全体を見通して具体的に判断することが重要

西口:なるほど……そこは一般的な会社だとなかなか真似しづらいかもしれませんが、経営陣も「具体的に話す」というところは象徴的で、大きなヒントがある気がします。
堺:経営側が具体をみていくのは、どんなビジネスでも重要なんじゃないかなと思いますね。たとえば店舗のデジタル化も、Amazon GOにしても話を聞く限り、一つひとつの技術はそこまで目新しいものじゃない。でも、その組み合わせがすごくバランスがいいんだろうと思います。
ありものではなく組み合わせてソフトウェア化するのに、初期投資は必要でも、多店舗展開すれば収支が合う、そこまで見越して判断できる人が指揮しているのかなと思うんですね。別にプログラミングを書けなくても、実現までに膨大な判断があることをわかっている人がやっている。そんな感じがします。
西口:組織運営と併せてうかがいたかったんですが、そうやって各自が専門領域をもってフラットにプロジェクトに関わる場合、各人の評価制度はどうしているのですか?
堺: 毎月、役員と給与会議をしています。役員が5人いるので、ざっと100人ずつくらい。
西口:毎月ですか? けっこうな数ですね。
堺:確かに……。でも100人くらいなら、まだ直接かもう一人を介するくらいでそれぞれの顔や仕事がわかるので、評価の話し合いもできます。そこでも、今取りかかっている仕事とその成果、力の付け具合などを割と具体的に話して、調整していきますね。かえって半年や年1回だと時間もパワーがかかりすぎて、できないような気がします。
一律のKPIではできない個々人の評価
西口:そのとき、共通の評価軸はあるんですか? たとえば「リーダーシップ指数」みたいな。
堺:いや、全然ないです。評価に関しては僕らも常に試行錯誤で、何かアルゴリズムがあれば採用したいんですが、今のところ僕らのメンバーに当てはめられる一律のKPIは見つかっていません。
なぜなら「滝」タグと「花」タグとセンシングの何々の技術と、ECのUIと、採用部分のプレゼンテーションと…、といったばらばらすぎる専門能力を比べないといけなくなるから。それ、無理ですよね?
西口:無理ですね! そうすると、各役員の主観?
堺:そうなりますね。それが正解かはわかりませんが、今のところは。それに、リーダーシップ指数みたいなKPIも一応各社で定義しているんでしょうが、僕からみるとそれらもまあまあ抽象的です。だから、やらない。
西口:なるほど。確かに、いくつかのKPIで切ると、そこに分類されないものがどうしても間に落ちてしまう感じがありますね。
堺:そう。で、今どんどん人を増やしている最中なので、僕らの中のタグは刻々と増えている。そうするとますます一律のKPIでは測れない人たちが増えていくので、指標を持つのは難しいんです。
西口:ちなみに、今後そうやってどんどんスケールすると、猪子さんや堺さんが入らないプロジェクトも増えて、評価もますます難しくなりますよね。どういう展望を?
堺:プロジェクトに関しては、既に今も僕らに代わる“任せられるタグ”みたいなのを持つメンバーが出てきているので、彼らに預けています。評価は………そうですね、課題ですが、やっぱり一律の評価軸は僕らにはそぐわないような。何らかの形で、現状のような短いスパンの手作業を続けていくと思います。