SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

広告運用の情報サイト「Unyoo.jp」出張所

ポストGDPRの広告運用とは?プログラマティック広告への影響と課題

ユーザー体験は向上するのか

 2nd Partyデータを持っているという点で注目を集めるパブリッシャーですが、ユーザー体験という観点で彼らも苦悩している部分があるようです。

Adam Chorley氏(左から3番目)、Ben Hancock氏(右から2番目)、Yoni Argaman氏(左から2番目)

 「The coalition for better ads: How can we guarantee our customers a better online ad experience?」と題されたパネルディスカッションのなかで、モデレーターから「GDPRがユーザー体験に与えるインパクトは?」という質問がスピーカーに投げかけられました。

 Conde Nastでプログラマティックアカウントディレクターを務めるAdam Chorley氏(写真左から3番目)は、個人データ利用の合意取得がユーザー体験を損ねることを危惧しており、シームレスな体験を提供できるような工夫が必要になってくるといいます。

 以下は英国のパブリッシャーThe independentのWebサイトをモバイルで訪問した際のスクリーンショットですが、画面の半分以上を個人データ利用に関する説明と合意ボタン「I accept」が占め、このままの状態でコンテンツを閲覧するのは難しいことが想像できるかと思います。GDPR対策としては理にかなっていますが、ユーザー体験といかにバランスを取っていくかが今後の大きな課題となりそうです。

The independentのWebサイト トップページ(モバイル)

 CNNでプログラマティックのグローバル責任者を務めるBen Hancock氏(写真右から2番目)は、GDPRによってパーソナライズドからコンテクスチュアルへの揺り戻しが起こるという前提に立ったうえで、 ユーザーがコンテンツに関連性のない広告を見る機会が減ることはユーザー体験にプラスに働くとGDPRをポジティブに捉えていました。

 一方で、モバイル広告プラットフォームを提供するFyberでマーケティングならびに企業戦略SVPを務めるYoni Argaman氏(以下、Yoni氏/写真左から2番目)は、ユーザー体験の質を低下させるとしてGDPRに強く反対していました。Yoni氏曰く、ユーザーに関連性のある広告配信を可能にするパーソナライゼーションはユーザー体験の向上に一定の貢献を果たしており、2018年になってこれが難しくなるのは時代遅れだとのことです。

ユーザーはCookieではなく人である

 最後に、CARATの最高デジタル責任者 James Harris氏(以下、James氏)のセッションを紹介します。「Is the market asking for a new agency model?: How to innovate your approach to remain competitive in a crowded marketplace」と題された本セッションで、James氏はプログラマティック広告との向き合い方に関する興味深い考えを述べていました。

CARAT 最高デジタル責任者 James Harris氏

 James氏は、そもそもユーザーはCookieではなく人であることに触れ、このCookieのデータを活用したパーソナライゼーションに傾倒することに否定的な見方を示していました。そして、パーソナライゼーションではなく、Context(文脈)、Content(コンテンツ)、Relevance(関連性)が重要であることを強調します。

 さらにJames氏は、プログラマティック広告に依存するあまりクリックやCPMといった指標に振り回され、エージェンシーの担当者が本来の目的を見失ってしまうことに触れ、目的を達成するための手段としてプログラマティック広告が適正かどうか、適正な場合は定常的(Always on)である必要があるか再考すべきといいます。

自社のデータ活用のあり方を見直す機会に

 ここまで紹介してきた内容を踏まえて、GDPRがプログラマティック広告のエコシステムに与える影響を想像いただけたかと思います。コンテクスチュアルターゲティングが再び脚光を浴び、2nd・1st Partyデータの重要性はさらに高まることが予想されますし、個人データ利用に関する透明性が担保されることで、結果的にユーザー体験も向上するかもしれません。セッションに登壇したスピーカーたちはGDPRに向けた準備に翻弄されながらも、施行後の影響を必死に模索している様子が見て取れました。

 パブリッシャーの中では、早速新しい取り組みも始まっているようです。News UK、The Telegraph、Guardian News&Mediaの3社は、2018年6月20日に共同オーディエンスプラットフォーム「The Ozone Projecet」を発表しました。現段階ではまだアルファ版とのことですが、パブリッシャーの保有する2nd Partyデータを広告主やエージェンシーに提供する取り組みです。

 GDPRの対象となる日本企業はあまり多くはないかもしれませんが、対岸の火事として捉えず、これを機会にマーケティングそのものを見直すことが大切かもしれません。広告の配信手法としてパーソナライゼーションに依存しすぎていないか。1st Partyデータをマーケティングに活用できているのか。広告配信に活用している3rd Partyデータはどこから取得されたものか。パブリッシャーであれば、広告主や代理店に2nd Partyデータを提供できる下地はあるのか。一度自問自答してみる価値はあるかと思います。

 CARATのJames氏がいう通り、ユーザーはCookieではなく人であるということを再認識し、「誰に」「何を」伝えたいのか、その伝えたい相手はどこにいるどんな人なのかということを考え施策に落とし込むということと真摯に向き合っていくことが、その最初の一歩なのではないかと思います。

 GDPRが施行されてからようやく1カ月が経ったばかりというところですが、今後明らかになってくる影響も多々あると思いますので、引き続き最新の情報にキャッチアップしていきたいと思います!

本記事は「Unyoo.JP」の記事「【コラム】ポストGDPRの広告運用を考える:Programmatic Pioneers Summit 2018より」を要約・編集したものです。オリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらをご覧ください!

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
広告運用の情報サイト「Unyoo.jp」出張所連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

高瀬 優(タカセ ユウ)

アタラ合同会社 コンサルタント。国際基督教大学(ICU)を卒業後、総合電機メーカーで自社製品の法人営業ならびに販売推進業務に従事。その後、自身がリーダーおよびマネジメントを務める音楽バンド活動に専念し、CDの全国流通や全国ツアー等積極的に活動を行う。2016年よりアタラに参画し、国内はもちろん、グローバルに事業を展...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2018/07/06 09:00 https://markezine.jp/article/detail/28740

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング