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ファン作り、何から始めるべき? フライング タイガーとヤッホーブルーイングの歩み方

ファン作りへの契機は

安成:今回は事前に定期誌の読者から質問をうかがいましたので、それをもとにお二人にお話しいただければと思います。

 まず、なぜファン作りやコミュニティマーケティングが必要になったのかを教えていただけますか?

柘野:二つポイントがあります。まず、今やるべきことなのかをしっかり考えました。ファン作りはどの企業でも大事だと思うんですが、コミュニティを作るために投資をすべきなのかは考えどころです。状況によって投資すべき戦術や投資の規模も変わります。

 もう一つは、どんなコミュニティなら自社達らしいのかを考えることです。これは企業の事業戦略によって全然違ってくると思います。例えば、全国規模のコンビニを展開する企業と、我々や佐藤さんが必要とするコミュニティは違うと思います。

 また、普遍的なマニュアルを通してどこでも変わらないサービスを提供することと、目の前のお客様に合わせて店ごとに異なるサービスを提供することは、どちらにも価値があります。我々は後者の方針で、この場合はスタッフとお客様のつながり、目の前のお客様に楽しんでもらいたいとスタッフが意識的に考えて取り組むことが重要になると考えたんです。つまり、企業の方針とコミュニティの性質、作り方は密接な関係にあるということですね。

 もともと弊社はメディアに取り上げられることが多く、PRなどのアテンションは高い状態にありました。強化が必要だったのがアクション。知ってくれた人にお店に来てもらい、シェアしたくなる体験をお客様と一緒に作っていくことが重要でした。それによって熱狂的なファンを作っていく必要がありました。

安成:佐藤さんはいかがですか?

佐藤:実は創業から数年はクラフトビール(地ビール)のブームで、売上は右肩上がりでした。ところが、クラフトビール(地ビール)市場に対して、味が個性的すぎる、値段が高いといったことが言われ始め、2000年代には市場が縮小し、私達もその流れに逆らうことができず、よなよなエールも店頭からどんどん消えていきました。売上も右肩下がりで落ちていき、最後に残された唯一の営業活動が「通販」でした。

 すると、全国にいるお客様とほとんど1to1のつながりが生まれ始めました。そういう方がファンになってくれて、だんだんと売上が伸びていったんです。その経験がファン作りへの契機になりましたね。

よなよなエール
会場では参加者に「よなよなエール」と「水曜日のネコ」が振る舞われた

安成:そうして両社ともファン作りを始めていったということですね。最初はどういうことから取り組まれたんでしょうか。

柘野:ヤッホーブルーイングの社長である井手さんが登壇されたセミナーに参加したとき、「社員が熱狂して初めてファンの熱狂は生まれる。そしてファンの熱狂に触れて初めて社員は心から熱狂できる」という言葉が刺さりました。

 それで「自分たちは熱狂しているのか?」と疑問に思ったんです。自分自身はブランドのことが大好きですし、熱狂していると言える自負があったので、スタッフも全員そうだろうと考えました。

 ただ、やはり実際がどうなのかを知っておくべきでしたので、アンケートを取ったんです。すると……正直衝撃的な数字が出てきました。スタッフに熱狂度を5段階、推奨意向を10段階でチェックしてもらったところ、最も望ましい状態である熱狂度4または5かつ推奨意向9または10の割合も15%と比較的高めではありましたが、両方とも1のスコアも19%と非常に高く、両極端な状態でした。

 この状態でお客様に幸せを届けられるのか。そう考えたとき、まずは内側から変えていく必要があると強く思いました。お客様にファンになってもらう前に、まずはスタッフに熱狂してもらわないといけなかったんです。これが2016年の数字だったので、2017年はこれをいかに改善していくかに注力しました。

会場の様子

社員熱狂から顧客熱狂のフェーズへ

安成:では、そこからZebla Japanが2017年に取り組んだことを教えてください。

柘野:目標としては、社員熱狂のあとに顧客熱狂、そのあと共創熱狂という3段階のフェーズを想定していました。

 社員熱狂で取り組んだことの一つは、苺一絵というイベントです。店舗でイチゴの被り物をしたクリエーターにお客様の似顔絵を描いてもらい、1枚500円で販売したんです。スタッフの似顔絵も描いてもらい、全員が同じ衣装で接客することでその楽しさを伝えてもらおうとしました。

 普段とは違う体験を販売したことで、お客様はすごく笑顔になってくれましたね。で、それを見たスタッフも笑顔になるんです。そうした経験が、スタッフ自身が「どういうものを提供することが自分たちの価値なのか」を考え始めるきっかけになりました。

 これを最初からすべてスタッフに任せるような形にせず、外部のクリエーターさんに手伝ってもらうことで、スタッフにお客様を楽しませることの楽しさに気づいてもらうことを意識して設計したんです。その結果、お客様に楽しんでいただけたのはもちろんなのですが、スタッフの高いモチベーションを獲得することができました。

 さらに、プレミアムフライデーが始まったタイミングで「Premium Job Day」を始めました。スタッフが先生になる親子参加の職業体験イベントです。親子で接客やレジ打ちをしてもらったんですが、これが非常に喜ばれました。それと、イベント後にはうちのお店だけで使える商品券をお給料として支給したんです。仕事とお買い物を楽しんで学べるイベントとしてたいへん好評でした。

 そうしたお客様の様子を見ると、スタッフも嬉しくなります。またやりたい、うちの店舗でもやりたい、という声がたくさん上がりました。

 2017年末にスタッフに行ったアンケートでは、熱狂度1かつ推奨意向1の割合が0.4パーセントと激減し、熱狂度4または5かつ推奨意向9または10と回答したスタッフの割合は26.2パーセントに向上しました。

 こうして社員熱狂のフェーズから、今年は顧客熱狂の1年にするべく、特にリピーターから熱狂顧客になってもらえるように、さまざまな企画を展開していく予定です。

安成:ファンに熱狂してもらうには、最初の一歩として社員やスタッフが熱狂していないといけないということですね。ヤッホーブルーイングの方はどうですか?

佐藤:幸い、みんな「よなよなエール」が大好きだと思います。それは採用の段階から強く意識しています。ただ「よなよなエールが好き」だけでなく、ミッションへの共感やヤッホー流の仕事の進め方に合うかどうかなど、カルチャーフィットの部分も重要視しています。自由に意見が言い合えるフラットな組織ですので、社内でもニックネームで呼び合うなど、お互いに仲良くなれるよう工夫しています。ちなみに私はジュンジュンと呼ばれています(笑)。

ファンとは、一緒に活動してくれるスタッフのような存在

安成:ヤッホーブルーイングでは社員熱狂や顧客熱狂についてどんな取り組みをされているんでしょうか。

佐藤:やはりミッションをお客様との共有し、そして共感していただくことが重要だと思っています。これはスタッフ間だけでなく、お客様も巻き込んでの共有ですね。また、ファン化の促進施策としては年間契約があります。通常ラインナップと限定商品から毎月24本または48本、自由に選べるサービスです。会報誌やイベント優待券、醸造所見学ツアーの無料招待もあります。

 そもそもクラフトビールの市場はまだ小さく、弊社としてはなんとしても拡大していきたいという想いがあります。お客様も一緒に市場を作っていきましょうという呼びかけを形にしたのが年間契約なんですよ。

パネルディスカッション

安成:特別な待遇をされると、やっぱり好きになってしまいますよね。御社では超宴という大規模なイベントを開催されていて、ファンの熱狂度は非常に高いと思います。一方で、人数が多くなりすぎることであまり熱狂度の高くない人も参加してしまい、イベントの熱が薄まる可能性がありそうです。その懸念はあるんでしょうか。

佐藤:そうかも知れませんが、大人数になったとしてもお客様の熱狂度を維持・向上させる方法はあると思います。超宴の中でもいろんな濃度のコンテンツがあるので、お客様それぞれの好みで私達のイベントを楽しんでいただけると思います。例えば、昨年秋に開催した超宴では自社コンテンツだけでなく、JALさんに「空育®JAL折り紙ヒコーキ教室」というコンテンツでブース出展していただきました。一例ですが、このように同じ想いをもった企業様と協業させていただくことでコンテンツの幅はどんどん広がっていくと思います。。

 私たちのイベントはほかにも醸造所見学ツアーやオンラインの飲み会なども開催しているので、お客様の関心やその度合いに応じた体験の場を提供しています。

安成:時間が迫ってきましたので最後にお尋ねします。佐藤さんにとって、ファン作りは会社にとってどういう人たちを作っていくことなのでしょうか。

佐藤:柘野さんもおっしゃった「リピーターから熱狂顧客へ」と似ていますが、なんとなく継続的に購入してくれる顧客とロイヤルカスタマーの間には大きな違いがあります。製品のファンなのか、それとも会社を含めてのファンなのかという違いです。製品が好きでもそれを作っている会社のことはあまり知らないという方も多いのではないでしょうか。どちらのほうがより熱狂的なファンかといえば、もちろん会社を含めてのファンなんですね。

 では、その差はどうすれば縮まるのか。そこに会社のミッションへの共感があると思います。ミッションに共感してくれているロイヤルカスタマー、つまり熱狂顧客やファンって、お客様でありながら、我々と一緒に活動していただけるスタッフのような存在なんですよ。単にたくさん買ってくれる人ではなく、そうした人と強く深く繋がることがファン作りなのかなと思います。

懇親会
盛り上がった懇親会。ご参加いただいた読者のみなさま、ありがとうございました!

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

翔泳社所属。翔泳社から刊行した本の紹介記事などを執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 11:06 https://markezine.jp/article/detail/27967

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