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インターネット広告の歴史と未来

スマートフォンがもたらした新しい動画広告の視聴の形


 YouTubeのTrueView広告の登場を皮切りに本格的に動画広告の市場が立ち上がりました。GoogleでAdMobとYouTubeの両方を経験し、スマートフォンとTrueView広告の台頭の両方を黎明期から経験してきたファイブ(FIVE)創業者の菅野圭介さん。菅野さんの経歴を追いながら動画広告の歴史を振り返ります。

可処分時間の奪い合いになると考えていた学生時代

杓谷匠(以下、杓谷):最初にマーケティングに興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?

菅野圭介(以下、菅野):思い返すと明確なきっかけは父親でした。私の父は40年間映画の宣伝マン一筋でやってきました。映画は常に認知度ゼロのところからはじめる特殊な商品です。いかに多くの人に知ってもらっておもしろそうと思ってもらえるかが勝負。それで興行的に当たったか外れたかが決まるある意味博打のようなものです。『タイタニック』が当たったらボーナスが出て家族で喜ぶ。そういった世界を幼い頃から見ていた影響が大きいのでしょう。

ファイブ株式会社/FIVE Inc. 代表取締役CEO 菅野 圭介さん
ファイブ株式会社/FIVE Inc. 代表取締役CEO 菅野 圭介さん

菅野:そこから一歩関心が高まるきっかけになったのが、学生時代に電通の学生広告論文に応募したことでした。いわゆる懸賞論文で、広告研究会などのサークルや、マーケティング関連のゼミなどが研究成果として応募するものでした。ひょんなことからその論文のことを知り、半分賞金目当てで友達と応募してみました(笑)。賞金目当てではあったものの「この先広告の未来ってどうなっていくんだろう?」ということを突き詰めて考えることが楽しくて、結構はまってしまいました。

 その時考えていたことは、広告ってユーザーに選ばれるものだということです。人間の脳みそのスペックはほとんど変わらない。1日は24時間しかないわけです。インターネットの影響でどんなに情報の量が増えたとしても、それを受け取る側に生物的な制約があるわけです。その中で企業が発信する広告が生き残るためには、やはり姿形を変えていく必要がある。もっと言うと、他のあらゆるコンテンツと時間の奪い合いという面で競合していくだろう、ということを学生なりに考えていました。

 広告は企業がユーザーに情報を発信する手段のひとつなので、情報技術(IT)が今後大きくマーケティングを変えていくのではないかと思うようになりました。

杓谷:同世代の我々が就職活動をしていた2007年前後のことで言うと、Googleは一般的に広く知られる存在ではありませんでした。Googleに興味を持つきっかけはなんだったのでしょうか?

菅野:最初にGoogleに興味を持ったのは、GmailにAdSenseの広告枠ができて、メールの内容に関連した広告が表示されるようになったときのことでした。当時のGmailはまだ招待制で、私が在籍していた大学の学生に割り当てられたメールサーバーのストレージの容量が25MBだった時代に1GBの容量が使えるということで、そのこと自体も衝撃的でした。

 今の文脈だとプライバシーの問題もありますが、人の目を介さずに機械が非常に個人的なやりとりであるメールの文面を判断して最適な広告を配信する。当時は単純にこの技術がすごいなと思いました。これを気持ち悪いと取るか、すごいと受け取るかは人それぞれですが、私には衝撃的でした。

広告会社との関係づくりに試行錯誤

杓谷:菅野さんはスマートフォンが登場する直前の2008年にGoogleに入社したわけですが、実際に入ってみていかがでしたか?

菅野:検索連動型広告のブレイクがあって、そこからさらに成長を加速していくという時期だったと思うのですが、1年目、2年目はお世辞にも優秀な社員じゃなかったなと(笑)。広告運用は得意ではなかったですね(苦笑)。

 グローバルでも広告会社とのGoogleをはじめとするプラットフォーマーとの関係性は今とはかなり違っていました。それぞれが「一手に扱いたい」 と考える志向性を企業同士ですから、ある意味での主導権争いがあったのは自然だと思います。

杓谷:当時は総合代理店がマス媒体の広告枠を買いきっていることもあり、広告主→代理店→媒体、という序列が一般的で、媒体社が直接広告主に営業に行くということは当時の商習慣として今よりももっと風当たりが強かった時代でしたね。

菅野:マーケティングプラットフォームとしてのAdWords(現・Google広告)を見た場合、基本的には広告主が代理店を通さずに直接広告を買い付けることができるようにデザインされています。そのモデルを、広告業界の商習慣にどう合わせていくかを試行錯誤する過渡期だったのではないでしょうか。

 悩んだり、もどかしいこともたくさんあったのですが、イギリス出張が大きな転機となりました。イギリスの広告業界は成熟していて、Big 6を中心とした総合広告代理店が大きな影響力を持っていたわけですが、イギリスのGoogleはそれらの企業とうまく折り合いをつけて仕事をしているように見えました。広告代理店と一緒に共通のゴールを持ってプロジェクトを遂行している様子を学ぶことができました。

 代理店の中にはクリエイティブを作成するクリエイターさんや、プランナーさんがいるわけです。そのような方々に、ちょっと視点を変えてプランニングのパートナーのような立ち位置でユーザーのインサイトを提供したところ、とても好評でした。当時一般にも公開されているリアルタイム検索があったり、キーワードプランナーといったツールだけでもとても価値があったわけです。そういったものをパッケージして広告代理店に提供することで信頼を得て、広告主への営業にも同行して提案ができるようになりました。

 プラットフォーマーの持っているデータを広告代理店の目線に揃えて提供できたことはとても大きな成功体験になりました。自分が好きなのもこういう分野なんだなと確認することができましたね。

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この記事の著者

杓谷 匠(シャクヤ タクミ)

Jellyfish Japan株式会社 Data Strategy Director
2008年に新卒一期生としてグーグル株式会社に入社。2010年にスタートアップの立ち上げに参画したのち、しばらく川原でひざを抱える日々を経験。2013年からトリップアドバイザー株式会社にてSEMアナリスト、BIアナリストを経験したのち、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/29 10:03 https://markezine.jp/article/detail/29656

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