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コルクの佐渡島氏が語る、『君たちはどう生きるか』ヒットの理由&コミュニティ起点の熱量の拡げ方


 今年5月、幻冬舎からNewsPicksBookとして、コルク代表の佐渡島庸平氏によるコミュニティ論『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ』が上梓された。コミュニティマーケティングに注目が集まっているが、コルクでは独自の方法で作家のファンコミュニティをつくり、またコルク自体のコミュニティ「コルクラボ」の運営も手がける。佐渡島氏のコミュニティ形成の根幹にある考え方に迫った。

『漫画 君たちはどう生きるか』が爆発的に売れたのはなぜ?

――コルクは、かつてなかった作家のエージェンシーとして設立され、この6年間にたくさんのヒット作を世に送り出しています。最近のトピックとしては、1937年の吉野源三郎の名著を原作とする漫画『漫画 君たちはどう生きるか』(原作:吉野源三郎/漫画:羽賀翔一/マガジンハウス)が現在200万部を突破し、今なお売れていますね。まず、このヒットについてどうご覧になっているか、うかがえますか?

株式会社コルク 代表取締役社長 佐渡島 庸平氏
株式会社コルク 代表取締役社長 佐渡島 庸平氏

佐渡島:『漫画 君たちはどう生きるか』のヒットは、コルクのコミュニティが原動力になったというよりは、「どう生きるか」という問いかけが、今この時代の人々に響いたのだと思います。新聞広告や交通広告といったマスプロモーションを丁寧に行いながら、ネットでの拡散にも注力した結果、10~20代と50~60代にも届けられたことが奏功したと思います。

――丁寧にプロモーションをやれば、書籍もまだこんなに売れる可能性がある、と。

佐渡島:それもありますが、最近は一度でも風が吹くとその流れが止まらなくなりますよね。一方で、昔なら大ヒットしていたような“超一流”の作品も、今だと3~5万部に留まってしまう。超一流であって初めて、大ヒットになる可能性のある宝くじを手にできるのだと思います。

 一度プロモーションの波に乗れたら、テレビ取材も入るし、ネットでもどんどん拡散され、今日みたいにインタビューでも話題に出してくれる情報がネットとマスの両方で広がっていくんです。その波の中で、マガジンハウスが在庫を切らさずに、発行している様々な媒体で露出するなどベーシックな戦略を展開したことがポイントだったと思います。

編集者 佐渡島氏の「おもしろい」の基準

――それにしても、羽賀さんの才を見抜かれたことや、漫画『宇宙兄弟』のヒットについても、佐渡島さんの先見性はどのように培われたのだろうと考えます。「おもしろい」「これはイケる」と判断する基準ってありますか?

佐渡島:「おもしろい」とかの形容詞でしか伝えられないことはあるのですが、一方で形容詞はメモリーとして雑なんです。本や映画に触れた感想を、おもしろかった、楽しかったというメモリーに入れてしまうと、それ以上深掘りしないですよね。一度ラベルを貼ると、みんな満足してしまう。

 でもコンテンツを作る時は、それでは不十分です。僕の場合は、「あの作品よりおもしろいかな?」「何点くらい上回っているかな?」と分析していきます。たとえば、「これは『宇宙兄弟』の1話目よりもおもしろいかな?」とか。

 ちなみに、『宇宙兄弟』を出す時は、1話目のゲラを1ヵ月持ち歩きました酔っぱらっても焦っていても、いつ読んでもおもしろいと思ってから、これ以上直さなくてもいい判断しました。経験を積むと、比較対象がたくさん出てきますから、分析の精度も高くなってきます。

――細かく比較されるんですね。

佐渡島:そうですね、でも全体的に基準が上がっているな、とは思います。

――基準が上がっている、とは?

佐渡島:たとえば、昔はアルデンテのパスタが食べられるお店は少なくて貴重でした。でも今では、普通の喫茶店のパスタだって大体おいしいですよね。それと同じです。

 今の日本における商業コンテンツで、つまらないものはそんなにありません。そうすると、超一流であることを前提として、さらに売るためのフックが必要になります。

 実は、『漫画 君たちはどう生きるか』には、僕はあまり口を出していないんです。表紙の主人公の表情にだけアドバイスしたのですが、それは、表紙が売れるフックになると考えていたからです。いかにフックを仕込めるかが、ヒットの条件かもしれませんね。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/07/12 09:59 https://markezine.jp/article/detail/28739

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