儲かるとわかれば経営者は広告費を増やす
デ・スーザ氏は改めて、広告費を伸ばすときの観点として「設計」と「計測」の2つを強調する。
まず設計を見直し、中長期的な見込み顧客の育成を考えたコミュニケーションを設計すること。認知から購買までをひとつなぎのストーリーで捉え、それを勘案した成果ポイントを設定することが必要だ。そして、計測の部分では単純にクリックで評価せず、接点のすべてを横断して一顧客あたりの獲得単価を可視化することが求められる。「今回の一連の調査から、各所での広告の役割を踏まえた、そのフロー全体の評価ができると望ましいことがわかります」とデ・スーザ氏。
では、実際に広告費を増やすためのアクションとは何だろうか? 前述の通り、経営者が欲しいのは媒体のレポートではなく、投資対効果が見合っているのか、獲得単価はどうなのかという情報だ。つまり、アトリビューション分析で一人あたりの獲得単価を正確に出すことが必須になる。
「それができれば、経営者との会話が変わります。獲得単価と損益分岐点を比べるだけで、もっと投資すべきか引くべきかの判断ができる。経営者は儲かるとわかれば投資するので、その判断材料を提示すれば、自社の広告費も増えるのです」
「設計」と「計測」に真剣に向き合う
ここまでの分析と考察から、広告費を増やした企業では複数の広告をひとつづきで捉えて「一人を獲得するための費用対効果」を見ていると推測された。それを正しく把握するのに欠かせないのが、前述のアトリビューション分析だ。アトリビューション分析を実践し改善に活かすには、各Web施策の効果を正しく知った上で、経路の幅を広げ、より広い判断基準を持つことが大事になる。
「そのためにCVの重複計測を避けるのは大前提に、ラストクリック以外の広告の評価や、メルマガなど出稿広告以外を経由した獲得の可視化などがポイントになります。ビュースルー効果や検索行動、サイト内閲覧ページの分析なども有効です」とデ・スーザ氏。
これらのいずれもカバーしているのがアドエビスだ。このほど、ユーザー単位の接触履歴を可視化する技術「カスタマージャーニー分析機能」で特許を取得し、「ヒト」を軸にしたマーケティング評価が可能になった。
カスタマージャーニーの一連を捉えた先には、そこで蓄積したデータのさらなる利活用にも目を向けたい。アドエビスでは、たとえばリサーチ会社との連携で実現した“カゴ落ちユーザー”へのアンケート調査や、LTVの高い顧客の情報から逆算した勝ちパターンの模索、また爆発的に効果があったSNS広告の再現を狙った類似拡張配信なども可能だ。
ちなみに今回の調査から、効果測定ツールを導入している企業としていない企業で掘り下げたところ、導入している企業の方が好調だというデータが出ていたという。「ただし、ツール導入で自動的に成果は上がりません。おそらく導入を機に、前述の『設計』と『計測』を真剣に考えるようになったのだと思います。
ぜひ今回の調査結果を元に、自社の設計と計測について考えていただけたら」とデ・スーザ氏。ツールの力を借りながら、これらに真剣に向き合うことが、Web広告の効果を高めて広告費を増大させる大きな要素だといえるだろう。