Yahoo! JAPANを制する者が検索連動型広告市場を制する
杓谷:圧倒的なトラフィックを誇るYahoo! JAPANを舞台に、OvertureとAdWordsのどちらが大きな売上をもたらすかという壮大なABテストがはじまったということですね。勝った方がYahoo! JAPANを手に入れて検索連動型広告市場を制することになります。当時のOvertureとAdWordsのシェアを教えてください。
佐藤:当時の検索サービスのシェアで言うと、Yahoo! JAPANが60%(50:50でOvertureとAdWords)ほどで、GoogleとMSN(Overtureを採用)が20%ずつくらいだったので、OvertureとAdWordsのシェアはほぼ同じくらいといった状況でした。Yahoo! JAPANの検索シェアがとにかく大きかったので、Yahoo! JAPANを100%取り込めるかどうかは極めて重要な課題でした。

杉原:Overtureは検索エンジン自体を持たず、検索連動型広告の技術のみを提供するBtoBのサービスでした。パートナーとなる検索エンジンとの契約更新次第で売上が0か100に決まるので、契約更新時期はかなり神経を使いました。提携先の検索エンジン側としては自分たちの取り分の料率を上げたいと思うわけですが、Overtureとしては利益が減るので大きな痛手です。
佐藤:提携先の検索エンジンとの契約更新は本当に大変でしたね。当時は1年ごとの契約更新で、そのたびに複数のポータルサイトと交渉をしていました。Googleは検索エンジンそのものを持っていて検索エンジンのテクノロジー自体をOEMもしていたのである程度の収益の柱がありましたが、Overtureにはなかったので余計に厳しかったのだと思います。Overtureはその後検索エンジンを買収するという流れになっていきました。
杉原:Overtureは2003年の2月にAltaVistaを買収しました。

佐藤: Googleの検索エンジンを採用しているポータルサイトはやはりAdWordsを採用しやすかったので、Overtureもその流れに乗ったのだと思います。
杓谷:細かな違いはあるものの、検索連動型広告のシェアで言うと、2002年のスタート時点ではほぼ一緒ということですね。検索シェア60%を誇るYahoo! JAPANを制したものが検索連動型広告市場を制するという、Yahoo! JAPANを巡る熾烈な戦いの火蓋が切って落とされることになります。
OvertureとAdWordsが2002年に検索連動型広告を開始したことで日本の運用型広告は本格的にスタートしました。同時に2社によるYahoo! JAPANを巡る熾烈な戦いがはじまりました。次回は両社の戦略やサービスの特徴を紹介しながら、検索連動型広告市場が勃興していく様子を見ていきます。