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MarkeZine Day 2018 Autumn(AD)

会員登録率が平均で3割向上!KLMオランダ航空も活用するCIMツール「GIGYA」の魅力とは

 MarkeZine Day 2018 Autumnの2日目には、「GDPR対応とLTV向上を両立する顧客ID/データ統合」と題し、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの嶋田貴夫氏が登壇。One to Oneマーケティングを実現する上で重要となる「アクショナブルデータ」の収集や、拡張性を持ったアーキテクチャの構築、そしてGDPRなどの法規制への対応について語った。

One to Oneマーケティングにおける3つの課題

 嶋田氏は冒頭で、企業がOne to Oneマーケティングを目指す際に課題となる3つの点を挙げた。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション
データ&アナリティクス部 シニアプロダクトプランナー CIMエバンジェリスト
嶋田貴夫氏

1. アクショナブルデータの収集

 まず1つ目が、「アクショナブルデータの収集」だ。嶋田氏が語るアクショナブルデータとは、顧客から取得するデータの中でもマーケティングの施策(アクション)につながる有用性の高いデータのことを指す。

 こうしたアクショナブルデータ収集を目的に、会員サイトなどを構築する企業は少なくないだろう。しかし、サイトを構築してすぐに顧客が個人情報を登録してくれるわけではない。「入力する項目が多ければ顧客は面倒に感じ、途中で離脱してしまう確率が高い」と嶋田氏は語った。

 一方で、入力する項目をメールアドレスのみにした場合、会員の獲得にはつながりやすいが、メール以外の個人情報が集まらないというジレンマがある。嶋田氏は続けて、データのアップデートがされていないことで、収集したデータが「アクショナブルデータ」でなくなることも指摘した。

 たとえば、独身男性の会員を獲得したとする。登録当初に入力されたデータがアップデートされなければ、「既婚」や「子持ち」とステータスが推移しても、送られてくるのはすべて独身男性向けの情報となる。これでは、いくら顧客情報を統合しても意味がない。

2. 各ツールとの柔軟な連携

 2つ目に嶋田氏が挙げた課題が、「拡張性のあるアーキテクチャの構築」だ。基幹系システムからフロントエンドデータに至るまで、企業のシステム開発担当者は日々連携などの作業に追われている。そうした状況で、MAなどのマーケティングツールごとに必要なデータが異なると、連携の仕組みは一層複雑になる。これがシステム開発担当者の負担となり、即座にマーケティングの施策に必要なデータを出力することが困難となる。こうした理由で、すぐに施策を実行できずに悩むマーケターは多いという。

 One to Oneマーケティングにおいては、様々なマーケティングツールとの連携が重要となる。そのため、データの連携がスムーズに行える拡張性の高いアーキテクチャの構築は欠かせない。

3. GDPRへの対応

 さらに企業がOne to Oneマーケティングを行う上で留意しなければならないのは、今年5月に欧州で施行された「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」の存在だ。同規則に違反した場合、多額の罰金処分が課せられる。「制裁金の額は約25億円(※2018年10月時点のレートで計算)にものぼると言われています」と、嶋田氏は警鐘を鳴らした。欧州だけでなく、現在米国や日本などにおいても個人情報保護法の整備は進んでいる。

出典:『大きく変わる世界の個人情報保護法令』

3つの課題をクリアする「CIM」とは?

 では、One to Oneマーケティングにおける様々な課題をクリアするために、企業はどうすべきなのだろうか。嶋田氏はその1つの解として、「CIM(Customer Identity Management)」を挙げた。CIMとは、顧客データの活用と管理を両立するソリューションだ。CIMで必要となる要素は、以下の3つ。

  • IDの認証・登録などの機能を一元化するための顧客ID統合
  • 顧客データ管理を実現する「同意状況」の管理
  • APIを経由した各種マーケティング・プラットフォームとプロファイル情報の連携

 嶋田氏はCIMの代表的なツールとして、SAPが提供する「SAP Customer Data Cloud from GIGYA」(以下、「GIGYA(ギギャ)」)を紹介した。同ツールは、オムニチャネルで顧客IDとデータを統合し、それを連携した異なるサービス間で利用することができる。そのため顧客は会員登録などの際、各サイトで定義された必須項目を入力するだけで会員登録が可能になる。たとえば、コンテンツサイトではメールアドレスとパスワードのみ登録し、ECサイトを利用するときに住所情報だけを追加すれば、会員として利用することができる。

 また「GIGYA」は、プロファイル情報の一元管理を実現。連携した複数のサービスにおける顧客の利用状況に応じた情報提供が可能となる。既存のグループ会社のサービスに対して、親会社の顧客IDでログインできるID連携機能も提供している。

KLMオランダ航空がSNS連携によって登録率の改善を実現

 嶋田氏は続いて、「GIGYA」を活用したSNS連携に触れた。同ツールでは、顧客IDの統合によって、FacebookやTwitter、LINEなど世界29以上のSNSとの連携に対応。ブラウザの言語設定に応じて顧客の属性を把握し、適切なSNSを連携先として提示することが可能だ。「SNSと連携した場合はパスワードの登録が不要」という設定にした場合、顧客はわずか2回のアクションで登録を済ませることができるという。SNS連携によって、顧客から許諾を得た上で、Facebookでどのページに「いいね」をしたかなども知ることができる。

 KLMオランダ航空では同機能を活用し、会員登録の増加を実現。GIGYA社が実施した同ツール導入企業への調査によると、導入後、会員登録率は平均で33%向上し、再ログインなどのエンゲージメントも平均して15%以上向上したという。

 「インバウンドを意識した訪日外国人向けの会員化施策などで活用していただいています」(嶋田氏)

オーストラリア版「GQ」のサイト運営会社では広告収入が約25%向上

 嶋田氏はさらに、「顧客情報のアップデート」に対しては、「GIGYA」の「プログレッシブ・プロファイリング機能」が有効だと述べた。

 「プログレッシブ・プロファイリング機能」は、たとえば「顧客がn回目にログインした」または「初めて特定のカテゴリーの製品を閲覧した」といったタイミングで1問程度の簡単なアンケートをとり、顧客情報の更新を促す機能だ。ポップアップで出現するアンケートは、回答もポップアップを消すアクションも手軽で、クリックされやすい。これによって、顧客の最新の興味・関心に関する情報などが取得でき、マーケティングオートメーション(MA)における効果の最大化にも貢献する。

 オーストラリア版の「GQ」や「VOGUE」などのメディアサイト運営を行うオーストラリアのNewsLifeMediaでは、「GIGYA」を使って10以上のサイトで別々に管理していた顧客IDを統合。DMPやセールスフォースの「Marketing Cloud」といったマーケティングツールと組み合わせることで、顧客情報に合わせた記事のレコメンド機能を実装。メンバー登録率が従来比で約8倍となり、広告収入も約25%向上したそうだ。

 また、粉ミルクを販売する仏ダノングループのヌトリシアでは、顧客をより理解することを目的に、「MyNutricia」というサイトを構築。妊婦向けの情報発信を始めた。同サイトでは、会員登録の際に「妊活中」「予定日が決まっている」「産後間もない」「産後1年以上経過」という4種類の中から自身のステータスを選択する仕組みとなっている。この情報と、Webサイトの閲覧記事やPC/スマホのどちらでアクセスをしているかなどの情報によって、顧客に合わせたコンテンツ配信を行う。

 また同社は、「粉ミルクの購入サイクル」を把握するため、ログインをして購入するタイプの自動販売機を設置。それぞれの購入のタイミングに応じて情報配信を行うOne to Oneマーケティングを実現した。その結果、会員登録数は1.5倍の成長を遂げ、DAU(日間アクティブユーザー)数は2倍以上となった。

マーケティングツールとの柔軟な連携が可能に

 嶋田氏はまた、拡張性のあるアーキテクチャの好例として、無印良品の「MUJI passport」を紹介した。「MUJI passport」では、API経由で様々なデータ連携が可能だが、「GIGYA」においてもAPIを活用したデータ連携が可能だという。

 「GIGYA」は60以上のマーケティングツールとの連携実績を持ち、特定のコネクタを使えば、開発することなく自動でデータ連携が行える。さらに、一部開発は必要になるが、新規会員登録があった際にリアルタイムで通知する仕組みも容易に実現できる。

 続いて嶋田氏は、個人のデータの取り扱いに言及。プライベートDMPなどの個人データとの連携をする際には、「個人データを3段階のレベルに分けて考える必要がある」と指摘した。

 レベル1はいわゆる生データで、顧客の行動の詳細な履歴情報などがそれにあたる。レベル2はプロファイル情報で、ターゲティングなどで利用されるものだ。そしてレベル3は、個人の特定性や識別性が高いデータを指す。

 通常、レベル3に値する個人の特定性が高いデータは分析に使用しない。一方で、One to Oneマーケティングを行う際には、レベル2以上の高精度なデータが必要となる。それぞれの用途にあわせてデータを整理し、個人データを管理する。「こうしたアーキテクチャを構築することで、漏洩のリスク低下やコンプライアンスへの対応が非常にスムーズに行えます」と嶋田氏は語った。

GDPRにも対応し、顧客の意向に沿ったマーケティングを実現

 最後に嶋田氏は、「GIGYA」の強みとして、GDPRへの対応を挙げた。GDPRは個人データの処理や移転を取り締まる規則だ。たとえば、欧州にあるデータセンターでデータ管理していても、そのデータを日本で「閲覧」した瞬間にそれは「移転」とみなされる。

 「『GIGYA』では世界5ヵ所にデータセンターを配置しておりますので、それぞれのデータセンターでデータを保管することができます」(嶋田氏)

 また、「データの扱いに関する同意の取得」については、顧客がどの項目にいつ同意したかを詳細に記録。クラウド型で運用しているため、記録の改ざんが防止できる。また、顧客からの同意がとれてないサービスは、データ連携によって制御される仕組みだ。

 その他、「忘れられる権利」を考慮した機能を実装し、徹底したGDPR対応を行っているという。講演の最後に嶋田氏は、「『GIGYA』を使えば、これまでよりも効率的にアクショナブルデータを収集することができます。また、顧客の意向に沿ったデータ活用によって顧客をさらに理解し、顧客に合わせた適切なマーケティングが行えます」と、CIMツールの魅力を伝えた。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにしたソフトハウスの経営とライターの二足の草鞋を履いている。DB Online チー...

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/07 14:48 https://markezine.jp/article/detail/29398