インセンティブはモチベーション

小代:そうした地元の方々の声を集めるところから、具体的な商品に落とし込み、製品を販売するまでの一連のプロセス設計を坂田さんにお願いしました。
他企業とも共創プロジェクトで実績もあり、自治体との取り組み経験も豊富ということでお願いしましたが、今回はまだいろいろな方のご意見を集める段階から話題になっており、うれしい悲鳴を上げています(笑)。期待感がすごいですね。
坂田:仕組み作りに関しては、小代さんとも相談しながら進めましたよね。そして地元の味を募集するに際し、方言などの地元言葉を使って呼びかけることにしましたが、これがすごく良かったと思っています。
地元の言葉で呼びかけられた瞬間に、「自分の地元の味を紹介し、一緒に商品を開発する」という、自分ごとのモチベーションとなるからです。それに加えて、地元あるあるネタを仕込んだのも話題となりました。
群馬県の学校では、号令が「起立! 注目! 礼!」なので、そのネタを入れることでより地元の方の郷土愛を喚起するなど、かなりネットで注目され、Twitterだけでも数百万人にリーチできました。

加えて、「アイデアひとつで地元の商品が作れる」、しかもその商品が「地元のコンビニやスーパーに並ぶ」という大きな出来事につながっていくのも、参加者のモチベーションになっていると思います。
自分がアイデアを出したポテトチップスが、本当に商品かされるかもしれない。こういうモチベーションがあるからこそ、期待も大きくなると考えています。もちろん、実際に商品化するカルビーさん側は、企業ならではの大変さがあると思いますが。
共創を阻む企業側のハードルとは

小代:確かに、リスクがないとはいえません。これまでもいろいろな方からのアイデアを入れることはありましたが、これまでは基本的に、社内で完結している形で開発を進めてきました。
今回のように、デジタルを活用して本当に様々な方を巻き込んで商品開発を進めることは初めてに近いので、それに対するリスク管理については問われました。
坂田:そこはどのように解決したのでしょうか。
小代:もちろんリスク管理は徹底した上での回答になりますが、結局のところ、リスクを気にしてばかりでは新しいものは生まれません。同じことをいつまでも続けるか、新しいことに挑戦するのかという視点で、リスクと挑戦のバランスを取りながら進めています。
すべてをハンドリングできないというのも、逆にソーシャルメディアの面白さであって、そこに新しい発見が生まれる。少なくとも、ネット上で多くの方にポテトチップを話題にしてもらっていることは事実です。これ自体で、大きな波及効果はあったと評価しています。
ただ個人的には「本当に意見が集まるのだろうか」という不安がありました。応募数もさることながら、47都道府県の地元チップスなので、人口密度の低い県民からの声がなかったらどうしよう、と(笑)。
坂田:初日で1,000件くらいは集まりましたね。小代さんが不安視していた、地域による意見数のバラつきもあまり見られなく、予想通りの反応です(笑)。自分ごと化したこと、参加へのモチベーションが大きいことに加え、設問設計も「思い出の味と、そのエピソード」としたことで、様々な意見が集まるようになりました。おそらく、「ご当地料理を教えてください」では、こういう反応は得られなかったと思います。
連動しているFacebookの反応を見ていると、「こういう味もある」など地元での話のネタになっており、みんながそれだけ「ポテトチップスの味にするなら、何がいいか」を考えているわけで、通常のマスマーケティングでは、ここまで様々な方にポテトチップスに関して考えてもらえなかったと思います。