デジタルマーケティングを担う人材育成のコツ
平野:デジタルマーケティングで事業を成り立たせるための「戦略」について聞いてきましたが、いくら戦略が優れていても人が育たなくては事業は上手くいかないですよね。どうやって人を集め育てて、組織を作り上げてきたのかをお話しいただけますか。
前田:ご指摘の通り、最終的に大事なのは、やはり「人」の成長です。今僕は月2回は東京に行き、その際に誰かしらと会って話を聞いています。地方にいてもネットで色々な情報が手に入るようになりましたが、ネットの情報だけではリアリティが伴った理解が得られないからです。
地方でデジタルマーケティングにチャレンジしていくなら、イベントにどんどん出ていき、そこで作った人脈から今のトレンドや本質的な情報を肌感覚で得て、知見を蓄えていくべきだと思います。
本松:組織ということで、僕が部下に伝えていることが2点あります。1点目は、「堂々とした童貞であれ」ということ。デジタルの領域って新しいことだらけだし、広告とかメディアの枠組みに収まりきらないものばかりをやっていくので、初めて尽くしになります。こうした事柄に対して、「やったことがないから私の(我々の)仕事ではない」という考えでは、提供できる付加価値は増えませんし、自らの成長機会も失ってしまいます。
なので、「例え初めて臨む事であっても、緻密に調べて誠意を持って考えたものを堂々とクライアントに提案しなさい、初めてであるかどうかは問題ではない」と伝えています。
2点目は、「一度始めたら逃げずに責任をとる」ということです。逃げ場がなくなれば、自分で調べ尽くして、考え尽くして、アウトプットしていくしかない。そうなるといつの間にか、信頼も得られるようになりますし、立派なプレイヤーに成長するんですよね。
平野:マーケティング教育の場で見ていると、広告主企業の方々も次々にわからないことに直面します。そこで彼らが求めているのは、一緒に考えてくれる人です。もっと言うと、半歩先を進んでくれるパートナーです。まさしくそういう人たちを育てているんですね。
杉山:私も、組織の前にまず人だと思っています。広告会社の社員はお客様からいただく仕事で成長していきます。経営者は座学の場を提供すること以上に、良い仕事をいただける企業との関係を構築し、社員に仕事にやりがいを持ってもらい、自ら学びたいという動機を引き出すことに力を注ぐべきです。そうして個々人のスキルを高まることで新しい仕事が増え、売上も上がってくるのではないでしょうか。