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MarkeZine Day 2018 Spring

UX改革はなぜ行き詰まる?SBI証券が体験した3つの「失敗」と克服の道筋


優れた顧客体験の提供は、狭義のマーケティング活動だけでなくビジネスそのものの成否をも左右するものだ。しかし、UXの意義をどれだけ認識できているかについては、企業規模や業種、部門によっても温度差が大きい。「MarkeZine Day 2018 Spring」では、UXデザイナーとしてキャリアを積んできたSBI証券の阿部佳明氏が登壇。UX専任者として入社した後に様々な壁にぶつかりながら、デザインのもたらすビジネス価値向上について社内の理解を得ていったプロセスを率直に語った。

「バラバラのUIに横串を通す」目論見はなぜ苦戦したか

 SBI証券は、国内株式や海外株式、投資信託、FXをはじめとする非常に多くの金融商品を扱うネット専業の証券会社だ。同社Webサイトは基本的に金融商品ごとに構成されており、次々と新しい金融商品の取り扱いを決める度に、新しいページ群が追加されてきた。

 そのため、ボタンのデザインや金融用語の遣い方に最低限のルールはあるものの、更新を重ねるにつれてページごとの統一感がなくなっていくという、当然の流れではあるものの、一つの大きな課題だったと阿部氏は明らかにする。

株式会社SBI証券 マーケティング部 兼 開発推進部 課長 阿部佳明氏
株式会社SBI証券 UXデザイン室長 阿部佳明氏

 統一感のないUIでは顧客体験が低下し、異なる金融商品間でのクロスセルも進みにくい。そこで阿部氏は、UX専任者としてサイト全体のデザインを整えることに着手したという。

 「お客様が自分にとって必要な金融商品を簡単に選べるようにしたい。そして、複数の商品を組み合わせても違和感なく取引ができるようにしたい。そのためには、独自化してしまった各ページ群のUIに対して横串を通してデザインを管理する必要があります。その基本となる『UX』に対する社内の理解が重要だと考えました」と、阿部氏は当時の問題意識について振り返った。

 阿部氏の目標と方針は明確だったが、実現への道のりは平坦ではなかった。阿部氏は「UXデザインの理解を深めるためのUX啓蒙ミーティング」「UXを意識させるためのUXワード」「すべてのデザイン業務を受ける」という3つの失敗をしてしまったと明かす。

 金融業界の朝は早い。日中は相場の確認で忙しいし、キャンペーンの企画から展開、画面の設計までやっている商品担当者たちの予定をおさえるのは簡単ではない。今後のUXデザインのヒアリングを兼ねた定期ミーティングを行ったが、徐々に参加率が低下していった。

 そのミーティングの話の中で、阿部氏は「アサンプションマッピング」のようなUX用語を少しだけ使ってみた。だが、相手に理解できない言葉で話すと理解が止まるし、「逆日歩」や「約定」のような金融用語が会話に出てくると、逆にデザイナーの理解も止まってしまうことに気づいた。

 さらには、最終的にはサービスの品質が向上すると考え、「社員の業務体験のデザイン」という理解のもと、業務効率化のような依頼も積極的に受けるようにしていた。確かに、それら業務はUXデザインの一環だといえるし、UXデザイナーのメソッドによってイノベーションが実現することも期待できる。

 ただ、この時点ではUXチームは阿部氏一人。引き受ける仕事の幅が広がることによってリソースが分散し、具体的な成果が出にくい状況になってしまった。

 この3つの失敗により、成果を出せず焦りばかりが募る状態のまま2年が経過したと話す阿部氏。しかし、多くの関係者に対して様々なアプローチでコミュニケーションを試みた時間は無駄ではなかった。「成果とは言えないが、UXに取り組んでいることを知ってもらう、刷り込みに近い効果はありました」と、後の試みをうまく進めるための土壌ができたと阿部氏は振り返る。

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GoogleVenturesの提唱するデザインスプリントが転機に

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/07/11 14:43 https://markezine.jp/article/detail/28305

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