ユーザーのニーズに向き合うことに格闘してきた20年
佐藤康夫(以下、佐藤):この連載を通じて振り返ってきた中でマーケティングにおける一番の変化は、インターネットがこれだけ普及したことで、ユーザーの力が強くなったことに尽きると思います。テクノロジーの進化によって、刻一刻と変わっていくユーザーのニーズにどう向き合っていくかについて、格闘してきた20年でした。
佐藤:GoogleとFacebookは、黎明期から本能的にユーザーの利便性を第一に考えていて、その姿勢がなくなったら広告主もどんどん離れていってしまうことを強く感じていたのだと思います。ユーザーの利便性を第一に考えていった結果、ユーザーも増えて広告主も増えていったのでしょう。
マーケティング領域においては、3rd Partyのツールベンダーもたくさん出てきました。しかし、彼らはクライアントには対峙しているものの、ユーザーには対峙していないので、どうしてもバランスが悪くなってしまい、イニシアチブが取れるほどにまでは至りませんでした。
改めて振り返ると、GoogleやFacebookなどのプラットフォーマーが、インターネット時代に合わせたユーザー、パブリッシャー、広告主3社の利益のバランスを上手く取るモデルを構築してきた歴史だったなと感じます。昨今、いろいろと叩かれていることも多いですが、このモデルを確立したという功績は、とても大きな意義があったと思います。そのモデルが昔ながらの広告業界のあり方と摩擦が随分あって、試行錯誤を続けてきたという歴史でもあったのでしょう。
購買データを軸に存在感を増していくAmazon
杉原剛(以下、杉原):GoogleとFacebookの複占化はしばらく続くとして、それらと同じマグニチュードで台頭してきているのがAmazonだと思います。Amazonは購買体験自体を変えてきました。広告ビジネスへ参入してからまだ日が浅いですが、既に世界第三位の広告媒体にまで成長しています。今後、Google、Facebookに次ぐ第三の勢力として、大きく成長していくことは間違いないと思います。また、セールスフォースのように、広告ビジネスそのものというよりも、マーケティング活動に欠かせないCRMの管理をうまく取り扱うことのできるプレーヤーは、GDPRやITPの影響もあって今後大きく成長していくと思います。