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プログラマティック広告における3つのトレンド、「透明性」「AI」「プログラマティックTV」の現在

セルサイドとバイサイドでポジティブな革命を

  「The Next Year In Video: Evolving Programmatic For A World Of Video Convergence」と題されたセッションでは、FreeWheelのゼネラルマネージャHerve Brunet氏(以下、Herve氏)がプログラマティック・バイイングによって実現される動画広告配信について紹介していました。

「The Next Year In Video: Evolving Programmatic For A World Of Video Convergence」の様子

 冒頭、Herve氏は現在の動画視聴環境について、テレビに加えてデスクトップやモバイル、タブレットなどデバイスが多岐にわたることをあげます。これに加えて、オリジナルコンテンツや動画視聴プラットフォームの増加により、オンデマンドでの動画視聴へのシフトが加速しているといいます。いまやユーザーは、デバイス・プラットフォーム・コンテンツを自由に選んで動画を視聴できます。

 このような状況下のため、広告主は数多くのユーザーにリーチするためにリニアTVだけでなくOTT(オーバー・ザ・トップ)への広告出稿を検討する必要が出てきますが、課金形式(GRPとCPM)や広告配信プロセスの違いがあり、ユーザーの動画視聴環境の変化に広告主が追い付けていないのが現状だといいます。このギャップを埋めるためには、セルサイドとバイサイド双方の協力が必要で、これを実現することは「ポジティブな革命」であると締めくくっていました。

 eMarketerによれば、2017年のプログラマティックTV広告費は前年比75.7%増の11.3億ドル、2019年には40億ドル近くになるといいます(参考記事はこちら)。Herve氏のいうポジティブな革命が起これば、この成長スピードはさらに加速するかもしれません。

テレビ業界は緩やかにプログラマティックTVに移行

 プログラマティックTVの浸透にはテレビ業界の協力も欠かせません。「State Of Cross-Media Measurement And Programmatic TV」と題されたセッションの中で、Coalition for Innovative Media Measurement(CIMM)のCEO Jane Clarke氏(以下、Jane氏)は、冒頭テレビ業界がプログラマティック広告に対して持っている見方を紹介していました。

「State Of Cross-Media Measurement And Programmatic TV」の様子

 Jane氏によれば、細かい粒度でのターゲティングや広告在庫管理の自動化はテレビ業界もプログラマティックTV のポジティブな面と捉える一方、ビューアビリティ問題の増加やブランドセーフティ、広告枠のコモディティ化をネガティブな側面として見ているとのことです。

 実際には、テレビ業界は注意深くプログラマティックの世界に足を踏み入れている状態で、ターゲットの最適化を目的としたファースト/サードパーティデータの活用、限られた範囲内での世帯ターゲティング提供、一部広告在庫の自動管理(実際は完全に自動化できていないようで、Jane氏はこの状態を「Progra-manual」と揶揄していました)には乗り出している一方、RTB(リアルタイムビディング)対応はまだできておらず、かつプレミアム在庫の提供のみに留まっているとのことです。

 最後にJane氏は、2018年にプログラマティックTVに起こりうる変化として以下5つを紹介していました。2018年は2017年よりも動きや変化の多い年になるとのことですので、今後の動向に目が離せません。

1、オーディエンスベースで購入可能な広告枠の増加
2、データセグメント名とその分類の標準化
3、クロスプラットフォーム/デバイスで購入可能な広告在庫の増加
4、MVPD(Multi-channel Video Program Distributor:複数チャネルビデオ番組配信業者)によるアトリビューションモデリングのための広告データ開示
5、テレビ業界内の提携による番組や広告識別子の標準化

プログラマティック広告の未来

  ここまで、「透明性」「AI」「プログラマティックTV」について、参加したセッションの内容をご紹介してきました。マーケティング先進国のアメリカで起こっている変化を関係者の口から直接聞くことができたことはもちろん、プログラマティック広告の未来がぼんやりと見えた気がしたのも事実です。

 「透明性」に関しては、バイサイド/セルサイドの双方で取り組みが進んでいくでしょう。バイサイドは広告の「配信量」よりも配信先の「質」に比重を置き、セルサイドはPMPの在庫を拡充していくだけでなく、自社メディアの質を損なわないようads.txtといったソリューションの導入を進めていくかと思います。バイサイドとセルサイドをつなぐDSP/SSPベンダーはこの過程で吟味され、「質」を担保できないベンダーは淘汰されていくことが予想されます。

 「AI」を導入するうえでカギとなるのは「データ」です。一定量かつ期待するアウトプットに応じたデータをインプットできるかどうかでAIを有効活用できるかできないかがはっきり分かれるかと思います。オンラインでのコンバージョンデータはもちろんですが、これに加えて広告主は自社のCRM データをインプットできる環境づくりが不可欠でしょう。

 また、AIはデータマイニングにおいて人に取って代わる存在になりうる(Havas MediaではすでになりつつあるとCatherine氏は言っていましたが)かもしれませんが、3年後から10年後の適切なブランドメッセージ等、想像力を必要とする仕事は人の方が上手だといいます。AlbertのOr氏が「Visionary(想像力のある)」という単語を繰り返し強調していたことがとても印象に残っています。

 「プログラマティックTV」に関しては、トラディショナルなテレビ業界含めた大きなうねりがまさに起こっている状況だと感じました。動画視聴するデバイスやプラットフォームの多様化により、オーディエンスベースでのターゲティングは必要不可欠となり、それを実現するための仕組みが整えられています。CIMMのJane氏によれば、以下の通り2021年にはAddressable TV(世帯レベルでターゲティング可能なテレビ)を保有する世帯が7,400万世帯に達する見込みとのことですので、このタイミングでブレイクスルーが起こるかもしれません。

「State Of Cross-Media Measurement And Programmatic TV」の資料より引用。
Jane氏より本資料の引用について承諾を頂いております。
(We have permission to quote from Jane Clarke.)

 2017年も残すところあと僅かとなりました。2018年もさまざまな変化が起こりそうですが、もっと先の5年後から10年後のエコシステムがどのようになっていて、私たちの仕事はどのような位置づけになっているのかを想像しながら、2018年を迎えたいものです!

本記事は「Unyoo.JP」の記事「透明性、AI、プログラマティックTVの現在:PROGRAMMATIC I/O 2017より」を要約・編集したものです。オリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらをご覧ください!

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この記事の著者

高瀬 優(タカセ ユウ)

アタラ合同会社 コンサルタント。国際基督教大学(ICU)を卒業後、総合電機メーカーで自社製品の法人営業ならびに販売推進業務に従事。その後、自身がリーダーおよびマネジメントを務める音楽バンド活動に専念し、CDの全国流通や全国ツアー等積極的に活動を行う。2016年よりアタラに参画し、国内はもちろん、グローバルに事業を展...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/20 09:00 https://markezine.jp/article/detail/27628

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