日本コカ・コーラが「Madison」を活用する理由

IMCコネクションプランニング&メディアシニアマネージャー 牛込貴博氏
では、日本コカ・コーラは、どのような意図で「Madison」を活用しているのか。日本コカ・コーラのマーケティング本部でIMCコネクションプランニング&メディア シニアマネージャーを務める牛込氏は、その背景を次のように話す。
「言うまでもなくテレビCMにかかる費用は大きいので、他のメディアに増して説明責任の必要性は高い。テレビ離れが進んでいる状況を踏まえると、GRPのバイイングに関するルーティーンの報告をしているだけでは意味がないと思いました。そんな中で、GRPに付加的な意味を持たせることはできないだろうかと考え、Madisonに声をかけました」(牛込氏)
そして導入後、「Madison」のデータを見る中で、2つの気づきがあったという。1つ目の気づきから得たものは、施策の効果証明で欠落している部分があることへの課題感だ。
「我々は、メディアやコミュニケーションの領域で仕事をしているので、施策の評価においても、コミュニケーションに関する指標に目がいってしまいます。ですが、最終的な目的変数であるべき“ビジネス”の部分への説明責任を強化する必要があると考えました。
プライス・プレイスといったところまで包括的に見て、投資したものに対する効果を証明する必要性を感じたのです。そこで、社内にある色々なデータにMadisonのデータを絡めることで、データの意味性を高められるのではないかと考え実行したところ、実際に効果が出てきました」(牛込氏)
もう1つの気づきは、競合を見ずにメディアプランを立てることのリスクだ。「我々は一人で戦っているわけではなく、いつも競合と戦っている。競合を見ずに、メディアプランを立てても意味がないことを感じました」と牛込氏は話す。
これに関連して、東京にいる人間の視点だけでメディアプランを考えることの欠点もある。日本コカ・コーラの場合は、グローバルから「なぜ日本はまだテレビCMをこんなにやっているのか」と言われることもあるそうだ。だが、グローバルと日本はもちろん、日本の中でも東京と地方ではメディアの感覚が合わない時がある。
日本コカ・コーラでは、地方のボトラー社にメディアプランを説明しても、プランの意味をわかってもらえないケースもあった。地方のボトラー社にも有効性が伝わるメディアプランを作るためにも、共通言語となる「Madison」のデータを活用したという。
活用して発見した競合企業の動き
これらの気づき・課題を受けて、牛込氏はまずGRPとセールスの動きの相関性を分析した。
たとえば、ある競合企業が夏のハイシーズンに向けて、特定のエリアでGRPを上げていることを発見。加えて、店頭での価格も上手く設定していることがわかり、巧みなメディアプランに危機感を覚えたそうだ。
「こうしたデータを見ていると、我々が変えるべき点はたくさんあると気付かされる毎日です。GRPは単純な1つの数字ですが、これに様々なデータを組み合わせることで活発な議論が生まれます。
競合がこういった動きを取るかもしれないから、我々はこうしましょう、というように、ビジネスに直結した展開もできます。GRPをベースにしながら、ブランドの指標だったり、売り上げ以外の指標を絡めることで、GRPに様々な角度から意味を持たせ、説明責任を果たしていきたいですね」(牛込氏)