既存領域とテックの両方がわかる人材の不足
西口:けっこう、その条件は強いんですね。でも確かに今、ファッションテックってテクノロジーが関与する様々な領域の中でもすごくおもしろいと思いますね。

金山:そうなんです。AIによる機械学習が応用できる範囲だったり、人がファッションに接する接点の多様化だったり。あと、サプライチェーンでも上から下までテクノロジーが入る余白がまだまだ大きい。そこに革命を起こせたら、本当にグローバルで第一人者になれる可能性があります。
西口:アパレル企業はもちろん、大手総合ECもファッションを強化しようとテックに力を入れている。でもよく聞くのは、やはり人材の問題なんですよね。ファッションに強い人、テックに強い人、ファイナンスに強い人はいても、全部わかって実行できる人がいない。
金山:すごく少ないと思いますよ。それってフードテックとかでも少なくて、アドテックやメディアなど情報領域に比べて、ファッションやフードといったフィジカルな要素が大きい領域でのクロステックが全般的にこれからなんだと思います。
西口:なるほどね。とすると、たとえばユニクロは自社を「情報小売」と称していますが、これからZOZOグループはファッションにどう取り組んでいくのか、どこから攻めていくのでしょうか?
金山:ファッションの本質は「情報小売」だと、僕らも思っています。そして僕らはこれに、データやテックの側面からアプローチをしています。
ファッション体験もマーケットインになっていく
西口:なるほど。僕らマーケティング、特にデジタル領域からみると、ZOZOグループはファッションとデジタルとどっちの企業なんだと思うところがありましたが、今ので腑に落ちました。ただ、そうした業界の境は最近どんどんあいまいにもなっていますね。
金山:そう思います。僕らは服をつくり出したのは最近だし、そもそもリアル店舗がないECからのスタートなので、テックが起点であることは事実です。でも、たとえばAppleはデバイスから、Googleはソフトウェアから攻めていって今お互いに近づいている。
西口:それはわかりやすいですね。ファッションだとフィジカルな分、リアルからとデジタルからという軸も加わりますが、この先5年後10年後、ユーザーのファッション体験はどうなっていくと思いますか?
金山:ひとつ明確に思っているのは、他の業界同様に、マーケットインのアプローチをとるブランドが愛されるようになるだろうということです。ファッションってこれまで究極のプロダクトアウトだったんですよね。
ブランドのイメージを決めるデザイナーがいて、コレクションでトレンドが打ち出され、商品化されるタイミングで色は3色、サイズは4種だよ、というように。しかし、これからのユーザーはもうそれでは満足してくれないと思う。自分の感覚を考えても、そうですよね。
