ショッピング機能で広がる可能性
より多くの時間をスマートフォンに費やすようになり、生活者の買い物の仕方は、より一層様変わりしている。経産省の調査では、日本のEC市場における売り上げのうち、モバイルを経由した売り上げの割合は35%であり、2020年には、これが2015年時の2.35倍になるという予測もある。
Instagramは、興味関心でつながっているプラットフォームだ。「ただ、これまでは何かしらのインスピレーションを得たとしても、ユーザーによる検討~購入の行動までをInstagram上で促進するのは、難しかった」とスーザン氏。この課題も解決し得るのが「ショッピング機能」であるとし、具体的な機能の説明に入った。
「ショッピング機能」の導入後は、フィードの商品をタップすると、商品名と値段が表示されたタグが表示されるようになる。ユーザーはそのタグから、商品の詳細チェックから外部ECサイトでの購入までを一気通貫で体験することができる。

加えて、ビジネスプロフィール内の“ショップ”のメニューをタップすると、商品タグが付けられている投稿のみが出てくる仕組みもある。活用の仕方によれば、Instagramを商品カタログのように使うことも可能だろう。
「気になる商品の画像をタップすると、商品を別の角度から撮った写真や、関連商品の情報、投稿にはない他の商品情報などを一覧で見ることができます。このように、リッチな情報を提供することによって、検討段階でのエクスペリエンスを充実させました」(スーザン氏)
日本での「ショッピング機能」の一般提供に先駆けて導入したのが、株式会社ベイクルーズ、シャンプーやトリートメントなどで人気を集めているブランド BOTANISTを展開する株式会社I-ne、CtoCのハンドメイドマーケットアプリ「minne」を運営するGMOペパボ株式会社の3社だ。3社によるトークセッションでは、先行導入をしてみた率直な感想が述べられた。
サイトへの流入件数に大きな変化が

(中央)株式会社I-ne BOTANIST ECセールス部 部長 小松 悠氏
(右)GMOペパボ株式会社 minne事業部 事業部長 阿部 雅幸氏
――早速ですが、ショッピング機能を数週間導入してみて、率直にいかがでしたか?
馬來:ショッピング機能では、ユーザーのモチベーションが高いときに、購入までの動線を提示することができるので、これまで以上にユーザーのエンゲージメントを高めることができると考えています。また、商品情報だけでなく、ブランドの世界観などもより伝えることができるようになると感じました。
小松:導入して日が浅いので、正直言うと、まだ実態はつかめていません。ですが、興味関心やブランド好意度の醸成に加え、検討から購買までのシームレスな体験を提供できるので、引き続き取り組んでいきたいですね。
阿部:これまで、「商品はどこで買えるんですか?」と、アカウントにコメントいただくことが多々ありました。我々も「こちらで購入できます」とURLなどを貼って、返信したりはしていたのですが、その返信から購入を促進するのは、やはりハードルが高かったんです。ショッピング機能では、これを解決できますし、作家の作品とユーザーを直接つなげることができるという点でも、価値があると思います。
――導入してみて、何か変化はありましたか?
馬來:ショッピング機能をローンチして間もないからかもしれませんが、サイト流入の新規率が他の施策と比べて、高い結果が出ています。これまで実施してきた集客施策では、リーチできていなかったユーザーと出会うことができているのでしょうね。
小松:弊社では、CTRのクリック数が、他に類を見ないくらい高くなっています。もっと工夫しながら、取り組みをやっていきたいです。
阿部:minneでも、流入数は増えています。おもしろいのは、プロフィールからの流入が減るのではなく、これまでの流入にプラスする形で増加していることです。これまではハードルが高くてクリックすることのなかったユーザーが、来てくださっていると感じています。
――今後、どのようにショッピング機能を活用していきますか?
馬來:先行導入では、一つのブランドのみで活用しました。ですが、今後はブランドを横断して活用していきたいですね。
小松:Instagramは、新しい販売チャネルとして期待しています。良質なユーザーベースを底上げしながら、購入までを促進していきたいです。
阿部:minneの作家さんにとっても、Instagramはファン作りの場になっています。企業としてショッピング機能を使うだけでは、可能性が広がっていかないので、プラットフォーマーの視点から、作家さんにもショッピング機能を利用して頂きたいと考えています。
実は、作家さんがショッピング機能を活用するためのサポートツールの提供も開始しました。作家さんとユーザーを繋げることで、お買い物の体験を拡張していきたいですね。