LINE Ads Platformは、本当に大きなイノベーションをもたらした
多岐にわたるLINEのプロダクトの各領域において、強いパートナーシップを築いているサイバーエージェント。本セッションではLINEの池端由基氏を進行役に、サイバーエージェントからLINE Ads Platformを担当する菊原祐樹氏、LINEポイントを担当する手塚太一氏、LINE 公式アカウントとスポンサードスタンプ、LINE ビジネスコネクトを担当する井原應成氏、そして同社子会社のAIメッセンジャー代表でありLINE カスタマーコネクトを担当する石川大輔氏を迎え、それぞれの現状と今後が共有された。
はじめに、2016年6月にリリースされた「LINE Ads Platform」について、菊原氏は「直近のデジタルマーケティング業界においても、コミュニケーションに本当に大きなイノベーションを起こしたプロダクト」と評する。
標準的な運用でも効果が見込めるが、そのポテンシャルを最大限活用するために、同社ではアルゴリズムと設計の理解を前提に、必要なアクションを効率的に実行できるオペレーションとクリエイティブに重きを置いている。
体制の面では、まずプラットフォームの思想や有効なアクションを把握するために、専任の分析チームを設置。そこで導き出される知見を速やかに実行に移せるよう、オペレーションにも専門組織を設け、またクリエイティブについても業界やフォーマット別に量・質ともに高速PDCAを回せる体制を整えている。これらのチームは日々コンサルティング部門とも連携して、常に良好な状態で運用できるようにしているという。
待たれるCPF(Cost per Friend)モデルでの運用は?
「LINE Ads Platform」の現状と今後として、菊原氏は「これまではダイレクトレスポンス目的の活用が多かった。今後はさらに公式アカウントと連動したアクティブフレンズの獲得に加え、ダイレクトレスポンスでもCPCやCPMを指標とする単純な獲得系に留まらず、不動産・旅行・人材といったユーザーそれぞれに合わせたダイナミック配信も増えてくると考えている」と語る。
アクティブフレンズについては、LINEより「CPF(Cost per Friends)」という指標が提示されており、LINE Ads Platformには新メニュー「LINE Ads Platform CPF」も登場した。「公式アカウントとLINE Ads Platformを連動させた、CPFモデルでの運用も近々できるようにしていく」と池端氏。こういった新たな展開にも、前述の盤石な体制で対応し、パフォーマンスを上げていく考えだ。
ここ1年で注目度急上昇のLINEポイント、その理由と現状は?
次に、より購買に近い部分でのプロダクトであるLINEポイントについて、手塚氏は「この1年でもクライアントからの引きが相当強く、売上も右肩上がり」と状況を紹介する。
ユーザーにも企業にもこれだけ浸透したLINEのプラットフォーム上でのアフィリエイトということで、これまでポイント媒体を活用してこなかった企業が注目し、またユーザーも既存のポイント媒体とは異なる人が集まっていることが、拡大している第一の理由だという。「同時に、10〜20代の若年層が多いことや、新規ユーザー獲得の割合が高いことも企業にとって魅力」と手塚氏。
同社がLINEポイントの運用においてこだわっている点のひとつは、フラウド対策だ。ポイント媒体では不正ユーザーを100%排除することは難しく、当然LINEでも対策をとっている。だが、サイバーエージェントは、よりクリーンな広告配信の実現を目指し、同社子会社のCAリワードが提供する不正対策ツール「BOSATSU」とデータ連携し、不正対策への取り組みを進めている。
これについて手塚氏は「LINE自体は、1ユーザーあるいは1端末にひとつのIDというルールが厳密なので、他のポイント媒体よりは不正は起きにくい。ただ、それでも新しい不正手法はどんどん出てきてしまうので、広告の安全性や透明性が叫ばれる中、いかに先手を打っていくかをLINE社とも積極的に議論している」と話す。
現在力を入れているのは、ファネルのより上部に位置するプロダクトとの連携だ。同社の実績としては、動画広告の視聴にポイントを付与し、商品理解を促したあとにアフィリエイトへつなげたり、公式アカウントでロイヤルティを深めてからアフィリエイトへ誘導してコンバージョンへのアシストをしたり、といった事例が挙がっている。
ただ“ポイントがもらえるから購入してください”といったアプローチだけでは限界がある。手塚氏は「ファネル上部のプロダクトも含めてユーザー動線を考え、しっかりと各企業の商材の理解促進やファン化を促してから、最後の一押しができれば。そうすることで、ポイント媒体でもLTVが高い、これまでリーチできなかったユーザー層と接触できる」と語る。
ユーザーコミュニケーションに革命を起こす!
続いて、公式アカウントとスポンサードスタンプ、そしてコンバージョン後のCRMまでカバーするLINE ビジネスコネクトを担当する井原氏から、特徴的な組織とそこでの取り組みが語られた。井原氏がマネージャーを務める組織の名称は「販促革命センター」だ。
元々LINEのプロダクトを活用するのはダイレクト領域の企業が多かったが、最近はメーカーや小売流通の企業も増え、ユーザーとコミュニケーションをとっていきたいというニーズが高まってきている。「そこに革命を起こしていこうと考えて、こういった名称にした」と井原氏。
公式アカウントだけでも運営負荷がかなり大きく、さらに複数のプロダクトも扱うため、同センターの組織はかなり大きい。販促、ダイレクト、宣伝と3つの事業領域をカバーしながら、センター内はダイレクトセールスやデザイン、オペレーションのグループ、さらに独自のLINE ビジネスコネクト運用ツール「CA-Link」を開発するアドテクスタジオと、複数の専門グループに分かれている。
またデザイングループには、手塚治虫関連のアニメーション制作を一手に手掛けるプロダクション出身のメンバーを中心とするスタンプクリエイターが所属しており、企業の既存キャラクターをスタンプの形に落とし込んだり、新たに制作したりもしている。
CTRが約200%に!多くの企業がしている「メッセージサーチ」
「CA-Link」の機能には、ID連携が不要な施策も数多く用意している。カート放棄商品などのリターゲティングができる「Dynamicリターゲティングメッセージ」や、公式アカウント上でバイトを探すといった検索ができる「メッセージサーチ」などはすでに多くの企業が活用中だ。
「実際、数値でも結果が表れている。メッセージサーチのある事例だと、検索したユーザーに表示する検索結果のカルーセルのCTRは約200%となった」と井原氏。
同時に、ID連携を前提とする機能も充実させている。以前はID連携時にユーザーに自分でIDとパスワードを入力してもらう必要があったが、自動でIDを入れておき2タップで連携できるようにしたところ、ID連携数が200%向上したという。
誕生日のお祝いをはじめとするID連携者へのCRM施策は、やはり効果が高いそうだ。連携してもらえれば、以降のコミュニケーションコストが大きく抑えられる一方、数が集めにくいのがデメリットになる。その点を、IDFAや携帯電話番号と連携したカスタマーマッチなどを通して、効率的で現実的なコミュニケーションを模索していく考えだ。
感情抑制・データ活用・One to Oneなど、カスタマーサポートも進化中
最後に、AIメッセンジャー代表の石川氏から、LINE カスタマーコネクトの活用状況が語られた。同社は、サイバーエージェントがカスタマーサポートの領域に進出することを決定したことから2016年7月に設立。チャットを活用して、カスタマーサポートの未来をつくることをビジョンに掲げている。
複数のパートナー企業と連携し、LINE カスタマーコネクトの4つの機能、オートリプライ、マニュアルリプライ、LINE to Call、Call to LINEを一貫して提供できる体制を整えている。
特に自社内では、まずオートリプライの部分で、AIを活用した自動応答エンジンを開発。産学連携での共同研究を通して、「チャットボットによる話者感情制御」の技術を確立し、特許を申請している。これは端的にいうと、感情的な“クレーム”を、チャットボットでなだめていく技術だ。
またマニュアルリプライの部分も、沖縄に24時間365日稼動するチャットセンターを設けてカバーしている。「普通、音声対応なら1対1だが、テキスト対応なら複数人でも対応できる。AIや先の話者感情制御の技術を盛り込んでいけば、複数人対応の体制で感情の高ぶりを下げることもできる」と石川氏。LINEログインにも対応しているので、当然One to Oneの対応が可能である。
同時に、マーケティングへの活用も進んでいる。たとえば検討時間が長い、あるいは単価が高い商材などは、LPからコンバージョンに一足飛びに進まないことも多いため、その間にLINEで質問を受け付けたりしてユーザーをつなぎ止める、などの策が有効だ。
石川氏が今後見込んでいるのも、やはりLINEの他のプロダクトとの連携。「カスタマーサポートには、ユーザーの問い合わせや購買直前の検討事項などのデータが蓄積するので、それをLINE ビジネスコネクトに反映して双方でサイクルを回しながらコンバージョンを引き上げるといったことができる」と期待を話す。
複数の観点で取り組みが語られたが、共通していたのは各プロダクトの運用に適した万全な体制と、それによって多数の実績から得られる知見を即座に反映できる点だろう。最後に菊原氏は、「ベストなサービスを提供できているか、常に検証している。今後も日々、よりよい運用に取り組みながら、各プロダクトを有機的に連携していきたい」と展望を語った。