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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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IoTは広告をどう変えるか  生活者の「文脈」を鮮やかに捉えるウェアラブル・OOHの最新事例


媒体の立ち位置やクリエイティブはどう変わるか

浦辺:「Marketing of Things」が進んだときに、生活者のニーズに常に耳を傾け提案していくコミュニケーションが求められるようになります。今後、媒体であるThingsや、コミュニケーションに求められる役割、生活者との関わり方も変化していくと思いますが、その点はどのように考えられていますか。

岩本:やはり、生活者の日常におけるコンテキストに寄り添ってコミュニケーションしていくことが大事なポイントだと思います。

 たとえば、洗剤を買うシーンを思い浮かべてください。今までの洗剤のマーケティングコミュニケーションは、テレビCMを大量に流し、ドラッグストアで特定のブランドを想起してもらい、魅力的な陳列で手に取ってもらうようなやり方が一般的だったと思います。

 ですが、生活者が最も洗剤を“買わなきゃ!”と感じるのは、洗剤が切れそうだと気づいたその瞬間のはずです。そうした“瞬間”をいかに捉えて適切な情報を絶妙なタイミングで届けられるかが、今後の広告コミュニケーションでは重要になっていくのではないでしょうか。

 さらに洗濯という文脈でお話しすると、洗濯機に入れた洗濯物をバイオ分析することで生活環境や体調といった科学的データが取れるようになれば、体調不良を早期発見し、その症状にあった最寄りの病院の提案だって、「あって嬉しい余計なお世話」として実現できるようになるかもしれません。

神内:すでに商品に関心がある人にどうやってアクションしてもらい、購買につなげていくためのIoT活用が注目される傾向にあるかもしれませんが、実は広告の最も基本的な機能である「知らないことを知ってもらう」ということも、IoTを使うことで効率よくできると考えています。

 たとえばニューヨークのタイムズスクエアに掲出されたDoveの広告で、雨が降ってきたときだけに広告映像を流したものがあるのですが、それは雨をシャワーに見立てていて、周囲で広告を見ていた人たちをあたかも同じシャワールームにいるような体験をさせているんですね。

 そうした「出会いの演出」、つまり、IoTを活用することによって、コンテキストに応じてその人が思ってもいなかったシチュエーションを作ることができるという強みがあるのではないでしょうか? 実際こうしたDOOHの広告効果は証明されていて、従来型のOOHとDynamic DOOHとでは、認知で18%の差、SNSでのシェア意向で2.7倍の違いがあるとの結果が出ています。

 DOOHの効果
Dynamic DOOHの効果

浦辺:Doveの事例の話を伺うと、場面に応じあらかじめコンテキストをいくつかシナリオ設計していく必要があって、その点が昔と比べて手間がかかるようになっているように思うのですが、いかがですか。

神内:その通りだと思います。ですが、AIやIoTが浸透してきたことにより、AIがコピーを作ったり、媒体選択をしてしまう世の中において、どうしたら見た人に驚きを与えられるかというビッグアイデアの部分こそが、クリエイティブに残されたフロンティアなのだと思いますね。

データ利用者側にビッグアイデアが求められる時代が到来する

浦辺:最後に、すでにいくつか実証実験などを通じて効果が示されているとのことですが、現時点でどのぐらいの効果が出ているのかを教えてください。

岩本:当社では、ウェアラブル端末を使ったコミュニケーションに関するブランドリフト調査を行っています。とあるヘルスケア大手のクライアント企業の調査で、ウェアラブルとPCで同じ動画素材を配信したときに、広告接触者と広告非接触者の間にどれだけのリフトアップがあったかを検証しました。

 その結果、ウェアラブルの場合は110%増加だったのに対し、PCは59%増にとどまり、ウェアラブル広告配信による購買意向のリフトアップがPCを上回りました。ウェアラブル配信が、ブランドに対してポジティブな影響を与えていることがわかってきました。

ブランドリフト計測結果
ブランドリフト計測結果

神内:IoTの時代になって、2020年までに300億以上のデバイスが接続されるだろうと予測されていますが、実際にはすでに多くの人たちがモバイル(スマートフォン)を持っていて、そこから得られるデータというのはIoTの宝庫みたいなものですよね。そしてロケーションマーケティングという意味で、OOHとモバイルは非常に親和性があると思っています。

 位置情報とオーディエンスデータを結びつけ、モバイルとOOH広告を組み合わせると高い相乗効果が出ることもわかっていまして、モバイルとOOHで広告配信を連携させると、モバイルだけで広告を行う場合と比べ広告認識率が2.2倍、CTRが1.6倍になるというデータが出ています。

 また、世界中で急速に都市化が進んでいますが、統計だと2050年までに世界人口の75%が都市在住になると予測されています。ということは都市だとインフラが整備されているので、放っておいてもデータが取れる環境が整っていくことになる。今後は、そうして大量に得られるようになったデータをどう利用するか、利用する側のビッグアイデアがより求められる時代になってくるように思いますね。

浦辺:お二人のお話をお伺いし、IoTの進展により、マーケティングのあり方も大きく変化していくと改めて感じました。より生活者に寄り添い、生活者のコンテキストに合わせたコミュニケーションが企業に求められるようになり、マーケティングはもはやサービスとの差がなくなっていく。このことをよく理解した上で、新しいコミュニケーション、マーケティング活動を企画・推進していくことが重要ですね。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/01/12 16:18 https://markezine.jp/article/detail/27548

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