すべてをカスタマーエクスペリエンスの傘の下で考える
事実、ユーザーはリアルとデジタルを自由自在に行き来している。それなのに“ビッグデータ”“DMP”“MA”といったデジタルを切り口とするバズワードばかり挙がってくるのはなぜなのか。
山崎氏は、これらをどういう傘の下で理解すれば振り回されないのか、こうした要素を統合する概念はないのかとずっと考えていたという。そして行き着いたのが、カスタマーエクスペリエンス(以下、CX)だ。
CXの中で、たとえばデータというCX向上のための材料に注目したのがビッグデータ。その材料の処理に注目したのがDMP。どういう流れで体験してもらうかという順番に注目したのがカスタマージャーニー、といった形で、CXという概念の中の何に注目しているかをひも解くと、近年のバズワードがどう位置しているかが見てくる。
山崎氏はこうしたバズワードが次々と登場することを「我々ツールベンダーの都合」と解説する。
「CXを向上させるといっても、それは概念なので、強いていえばコンサルティングくらいしか売るものがないということになってしまう。ツールを売るには、何かの一部を切り出して『それを解決する』と提示しないと説得しづらいので、どちらかというと売る側の都合によってさまざまな切り取り方をされてきたわけです。
今日、強調したいのは、ツールを買う企業の側はこの“切り取り方”をいちいち気にする必要は一切ないということ。マーケティングにおけるデジタルとは、CXにおける制御モデルであり、個別の施策やツールが『総合体験としてのCXを向上させるかどうか』を考えていくのが大事です」(山崎氏)
情報の透明性が求められる時代
商品を認知し、検討して購入し、リピートしたりレビューを投稿したり返品したりと、これら個別のユーザー体験のすべてを指すのがCXだ。
これを“向上する”とは具体的にどういうことかというと、「たとえば配送が早いほうが喜ばれる、サポートがしっかりしているほうが安心して買ってもらえるなど、一つひとつはとても些細なことです。ただ、言い換えればそれだけ、本当にすべてのポイントを大事にする必要があります」と山崎氏。
“オムニチャネル”も、上記のような総合体験とも受け止められているが、どちらかというと物流をメインに考えられている。これも、CXにおいて特にモノの流れに注目したものだと捉えると腑に落ちる。
では、CXにおける各所でデジタルが働き、そして冒頭で紹介したように、そこにはスマートフォンによって「インタラクティブ、リアルタイム、ゼロディスタンス」という3つの特徴がもたらされている現状で、企業はどんなことに注意してマーケティング活動を進めていくべきだろうか? ここで、特に検索やレビューというユーザー行動に精通するZETAならではの視点をもって山崎氏が提示するのは、「情報の透明性」だ。
消費者がスマートフォンを手にし、SNSでの発信が格段にしやすくなったことで、近年のメディア構造として紹介されるトリプルメディアにおける「オウンドメディア」と「アーンドメディア」の垣根が極めてあいまいになっている。商品について検索したとき、企業が発信する情報よりも膨大に口コミ情報が出てくる今、それが真実として受け止められても不思議ではない。