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先進企業はこうして売っている 海外展開の成功事例『サービスイノベーションの海外展開』

海外展開の5つの成功要因

 著者らによれば、サービス産業海外展開の成功には5つの要因がある。「コンセプトの力」「ビジネスシステムの翻訳」「経営理念の伝道」「空間あるいは“場”の輸出」「モノの助け」だ。

 「コンセプトの力」は、主に提供されるサービスのコンセプトの国境を越えた普遍的な魅力を指す。海外市場にアピールするには、文化の差を超えて現地の顧客などの共感を得られるサービスでなければならない。

 「ビジネスシステムの翻訳」とは、すなわち「コンセプトの力」を具体的なサービスに落とし込む仕組みづくりである。日本でのサービス供給システムがそのまま海外に適合するパターンは少ないため、現地に合わせた翻訳が必要になる。

 「経営理念の伝道」でいう経営理念とは、企業の存在目的やあるべき姿を指し示すものだ。海外市場での顧客獲得や、現地従業員の努力を引き出すのに、経営理念に対する「共感」が大きな役割を果たす。そのために経営理念を大切にし、浸透させる“伝道師”とも言うべき存在が重要になるのだ。

 「空間あるいは“場”の輸出」における“場”とは、顧客との接点であり、従業員が働く場のことである。そこで日本国内での成功時と類似した空気感や感情の流れを作ることが重要なポイントになるということだ。

 最後の「モノの助け」は、サービスそのものは輸出できないが、そのコンセプトを乗せたモノを使うことだ。それによってサービス展開の水準を高められる。小売店であれば商品、飲食店であれば調味料がそれにあたる。サービス産業である以上「人」が最も重要であるのは間違いないが、モノがあれば、海外展開における強みを付加できる。

無印良品の海外展開が成功した理由

 本書で海外展開の成功事例の一つとして取り上げられている、「無印良品」を運営する株式会社良品計画は、2010年代以降、好調な業績をキープしている。その要因の一つが、中国での展開を中心とする海外事業の拡大だ。

 良品計画の2017年2月期の営業収益は3,333億円、営業利益は383億円だ。うち、海外事業の営業収益は1,176億円、営業利益は157億円。業績に占める海外比率は、営業収益で35%、営業利益では41%にも上る。2010年頃には海外事業の収益が200億円足らずだったのを考慮すると、海外展開は成功し、軌道に乗っていると断言して差し支えないだろう。

 元々国内の無印良品には「MUJIGRAM(ムジグラム)」と名づけられた店舗管理用マニュアルが存在した。経営から商品開発、売り場のディスプレイから接客まで、あらゆる仕事のノウハウが書かれており、ページ数は2,000を超えるそうだ。

 著者らが注目するのは、各項目の冒頭に「作業の意味・目的」が書かれていることだ。ムジグラムは英語や中国語などにも翻訳されているが、仮に国内と海外で実際の作業に細かな違いが出てきたとしても、「意味・目的」は共通なはずだ。「意味・目的」が明確だからこそ、現地の従業員がその場に適した作業をアレンジできるのだ。

 さらに、そうしてアレンジされた作業は全国のムジグラムに反映される。それにより自分たちの力でマニュアルを改善できるという意識が生まれるため、従業員のモチベーションが向上するのだという。

 こうした取り組みによって、従業員は自ずと良品計画への理解を深め、「共感」の度合いを増していく。それが現地の顧客にも浸透していき、さらに広がる。本書で“共感の連鎖”と呼ばれるこのつながりこそが、サービス産業の海外展開に際しての、極めて重要なポイントなのである。

情報工場は厳選した書籍のハイライトを3,000字のダイジェストで配信するサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を運営。国内書籍だけではなく、まだ日本で翻訳されていない海外で話題の書籍も日本語のダイジェストにして毎週、配信。上場企業の経営層・管理職を中心に8万人超のビジネスパーソンが利用中。

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情報工場(ジョウホウコウジョウ)

厳選した書籍のハイライトを3,000字のダイジェストで配信するサービス「SERENDIP(セレンディップ)」「SERENDIP(セレンディップ)」を運営。国内書籍だけではなく、まだ日本で翻訳されていない海外で話題の書籍も日本語のダイジェストにして毎週、配信。上場企業の経営層・管理職を中心に8万人超のビジネスパーソンが利用中。

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2018/06/07 10:51 https://markezine.jp/article/detail/27641

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