個人に即した情報やサービスが提供される社会
有園:なるほど。冒頭で森田さんから、2025年をひとつの目処にという言葉がありましたが、野村総研の資料で「2023年にはIoT市場が4兆円を突破する」という予測が出ています。さらに現在の広告市場が6兆円強であることを考えると周辺事業も含めると相当なものになると思います。この、覇者になりたいと?
福田:なりたい、ですね(笑)。
有園:もっと突っ込んで聞きたいところですが(笑)。でも電通テックのような会社が、企業がマーケティングに活用しうる個人情報を管理してIDの認証を担うなら、それは私としては非常に理にかなった動きのように感じます。
福田:個人情報の活用というと、日本ではネガティブに捉えられがちな傾向が強いですが、私はそんなことはないと思っているんですね。もちろん安全で適切な管理は大前提として、個人情報が一元管理されていると、生活者にも様々なメリットが生まれます。
よく、医療や健康管理が例に挙げられます。地域や病院を超えて個人の医療情報が管理されていれば、どこでも適切な診療が受けられますし、健康に関するパーソナライズした案内も受けられる。
土肥:個人情報の話は誤解されやすいですが、生活者の側も、得られるメリットが明確なら喜んで情報を提供するようになってきています。最近の例だとZOZOTOWNが始めた「ZOZOSUIT」がそうですよね。
段々と抵抗が少なくなったその先に、統合IDみたいなものがあるのかなと。いろんなサービスで個別IDのログインを求められるのは面倒だし、実際にいくつも鍵をもっているようなものだから、安全性も損なわれます。
生活者に向き合って生活者を知り、行動を促す
有園:今のお話を聞いていて思い出しましたが、年末に山梨県で、火事の現場から人命救助した高校生に感謝状が出されたというニュースがありました。これ、この男子高校生が「あの部屋のおじいさんは足が悪い」と知っていたから救助に向かえたという報道があって、こうした個人の情報を把握していることは確実に適切なケアにつながるんだな、と思ったんです。
もちろん情報の取り扱いには万全を期するべきですが、そこを担保してビジネスができれば、よりよい未来につなげることができると思います。実際、政府も「ソサエティー5.0」として、個人情報をデジタル上で管理して、パーソナライズした高度なサービスを提供することを掲げています。
土肥:そうですね。マーケティングでも“よりよい未来”の観点に立って、生活者と企業がいい関係を築けるようなお手伝いができればと考えています。
これは我々の反省点かもしれませんが、以前のプロモーション実行に留まっていたときは、企業の側を向いてビジネスをしてきたと思います。今後は、個人情報は各個人のものであることをよく踏まえ、生活者に向き合って、目安としている2025年の社会に貢献するビジネスを志向していきたいと思います。
有園:その視点の転換は大事ですね。そうなれば生活者をもっと活発にし、生活者とつながるというステートメントがより具体化する感じがします。
福田:そうしていきたいですね。何らかの情報を受けて人が行動したら、それはもうプロモーションだと思うので、蓄積してきた知見を活かして我々だからこそのビジネスを確立していきます。
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