROI向上を達成した。

 さらにメールに反応しないユーザーには、ディスプレイ広告など異なるチャネルでもアプローチし、そこでも高いROIを実現した。最近ではメールを見ないユーザーも増えているが、複数チャネルを利用することで、効果的に異なるタイプのユーザーにアプローチができるため、チャネルをまたいだROIの改善が期待できる。

 この一連の施策はOracle CX Cloudの最適化フレームワークに沿った施策の流れとなっている。Oracle CX Cloudの最大の目的は顧客体験を最適化しコンバージョンを獲得すること。新規顧客に対してはファースト、セカンド、サードパーティーデータを活用し、適切なタイミングで適切なターゲットへ広告を配信することで、自社サイトへと誘導する。一方、既存顧客に対してはSNSやプッシュ通知、メール、SMSといった様々なチャネルを組み合わせることから、カスタマーエクスペリエンスの最適化を実現するのだ。

 「Oracle CX Cloudでは、既存顧客データを蓄積し新規顧客の獲得施策へつなげます。この一連のフレームワークを提供するのがOracle CX Cloudの『Marketing Cloud』です」(中嶋氏)

ジェットスターから学ぶ、マーケティング組織の作り方

 ジェットスターは、オラクル主催のマーケティングイベントで数々の受賞経験がある。ツール利用の当初は簡単なメールマーケティングやMA活用しか行っていなかった同社が、マーケティング組織を成長させるにあたって、組織作りで重視してきたポイントは何だったのか。

 「ジェットスターは、マーケティング組織の改革や技術投資において3つの目的をもっています。1つ目は、カスタマーエクスペリエンスの向上。2つ目はROIの向上です。これはジェットスターのミッションである、より多くのお客様に低価格での旅行を提供したいという考えに基づくものです。そして3つ目は、コミュニケーションの効率性の向上。これらは、ジェットスターがマーケティングに投資する際に何を目指すのかを表す、最も重要なポイントです」(中嶋氏)

 この3つの目的を明確にしたうえで、ジェットスターがマーケティングの組織運営において大切にしていることに関してさらに説明は続く。「ジェットスターでは、まずは自分から学ぶというマインドセットを重要視しています。その中でも、数年で激変してしまうマーケティングの潮流に乗り遅れないことと、担当者だけでなくチーム全体で学ぶことを大切にしているのですが、これはとても正しい視点だと思います。 

 スキルのある人間を採用しても、学び続ける組織文化・仕組みがなければ数年でトレンドから取り残されることになる。また新たに人を採用するわけにもいきませんよね。チーム全体で学ぶことが根付いているのは、組織の協力体制を作る上でも欠かせません」(中嶋氏)

 実際にジェットスターでは、顧客へ提供するコンテンツ制作の作業を一つのマーケティングトレーニングと捉えているそうだ。確かに、顧客とのあらゆるタッチポイントにて、顧客について学び、顧客が求めていることを考え、提供できるコンテンツを考察する、という一連の作業は、カスタマーエクスペリエンス向上の重要性について学ぶ最高の機会だ。さらに、このコンテンツ作成のチームは部門を横断して編成しており、組織間での協力体制も強化している。

ツールはあくまでツール。学ぶ組織をつくろう

 ツールを活用してやりたいことはあるが、それをやりきる体制もノウハウも人材もいない……。多くの企業が同じような悩みを抱えているだろうが、中嶋氏はこの悩みに対する答えとして「実行できるかどうかは後回しにして、まさにジェットスターのように、まずは学ぶことを優先することをお勧めします」と述べた。

 そして最後に中嶋氏が言及したのは、社内で文化を作ることの重要性だ。組織が先か、ツールが先かという命題に対し、次のメッセージでセッションを締めくくった。

 「組織のヒエラルキーを上手く作るよりも、お客様のためにみんなで協力しましょう、という体制を整える方が、結局は成果につながります。そのためには、小規模でも簡単なことでも始めてみることです。試行錯誤と勉強を重ねるなかで、必ず発展していきますから」(中嶋氏)

この他にも、Oracleのマーケティングクラウド活用事例を紹介しております。 こちらからご覧ください。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター 出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/11/08 12:00 https://markezine.jp/article/detail/27260