検索連動型広告を生んだGoTo.comとOverture
杓谷匠(以下、杓谷):Overtureの前身となったGoTo.comを知ったきっかけを教えてください。
杉原剛(以下、杉原):1998年に、転職の合間にアメリカ1周旅行をしていてはじめてシカゴに行きました。インターネットの商用利用が解禁になって2・3年が経ち、インターネットに関する展示会がアメリカのいろいろなところでやっていました。そのひとつ、前から行ってみたいと思っていたシカゴの展示会に参加しました。そこにGoTo.comがブースを出展していたのです。そのブースに立ち寄ったのがOvertureの前身となるGoTo.comとの最初の出会いです。
その時はサービス自体をよく知らなかったのですが、説明を受けているとどうやら検索エンジンだということがわかりました。一番の衝撃は有料だという点で、料金は一体誰が払うのかまったく検討もつきませんでした。当時の検索エンジンはすべて無料だったからです。
既に検索結果の右側に検索連動型広告が表示されていました。クリック単価が表示できるオプションがあったので、25¢などといった金額が広告の部分に表示されており、衝撃を受けました。その場ではサービスの全体像はよくわからなかったものの、なんとなく変わったことやっている会社だなと印象に残りましたね。
佐藤康夫(以下、佐藤):当時の私はインフォシークジャパンに在籍していましたが、GoTo.comは非常に成功していて米国では既に有名で、米Infoseekの経営陣がGoTo.comを意識しはじめていました。その影響か、ディズニーに買収される際にInfoseekの名前はGo.comに改称され、UIもそっくりでした。米Infoseekの経営陣がGoTo.comを真似て「Paid Inclusion」の導入に関する意見を聞いてきたことを覚えています。
Paid Inclusionとは:
有料で検索エンジンへWebサイトを登録する仕組みのこと。申請後の短時間で検索エンジンのインデックスに登録されることと、周期的なクローラー巡回が保証されることで常にインデックスに最新の情報を登録しておけることがメリット。当時はクローリングの頻度も少なくサイトの更新などに時間がかかっていた。
杉原:はじめは、GoTo.comもGoogleと同じようなBtoC向けの検索エンジンの会社でした。そのビジネスモデルで何年かやっていたのですが、BtoCのサービスはユーザーに普及させるのにものすごく広告宣伝費がかかります。Idealabというインキュベーションセンターが支援していたので資金は潤沢にあったのですが、それでも長続きしないと判断したのだろうと思います。
既に検索連動型広告はGoTo.com内のドメイン上で展開し、手応えを感じていました。検索エンジン自体のサービスをやめて検索連動型広告の技術を他社の検索エンジンに販売していくことになり、社名もOverture Service Inc.に変更しました。
ちなみに最初にOvertureが検索連動型広告を売ったのはAOLでした。Yahoo! Inc.にサービスを売る前の話です。これがOvertureの検索連動型広告のはじまりとなります。
佐藤:当時最も性能が良い検索エンジンと言われていたAltaVista や Inktomi、InfoseekでもWebサイトのクローリングには結構時間がかかっていました。正規にWebサイトの登録申請をしてクローラーを待っていたら、検索結果に反映されるまでに早くても数週間レベルと時間がかかりました。有料で登録したほうが早く検索結果に反映できて情報も更新できるので、ユーザーにとってもむしろ便利だったのだと思います。有料ディレクトリみたいなものだったかもしれません。
杉原:感覚としてはSEOに近かったかもしれませんね。