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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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MarkeZine Day 2018 Spring(AD)

キタムラ・ソフトバンク・アトレのマーケターが語る、LINE活用のホンネと期待

 LINE公式アカウントにLINE@と、マーケティングに欠かせない存在となったLINEソリューション。成功事例だけではなく、導入のいきさつや失敗談、コスト面なども知りたいと思っている、マーケティング担当者も多いのではないだろうか。MarkeZine Day 2018 Springで行われたパネルディスカッション「LINEの導入・運用って大変そう…LINE導入各社に聞く、その効果や課題など」から、登壇したマーケター達のリアルなLINE運用エピソードをお届けする。

ファン獲得・マネタイズ・来店促進とあらゆる用途をカバーするLINE

(左)株式会社アトレ 樋口 貴成(ひぐち たかなり)氏
(中央)ソフトバンク株式会社 岩本 嘉子(いわもと よしこ)氏
(右)株式会社キタムラ 柳沢 啓(やなぎさわ はじめ)氏

――はじめに、パネラーの皆さまの自己紹介をお願いします。

柳沢:カメラのキタムラを展開しております、キタムラの柳沢啓です。キタムラでは、昨年の9月にLINE公式アカウントを開設しました。

岩本:ソフトバンクで、デジタルのコミュニケーション全般を担当しております岩本嘉子です。サービスが開始されてすぐにLINE公式アカウントをスタートしまして、ファン獲得と情報取得・情報配信・ソフトバンクユーザー向けのマイページ機能という3つの軸で運用しております。

樋口:アトレの樋口貴成です。アトレでは昨年5月からLINE@を店舗への集客に使っています。導入した10館で店舗ごとのアカウントを作り、合計して12万人の友だちがいます。

――では、LINE導入のきっかけや活用につきまして、お教えください。

柳沢:キタムラのLINE戦略は、3つの機能を軸としたマネタイズです。主幹となる写真プリントを注文する機能と、カメラの買い取り査定ができるBOT機能と有人チャット。そしてファミリー向け撮影スタジオ「スタジオマリオ」の撮影予約などが、すべてLINE上で完結します。写真プリントは、友だちとトークをしているような感覚で注文できることが特徴です。

 友だち追加を目的としたスタンプ配信などは行わず、各店舗にてご案内をしております。おかげさまで現在友だちは45,000人と、予想を上回っています。機能を使うことを前提としてつながっていますので、ブロック率も9%と低いですね。

岩本:ソフトバンクのLINEは、契約からリテンションまで一貫したサービスをご提供することを目的としています。ご契約者だけでなく、他キャリアをお使いの方との接点にも位置づけていることが特徴です。3,000万人に達する友だちを持つLINEアカウントとLINE ビジネスコネクトを活用し、アンケートやキャンペーンへの誘導、ターゲティング配信などの施策を行っています。また、My SoftBankという会員IDでログインいただくと、請求内容の確認や各種手続きを行えるご契約者さま向けの機能もあります。

樋口:アトレでは、チラシやDMなどの紙媒体による集客に限界を感じ、来店促進と販促の費用対効果向上を目的にLINE@を導入しました。友だちは駅ビルという立地を生かし、対人カウンターをおいて地道に増やしています。Web広告で来店促進のバナーを出稿するよりも、お客さまと実際につながって情報発信をするほうが、来店効果は出ていますね。

LINE運用開始後に見えてくる、新たな効果とは?

本セッションは満員御礼。LINE活用・導入への興味関心の高さがうかがえる。
モデレーターは、MarkeZine副編集長の安成蓉子が務めた。

――実際にLINEを運用し始めて、当初の狙いから変化はありましたか?

岩本:狙いとしては新規契約ですが、友だちの数が増えたこともありリテンション効果を感じられますね。また、ソフトバンクショップへ来店いただきアンケートに答えると、ハンバーガーなどがもらえるクーポンをプレゼントするキャンペーンを公式アカウントから発信しています。来店促進のマーケティング手法はまだまだ少ないため、LINEがプラスして効果を生んでいると思います。

柳沢:まだ運用をスタートして半年ですが、狙った通りの実績が出ています。一方で継続してのご利用が少ないため、店舗と協力しリピート利用を促す施策を強化していきたいと考えています。

樋口:サイトPV数が8倍、年間の発信コストが3分の1に減少と当初の狙いに沿った効果がでています。さらに、アトレが各テナントのLINE@支援を行うようになりました。テナント独自に行うよりも、10倍以上の友だち追加があるため喜ばれています。導入当初には予想していなかったテナントサポート効果も実感しています。

LINE導入へのネガティブな反応には、どのように対応する?

――続いて「LINE導入を決めたときの社内の反応」は、いかがでしたか。ソフトバンクの岩本さまは、孫正義社長へ直談判されたと聞きました。

岩本:やはりLINE公式アカウントが立ち上がった年に導入を決めましたので、先がわからないというネガティブな声はありましたね。しかし、LINEの成長予測値とそこから得られるであろう収支効果から前向きに承認されました。その分、最初にコミットした数字を達成するまでは必死でしたね。

柳沢:反対する声はなかったのですが、機能開発で10回以上ダメ出しがありました。LINEらしくコミュニケーションをポイントに、お客さんと対話するような注文機能を作りたいと伝えても、機械的な仕組みになってしまいがちでした。サービス設計に関する意識のすりあわせが難しかったです。

 また過度な期待が起きないように気をつけましたね。小さく始めて大きく育てたいと思っていたので。

樋口:アトレの場合は、実作業を行う現場への説得が大変でした。やはり、これまでと仕事のやり方が変わることにネガティブな反応は出ますね。

 また各店舗の現場ではLINE@をやってみたいという声がありつつも、その上からの「本当に継続できるの?」という声がモチベーションを下げてしまう……ということもありました。勉強会等で先行導入店の成功事例を説明しながら徐々に現場への導入を進めていきました。

友だちが増えるとコストアップ。しかし、それ以上の効果を実感

――では「LINEのコスト面」はいかがでしょうか。特にソフトバンクのLINE公式アカウントは友だちの数も多く、スタンプも継続的に実施されていますが。

岩本:正直にいいますと、コストは年々高くなっています。友だちが多いぶん追加率は下がりますから、友だち獲得の単価が上がってしまいますね。それでもやはり得られるリターンのほうが大きいこともあり、費用対効果を見ながら運用しています。

樋口:アトレはLINE@のみですので、コストの高さは感じていません。友だち追加施策として500円クーポンの配布を行いますが、紙媒体のコストより安いです。しかし店頭で獲得するやり方ですと刈り取りしきってしまうので、違う方法も検討しています。

LINEの運用体制には、チームを越えた協力と柔軟に対応する姿勢が必要

――それでは、運用体制についてうかがいます。アトレでは各店舗の方が運用されていらっしゃるそうですが、前もってルールを決められたのでしょうか。

樋口:レギュレーションは決めずに、自由度をもって運用しています。いい事例が出たら、他の店舗へ水平展開するようにしています。しかし、店舗によって運用に差がでてしまうことは今後の課題です。

岩本:各種ソーシャルアカウントを管理しているチームの中で、LINEも運用しています。やはりブランディングの観点から、発信する情報はすべて確認し、気を配っています

 またMy SoftBankの機能は、部門を超えてカスタマーケアの担当者も関わります。ひとつの部署では対応しきれませんので、関係各所に協力いただき、私どものチームで全体管理を行うという方法です。

 社内でアカウントをひとつ立ち上げることはパワーがかかることでして、運用リソースをどうするか?は、スタートした当初から試行錯誤しながら進めてきました。

――成功した施策や失敗談についても、お教えください。

柳沢:先ほどお話しましたように、写真プリントの注文機能は、外部ブラウザへリンクさせずすべてLINE上で完結します。このこだわりに効果が出ていまして、お客さまからも好評です。また店舗スタッフが面白がって勧めてくれていますので、こだわった熱量が伝わったなと実感しています。

樋口:失敗談としては、リテンション施策として実施した抽選クーポンの当選率を低く設定してしまい、外れたお客さまのブロックが続くということがありました。次以降は、設定に気をつけています。

岩本:弊社はブロック率に関してですね。スタートしたはじめはブロック率という考え方がなかったんです。しかし友だちを増やしていく中で、リーチの伸びや反応が薄くなった時期があり、そこで初めてブロックの存在に気づきました。もう少し早めに対応できていればと思います。

「若者のLINE離れ」はウソ?ホント?

――それでは最後の質問です。度々話題に挙がる「若者のLINE離れ」は実際に起きていますでしょうか?

柳沢:キタムラのサービスターゲットは、ファミリー層やシニア層の方が多いため、友だちの構成もそうなります。しかしLINEユーザーの幅が広いというのは実感しています。

樋口:そこまでは感じていませんね。近くに高校があるアトレは売上構成比以上に10代の友だちの割合が高くなります。立地のユーザー層を捉えられるということは、引き続き若者の需要はあるのではないでしょうか。

岩本:LINEが一般化し、大人の利用者が増え、マーケットに近い形で友だちの構成比が変わったなと思います。若年層はLINEの使い方もうまいので、そこに合わせて彼らにフィットする施策を考えなければいけないと感じます。

 セッションの終盤に、会場からの質問を受け付けた。

 ソフトバンク岩本氏には、「LINE上での個人情報の取り扱いと、来店促進の施策を実施するときの現場とのリレーション」についての質問があがった。ソフトバンクでは、LINE ビジネスコネクトを活用しMy SoftBank IDとLINEアカウントを一致させることで、請求書情報などにアクセスするためのセキュリティ要素をクリアしているという。また「ソフトバンクの店頭スタッフは、デジタルやスマートフォンに強いため、安心して任せられている」という。

 続いて「LINE運用における費用対効果・店舗送客や売り上げ貢献のトラッキング方法」については、アトレの樋口氏が回答。アトレではクーポンの回収枚数や前年度の折り込みチラシ配布時期とLINEキャンペーン期間の比較から、来店の伸びを計測しているという。またイベント実施時にはアンケートも行い、来店にあたっての情報ソース元を調査しているそうだ。「イベントによっては3割以上がLINEを見て来店したと答えています」と効果を語り、セッションを締めくくった。

番外編:LINEさんにこれだけはお願いしたい!

 セッション終了後、登壇者のお三方に、LINEを導入・活用してみてこれだけはLINEさんにお願いしたいことを回答いただきました!

樋口:LINE@マネージャーの分析機能の強化です。O2O施策は効果検証が課題となるためクーポン利用者などを1つの管理画面で分析からセグメント別発信までできる機能があればいいですね。

岩本:分析可能データの拡大をお願いします!様々なカットで数値確認をして、効果計測と新たな企画へ活かして行きたいからです。

柳沢:金額のことは、他の人に任せて……このプラットフォームを「大きく」することから「豊か」にすることに力点をおいて欲しいです。お客様とのコミュニケーションから、どんなものが企業に求められるか見える化ができれば企業は投資しやすくなりますし、投資ができるとさらにコミュニケーションが深まり、コミュニケーションが深まると豊かなコンテンツになります。プラットフォームは成長過程で公共的な役割も強まりますが、良い循環をつくるプラットフォームとしても「豊か」な成長をして欲しいですね。

 私たちの生活にもはや欠かせないコミュニケーションツールとなったLINE。企業と消費者のコミュニケーションプラットフォームとしても、さらに使いやすくなることを期待しています!

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/04/09 10:00 https://markezine.jp/article/detail/28101