加熱するアドブロッカー脅威論
2015 年頃から急成長を見せるアドブロッカーについて、米国最大のビジネス誌『Fortune』は「身構えよ、アドブロックの津波はすぐそこだ」と危機感を示し、『ウォール・ストリート・ジャーナル』はアドブロッカーを「パブリッシャーにとっての悪夢」に例えてみせている。
アドブロッカーは本当に、広告を出したいブランドやサイト運営者にとって脅威でしかないのか。以下、米国ネット広告団体IABとC3Researchが行ったパネル調査からその使用実態を読み解いて見たい。
調査から読み解くアドブロッカーの使用実態
IABが行った調査で以下のことがわかっている。
- アドブロッカー導入のきっかけは、サイト読み込み時間の悪化、記事の閲覧を邪魔するポップアップや自動再生動画へのイラつき。
- アドブロッカーユーザーは、デジタルネイティブで18-34歳の男性である傾向が強い。オンライン上で長時間過ごし、情報を収集するこの層にとって、サイトの読み込みで待たされること、読みたい記事や動画コンテンツ視聴を邪魔されることは我慢ならない。
- 一方、調査対象者の40%は自身のパソコンにアドブロッカーを導入していると信じていたが、よくよく調べが進むと、実際は26%(4人に1人)しかアドオンしていなかった。多くのユーザーは、マルウェア対策ソフトやブラウザーに内蔵されているポップアップブロック機能をアドブロッカー と混同しがち。
- アドブロッカーを利用しているユーザーのうち、3分の2は、場合によってはアドブロック機能をオフにしても良いと回答した。実際、現在アドブロッカーを使用していないユーザーのうち20%は、一度は導入したにもかかわらず、なんらかの理由で機能をオフにしたユーザーである。
「生活者は広告を嫌っている」という仮説はしばしば証明不要の前提として扱われているが、そもそもは、生活者に対しところ構わず大量の広告を浴びせている業界自身が招いた事態である。
この調査結果からわかるように、生活者がアドブロッカーを導入する動機は、サイトの読み込み時間を短縮したり、データ通信量を削減したり、Web閲覧をより快適にするためであり、決して広告が嫌いな訳ではない。つまり、正しいアプローチで提示された広告を生活者は受け入れるというシナリオは描けるのだ。