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ITの力で地域を活性化!トラストバンク「ふるさとチョイス」、市場開拓の道のりとマーケティング戦略

マーケティング施策の3つの軸

――会員数は約180万人弱とのことですが、新規とリピーターの割合はいかがですか? また、新規顧客獲得とリピーター育成において、それぞれどのようなマーケティング施策を行っているのでしょうか。

武内:今のところは、リピーターの方の方が多いですね。2015年、2016年と会員数は急増し、今も良いペースで増えています。

 また、マーケティング施策の軸は、「新規獲得」「利用促進」「共感の醸成」の3つに分けて考えています。

新規獲得

武内:新規獲得においては、まずは「そもそもふるさと納税をやるかどうか」というハードルがあります。やらない理由は大きく分けて「めんどくさい」「よくわからない」「制度に共感しない」という3つです。それぞれの方に対して適切なメッセージでコミュニケーションをとっていくのが肝心です。

 例えば「めんどくさい」という方には、「簡単にできるよ」というチュートリアル的なコンテンツを用意しています(例:「ふるさと納税とは?」)。リスティング施策も取り組んでいますが、そもそも我々のサイトはSEOが強いので、かなり自然流入が多いです。

利用促進

武内:「利用促進」に関しては、マーケティングオートメーションの重要性を認識し、活用しています。

 一概に新規ユーザーといっても、かなり多くのレイヤーや属性の方がいらっしゃいます。例えば、とにかく特産品をお得にゲットしたい方もいれば、ご自身の地元を意識する方、あとは頑張っている地域を応援したい方など。また所得もかなりグラデーションがあります。そういった中で画一的にコンテンツを送っても、みなさん関心軸が全然違うのであまり意味がありません。

 重要になってくるのは、控除上限額という概念です。これはECで言い換えると、お財布ですね。例えば実質2,000円で控除限度額が10万円の方であれば、10万円を超えてまで納税する方はあまりいらっしゃいません。なのでより上限近くまで、ということがポイントになってきます。

 単純に残額に応じてセグメントを切ったメール施策も用意していますが、ポイントは「なぜ満額まで寄附をしていないのか」という理由の分解になってきます。

 我々は要因の仮説を色々立てて、シナリオを組んでいます。例えば「冷蔵庫の中身が満杯で頼もうと思わない」という方であれば、日持ちするものを紹介したり、後からお礼の品と交換できるポイントを紹介したりします。一方で「上限額を超えないか心配」という方であれば、詳細なシュミレーションができるコンテンツのご紹介をしています。

――それはメールを通じてお知らせをしているのですか?

武内:起点になっているのはメールですね。我々はSNSも一通りやってはいますが、多くのメール会員がいることもあり、メールのリーチ力は圧倒的です。

 メールを送る頻度に関しては、定期的なものもありますが、正直なところ本数の最適化ということはあまり考えていません。どちらかというと、本数よりもコンテンツに魅力があるかどうかがより重要だと考えています。

 その方にとって興味のあるコンテンツであれば、頻度が高くても好意的に受け取られますし、逆に関心のないコンテンツであれば週1でも月1でも、いらないんですよね。

――それぞれのユーザーに合ったコンテンツは、何を基準に判断しているのでしょうか? 実際に過去に寄附した内容や、閲覧したコンテンツなどでしょうか。

武内:マーケティングオートメーションのスコアリング設計思想になぞらえると、かなり色々な種類のスコアリングを行っていますね。

 例えば、ガバメントクラウドファンディング(政府・自治体が行うクラウドファンディング/以下、GCF)は、関心のあるなしがはっきり分かれるので、関連ページを閲覧したことがある、もしくは寄附したことがあるというデータを元に情報を送っています

 また、関心の持ち方は同じプロジェクトでも人によって多様です。例えば、高知県越知町はゲストハウスを作るGCFを行ったのですが、それに共感した人は社会貢献意識の高い方だったり、高知県や越知町など近辺出身の方だったり、もしくは結果としてもらえるプロジェクトに関連するお礼の品に惹かれる方だったり……と、惹かれたポイントは様々です。まだ改善・開発途上ではありますが、一つのプロジェクトを色んな角度で訴求できるように、様々なロジックのスコアリングを用意しています。

共感の醸成

武内:また、制度に共感しないという方に対しては、「地域ではこういう変化が起きている」「寄附によってこれが実現した」といったことを紹介するコンテンツを用意し、共感を醸成しています。旅行や地域に関心のありそうな方、普段からNPOに寄附しているような方に向けて、それぞれの興味関心にあったコンテンツでリーチすることが大事です。

 ふさと納税市場が大きくなっている理由は、明確なインセンティブがあるからです。特にこれから年末にかけては寄附が加速するので、我々もメリットを押すような訴求が強くなります。ただ、あくまで本質は寄附なので、寄附によって地域にどんな変化が起きているかを、寄附されたみなさんにぜひ知っていただきたい。そこでふるさと納税で地域に起きた変化をドキュメンタリーチックな動画で紹介するコーナー「CHOICEEDS(チョイシーズ)」を設けています。

 具体的な事例を紹介することで、多くの方は応援したいと思ってくれるんですね。無理のない範囲で、気持ちが動いてアクションが変わる方を増やしていけたら……という思いから、このようなコンテンツを作っています。

――「共感の醸成」の効果は、なかなか数値では表れにくいと思うのですが、どのように施策の効果を計っているのでしょうか。

武内:獲得系と違って、効果が見えにくいことは課題ですね。しかし、効果の見えやすさと重要さは、全く別の話だと思っています。

 我々四半期に一度のペースで、市場調査を実施しています。制度理解や制度へのイメージ、寄附の意向に加えて、「地域を応援したい」という方が増えたかどうかなども併せて調査して、1つのKPIとして見ています。

――最後に今後の展望について教えてください。

武内:ふるさと納税は「自分で税の使い方を選べる唯一の税制」だという言われ方をよくされます。ふるさと納税が一般的になることで、税金がどう使われているかを自然に意識することが当たり前の世の中にしたいですね。個別の事例を見て「ああ、これなら応援したいな」ということが入口だと思うので、「ふるさとチョイス」を通じて、様々な情報を適切な方に届けていきたいです。

 地域活性化の取り組みが上手くいっている地域は、「ヒト」「モノ」「おカネ」「情報」全てが十分でない中でも、色んな軋轢やハードルを気合いで切り拓いていく主役の方がいます。我々は、そんなブルドーザーみたいな方を支援していきたい。価値あることをやり続けていたら、それに共感してくれる人も増えてくるはずなので、やれるところまでやっていきたいなと思っています。

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この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/11/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/27496

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