YouTube/Facebookの注意点
これまで見てきたように、YouTube/Facebookは非常に優れたデジタルマーケティングツールだが、いくつかの欠点も存在する。
カスタマイズの自由度が低い
YouTube上の動画キャンペーンでは固定のフォーマットを使用する必要があるため、独自のロゴ付きのブランドバーやランディングページへの誘導に効果的なCTA(Call to Action)を動画プレイヤーに組み込むことができない。これらの手法は、ブランド認知度やエンゲージメントを高める効果が200%~500%あると考えられている。
親和性の低い掲載
動画キャンペーンは正しいターゲット(人)はもちろん、正しい場所(文脈)で広告を届けることで、より高い成果が生まれる。しかしYouTube/Facebook上でこれらの2点を同時に実施するためにはいくつかの問題がある。
YouTubeは、動画コンテンツ内に広告を掲載するインストリームというフォーマットで、ドラマやお笑いなどに夢中なユーザーの視聴体験を中断させることになる。スキッパブル広告(=スキップが可能な広告)とはいえ、やはり、強制視聴であることには変わらない。
Facebookでは、動画広告はユーザーのタイムライン上に表示される。ターゲティングについてはユーザー自身の登録情報や”いいね”に基づいているため、高い精度を持つが、本来人々はFacebookを知人とつながったり、近況を共有するために活用している。知人の近況を知らせるコンテンツの前後に広告を表示させても、ユーザーはあまり高い関心を寄せないだろう。
さらに、Facebook上での動画キャンペーンは、わずか3秒経過した時点で課金が発生し、かつ、動画は自動再生されるため、ユーザーエンゲージメントがないまま費用が発生してしまうきらいがある。
ウォールド・ガーデンゆえの不透明性
ウォールド・ガーデン(壁に囲まれた庭)のYouTube/Facebookは、第三者データと連携できない。そればかりでなく、これまで広告の透明性を担保する第三者検証ツールの導入もできず、広告主はGoogle/Facebookの自己採点に頼らせざるを得ず、中立性の担保が難しい状況にあった。
実際、2017年はこの二大巨人に対する風当たりが強い一年となった。たとえば、2017年3月、英国メディアが「Youtube上の不適切な動画内(過激主義の主張)に、大手企業の広告が配信された」と報じ、大手企業が次々に広告配信を取り下げ、大きな話題を呼んだ。
同年9月にはFacebookのデータに「相違」があり、ユーザーの平均ビデオ視聴時間を過大に報告していたことをFacebookが認め、広告業界全体が不満に包まれた。
これ以降、第三者機関による検証の導入や人の目による検閲など、両社による信頼回復に向けた対策が講じられつつある。しかし、広告業界全体が改めて、広告枠の透明性を管理できるオープンなエコシステムのもと、ブランドセーフティな環境において広告を掲載する重要性を再認識したという意味では、これらの出来事の意義は大きい。
まとめ
以上のように、マーケターも一生活者として馴染みのあるYouTube/Facebookは、デジタルマーケティングを考える際に有効な施策である。特に、ユニークなデータセットを活用したターゲティングや手軽にトライアルできる単価設定は、スケールのあるリーチをマーケティングゴールとする際、そのメリットは大きい。
一方で、プラットフォームの性質上、ユーザーがYouTube/Facebookにアクセスする本来の目的に沿わない中での広告掲載は、ユーザーとの親和性をことに重視する動画ブランディングを行う際には、必ずしも最も有効なツールとは言えない。
「とりあえずYouTube/Facebook」となる前に、まずはそれぞれのツールの特性や得られる効果を理解し、キャンペーンゴールを達成するためにそれが最適なツールかどうかを、今一度立ち止まって費用対効果の観点から検討したい。