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「数字の裏側にある人間心理をちゃんと見よ」BtoC西口一希×BtoB福田康隆“叩き上げ”対談

2019/10/25 09:00

 本連載では、スマートニュース マーケティング戦略顧問の西口一希氏が経営者やCMOなどマーケティングそしてビジネスの最前線で活躍する人物を訪ね、「マーケティング視点の経営」についてディスカッションする。記念すべき10回目の今回は、マルケト事業を率いる福田康隆氏がゲスト。後編では、日米の人材育成の違いや、科学的でありながら「結局は人の中に入らないとわからない」と語る、福田氏のバランス感覚を掘り下げる。

目次

米国で増えつつあるCROという役割

西口:前編では、なぜ日本の営業や経営は科学的になりづらいのか、BtoBで成功する企業の組織の特徴などをうかがいました。後編ではいくつか、福田さんの著書で具体的に僕が深堀りしたかった質問から始めたいと思います。

 まず、分業から共業への移行を解説している部分で、アメリカでは増えつつあるというCRO(Chief Revenue Officer)の必要性について触れていました。マーケティングサイドでも実は「CROを置きたい」と最近よく聞くのですが、CROがPL責任を負うならCMOの役割はどうなるのかなど、まだあいまいなところも多いようです。そもそも、アメリカではCROがなぜ増えているんでしょうか?

福田: IT業界を念頭に置くと、CROはその成り立ちとして、マーケティングと営業、そしてカスタマーサクセスとの間が対立し始めたことに起因しています。

 以前はよく“マーケティングvs営業”が課題に挙がりましたが、サブスクリプションモデルやカスタマーサクセスの概念が生まれたことで、マーケと営業の「プリセールス」と、カスタマーサクセスの「ポストセールス」のそれぞれが売上責任を負い、対立してしまうケースがこの5-6年で多発してきたんです。それで、本質的な解決策とは思いませんが、全体をまとめる立場としてのCROが必要になった、と。

西口:なるほど、極めて高度なバランス感覚が必要そうですね。正直、そういう人材は欧米には多くても、日本国内だと難しい気がします。本部長やCクラス候補でその領域に長けた人はいても、全体を見渡せる人は極めて少ない。

「上に立つ者たるや」という教育の必要性

アドビ システムズ 専務執行役員 マルケト事業統括 福田康隆氏
アドビ システムズ 専務執行役員 マルケト事業統括 福田康隆氏

福田:そうですね、CROはほとんどCEOなので、おっしゃるようにバランス感覚に尽きると思いますし、人材不足もたしかです。私もよく「どうすればPL責任を負うCROのような人を育てられるか」と質問を受けますが、答えに窮しますね。

 ただ、日米の違いで考えてみると、リーダーシップ教育が日本にはあまりないことが、少し関係している気がします。

西口:利益ではなく、上に立つ者としての資質や、あるべき姿を考えるという?

福田:そうですね。私が向こうのビジネススクールでマネジメントを学んでいたとき、リーダーシップ論の中で「誰もがマネジメントの仕事ができるわけではない、上に立つ者は『世の中への貢献』を考えられる高潔な心を持たねばならない」と本当に繰り返し聞かされたんですね。それは単に講義の中での話ではなく、広く国の中に文化として根付いている考えなのだと思います。

 どちらがいい、いい悪いの話ではないですし、日本ではどうしても個人の経験に依存しすぎてしまう印象があります。大学や企業で体系立ててリーダーシップを教育するという仕組みがないと感じます。

西口:確かに! さすがに今は表立っては言われませんが、前に出ることを良しとしない風潮がいまだにありますね。多分、幼少教育の段階で既に根差していそうです。

 企業でいうと、日本のほうがジョブローテーションを熱心に行って、ジェネラルな人を育てようとしているのに、結果としてマネジメントを担えるジェネラルな人材がいないのがずっと謎だったんです。

福田:文化の差はいきなり埋められなくても、この観点を認識してトレーニングや採用を行うのは、ひとつのポイントかもしれないですね。

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