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MarkeZine Day 2018 Spring(AD)

「コミュニティはコモディティ化しない」リアルとデジタルを掛け合わせた最新ロイヤルティマーケ事例

 「MarkeZine Day 2018 Spring」の初日、3月8日に行われたセッションでは、MAツールを提供するSATORIの植山浩介氏とログミーの叶内 怜氏が登壇。「コミュニティ形成による最新ロイヤルティマーケティング~顧客満足向上が新規開拓に与えるインパクト~」と題したセッションでは、情報過多な時代な中で有効な手段として注目されるコミュニティをマーケティングに活かすノウハウとメリットが語られた。

デジタルファーストに+αな施策が求められる

ログミー マーケティング部 部長 叶内 怜氏(左)SATORI 代表取締役 植山浩介氏(右)
ログミー マーケティング部 部長 叶内 怜氏(左)SATORI 代表取締役 植山浩介氏(右)

 冒頭、植山氏は昨年秋のMarkeZine Dayのイベントテーマであった「Digital First」と今回のテーマである「Beyond Digital Marketing」を引き合いに出しつつ、昨今の状況についての見解を示した。

 「イベントのキャッチコピーが昨年は『Digital First』で今年が『Beyond Digital Marketing』。これを私たちなりの解釈で読み解けばDigital Firstな世界、具体的にはソーシャルやスマホが顧客接点として増えていくのは不可逆な流れであり、いかにそれを越えていくか、プラスαな試みをするかという視点が問われていると捉えています」

 プラスαな試みとは、オフラインの出会いの場であるコミュニティとデジタルマーケティングを掛け合わせた施策を推進することだという。

 「コミュニティ形成が大きなテーマです。リアルなイベントがどのようにデジタルマーケティングに活かせるのかという視点で、ログミーさんと私たちの事例を紹介していきたいと思います」(植山氏)

 植山氏の問題提起からバトンを受け取ったのはログミーの叶内氏。最初に自身のバックグラウンドに触れつつログミーが提供する価値について端的に紹介した。「『世界をログする書き起こしメディア』とうたっているとおり、ログミーは世界の名スピーチや対談、セミナーなどの内容を全文書き起こしてログ化するメディアです。『その場』にいなければ出会えなかった経験を多くの人に発信することで、新しい価値を届けるのがミッションです」

 ログミーは現在、年間5,000本以上のセミナーや対談を掲載。著名人が参加する有名イベントの内容をスピーディーに書き起こし、月間約300万人のユーザーが利用するサービスへと成長している。

 社会的に関心の高い記者会見や大手企業による新しい取り組みについてのプレゼンなどを積極的に掲載することで、大手メディアをはじめ行政機関や教育機関でも導入・活用されているという。

 「SNSの浸透で、一人のユーザーの感銘がリアルタイムでシェアされて拡散して多くの人たちの共感へと広がっていきます。この特徴をマーケティングにも活用していこうというのがお話ししたい主旨です」(叶内氏)

「コミュニティ」の定義が大きく変わった

 オンライン/オフラインを行き来したデジタルマーケティング施策が有望な理由として、叶内氏は「コミュニティ」の定義が大きく変わってきたことを挙げる。

 「かつて『コミュニティ』と言えば、特定の『地域』に根ざした生活共同体やグループを指しました。それがログミーのような情報と価値の発信、SNSの浸透で特定の『ヒト』や『企業』『商品・製品』『サービス』と、そのビジョンやミッションを共有する人たちへと大きく変わりました。この『ビジョン』や『ミッション』を共有する人たちへのアプローチこそが新しいマーケティングの施策として、大きな可能性を秘めています」(叶内氏)

 コミュニティマーケティングに優位性がある理由として叶内氏は、どんなに新しい商品やサービスもやがて競合やコモディティ化されるリスクがある一方で、独自性や特異性のあるコミュニティは真似されにくいと強調した。

 次いで指摘されたのは、ネットの進化やモバイル端末の普及にともなう情報の過多とアドテクノロジーが直面している課題だ。

 「総務省による調査結果などからも、不特定多数にもたらされる情報の『量』が急激な右肩上がりで増えているにもかかわらず『消費される量』は横ばいという現状がわかります。それにSNSを使って個人が簡単に情報発信できるようになったので、競合が無数にあるなかで特定のターゲットに伝えたいメッセージを的確に発信するのが難しくなっています」(叶内氏)

改めて問われる「リアルイベント」の価値

 こうした背景からデジタルマーケティング一辺倒のやり方に行き詰まりを見せる中でリアルイベントへの関心度が高まっていると、叶内氏は続ける。

 「『販促会議』の調査結果でも、注力したいプロモーション活動について37.5%が『ソーシャルメディア広告』と回答しているのに続いて28.10%が『リアルイベント』と答えています。潜在顧客を巻きこんでいけるような『ファンづくり』を課題ととらえている企業が増えています」(叶内氏)

 コミュニティを活性化していくにはイベントの企画・実施が有力な施策の1つになるが、そこには課題もあるという。「予算やリソースの確保に加えて膨大な手間や労力がかかるので、何度も実施できないという課題があります。また、イベントを実施した直後は高い満足感ですが、その結果や成果を測る明確な指標がないのでKPIの設定が難しい。それが多くの企業にとっての課題ではないでしょうか」(叶内氏)

 そこで登場するのが、イベントログの活用だ。企業・団体はイベントを一過性のマーケティング、プロモーション手法とするのではなくイベントログを発信することでファンづくりとコミュニティの活性化という一石二鳥以上の効果が期待できるのだという。

ログしないなんてもったいない!

 イベントを実施するだけでなく、その内容をログ化して新たな情報発信コンテンツとして活用する。そのノウハウは既に多くのIT企業が先鞭となって活用されているマーケティング手法だと叶内氏は言う。

 「いわゆる『ユーザー会』というものですが、アマゾンやセールスフォース・ドットコム、サイボウズなどがケーススタディになります。ユーザー会に参加したメンバーは当然イベントログで再体験しますし、その共感や感動をSNSで発信します。そこから、参加できなかったユーザーや興味・関心のある人たちへと拡散・波及していく効果が期待できます」(叶内氏)

 企業や団体がイベントを実施するだけでなく、イベントログを発信するメリットは大きい。イベントログの作成と発信はログミーのような企業が手がけるので、あらためてリソースを確保するなどの手間や労力は必要ない。この試みを続けていくことで、コミュニティが活性化するだけでなく拡大していく効果も期待できる。

 「デジタルには膨大な情報があふれかえっている状態で、多くのユーザーが疲弊しています。一方で、ユーザー自身は感銘を受けた、感動したものは積極的に共有していきたいという意欲をもっています。この行動原理をちゃんと理解し、イベントの実施とログの発信を行うことでファンづくりやコミュニティの拡大を実現できます。繰り返しになりますがコミュニティはコモディティ化しないのです」(叶内氏)

ロイヤルカスタマー像をデジタルと掛け合わせる

 ここからプレゼンテーターは再び植山氏へ。植山氏からはSATORI自社事例をベースに、コミュニティに参加するロイヤルカスタマーの動きをどのようにデジタルに活かしていくのか、特に新規開拓へ活かすのか3つの観点から紹介された。

 アマゾンやセールスフォース・ドットコムと同様に、SATORIの場合もコミュニティの形成による効果が数字にも表れている。「コミュニティに参加頂いているユーザーのLTVは高いですし、解約率も非常に低いです。ただ、ロイヤルティを高めることは非常に時間がかかる作業。中小企業としてはすぐに新規リードが欲しいという願望も正直あります」と本音を漏らした。

 「100万人単位のコミュニティを持つ大企業とは違い、私たちのユーザー数はまだ2,500ユーザー程度。その中から実際にコミュニティイベントに参加される方は多くても100名程度。その方々に自社サービスを売り込んでは、コミュニティの崩壊につながります。こういったジレンマを抱えていますが新規開拓する術があります」

 ではどうすればいいのか。勝機はコミュニティに参加するロイヤルカスタマー像を使って3つの取り組みを進めることだと植山氏は説く。

 「具体的にはそのうち客(新規リード)を育成するための『コンテンツ開発』、多くのそのうち客から有効リードを判別するための『スコアリング』、そしてロイヤルカスタマー像のデータを使っての『新規オーディエンス発掘』、この3つの取り組みを進めます」

ロイヤルカスタマー像の具体的な活用法

 では、それぞれの活用法について見ていこう。

コンテンツ開発

 新規リードにアプローチするためにどのようなコンテンツを作ればいいのかは、営業やマーケティング担当者の悩みどころだ。その解決策として植山氏が紹介したのが「コミュニティに参加するユーザーに実際に聞くこと」だ。

 「コミュニティが形成されることで、LTVが向上したり解約率が下がったりというのはお話ししましたが、実は中小企業にとって最も大切なのは『実際にお客様の顔が見えることで、自社のロイヤルカスタマーが誰なのかが明確に把握できる』という点です。

 さらにその方々が欲しいコンテンツを直接聞くことで、マーケティングハンドブック的なよくある資料とは一線を画したコンテンツを作るヒントをもらえます。『予算を検討する時期だから年間イベントカレンダーほしいね』など、具体的なアイデアが次々と出てきます」(植山氏)

スコアリング

 全てのリードの中から自社の商品を買ってくれそうな、いわゆる『ホットな客』を選ぶことがスコアリングだ。たとえばクラウドサービスであれば、契約期間や解約の手続きなどのページを見ているユーザーは検討に前向きなホットなユーザーとなる。では、ユーザー会やイベントのレポートなどのコンテンツと接触があったユーザーはどのようにスコアリングされるのだろう。植山氏はコミュニティのコンテンツは新規獲得につながる可能性が高いという。

 「具体的にはSATORIユーザー会の様子をログミーで記事にしました。メール配信に加え、広告配信もやってみたところ、701人の新規リードに接触することができました。では、その中で何人がホットリードだったのでしょうか。701件中既に商談が進んでいた人は73件、約630件にこれから電話していくのですが、16件中2件のアポイントがとれている状況です。母数が少ないのではっきりとしたことは言えませんが、新規開拓のキラーコンテンツになる可能性が高いのではと感じております

新規オーディエンス発掘

 サードパーティーのデータを使っての広告配信に、ロイヤルカスタマーのデータを付加することで自社ならではの広告配信を実現することも可能だ。

 「中小企業はそもそも持っているデータ量が少ないので、外部のデータを活用した類似配信を行うケースが多いと思いますが、そこに独自のデータを掛け合わせることで、独自の広告配信を実現することができます。コミュニティは真似できないしロイヤルカスタマーの動きは会社ごとに変わります。それを活かしていくべきです」

 最後に植山氏は「これまで見てきたように、コミュニティ形成でロイヤルカスタマーを育成し、さらにロイヤルカスタマーの情報をデジタルと掛け合わせることで、新規開拓に活用することが可能です。本日紹介した内容は明日からでもできる内容なので、ぜひ一つでもよいので試して頂いて効果を実感してもらえれば嬉しいです」と強調しセッションを締めくくった。

セミナー情報

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この記事の著者

浦野 孝嗣(ウラノ コウジ)

 2002年からフリーランス。得意分野は経済全般のほかIT、金融、企業の経営戦略、CSRなど。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/05/08 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28153