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マツキヨ、JAL、ファンケルの事例に学ぶ、テクノロジー×マーケティングの最適解

2018/12/18 10:00

 「MakeZine Day 2018 Autumn」にて、日本アイ・ビー・エムのWatsonカスタマー・エンゲージメント事業部 事業部長の樋口正也氏は、「顧客体験」を中心としたマーケティングと新しいテクノロジーの融合をテーマに講演を行った。その中では、マツモトキヨシや日本航空、ファンケルなどの事例をもとに、より良い顧客体験を提供するために必要な一歩先を行くテクノロジーの使い方が明らかになった。

エンドツーエンドの視点で顧客課題を解決

 IBMはコンピュータの会社として知られ、近年ではコグニティブ・コンピューティング・システム「IBM Watson」、まったく新しいアプローチにより従来のコンピュータの限界を超えた計算能力で新たな時代を切り拓く量子コンピュータなどの取り組みを進めている。

 同社はマーケティング領域においてもSilverpop、Tealeafなど7社を買収し「Watson Marketing」としてポートフォリオを構築している。その中で、樋口氏が強調するのが「エンドツーエンドの視点」だ。

樋口氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
Watsonカスタマー・エンゲージメント事業部 事業部長 樋口正也氏

 「顧客体験を考える時、顧客とのコミュニケーションやECの使い勝手だけでなく、商品の配送スピードなども重要。そういった裏側への投資も必要だ」と同氏が語るように、部分的ではなく全体的な視点での支援が求められる。IBMでは「Watson Marketing」以外にも、ECやオムニチャネル・コマースに関しては「Watson Commerce」、受注管理やフルフィルメント、サプライチェーンに関しては「Watson Supply Chain」を用意することで、顧客の目に見えない部分の最適化も支援している。

 顧客体験を重視する企業が増えている中で、樋口氏は、顧客の購買に至るまでのニーズや関心の推移、チャネルをまたいだ行動を理解し、「個客」にフォーカスしたマーケティングを実現する「Watson Marketing」の最新テクノロジーと顧客事例をいくつか紹介した。

マツモトキヨシが離反率を8%改善、その理由は

 最初に紹介したのは、インバウンドの波に乗り順調に売上高を伸ばしているマツモトキヨシが採用しているというMAの事例だ。マツモトキヨシは売上高1兆円を目指しており、全国にある合計1,600店という店舗展開を生かしたオムニチャネル化を進めている。適切なタイミング、場所、デバイスで顧客にアプローチするためには、購入に至るまでのニーズから関心の推移、チャネルをまたいだ購買行動をより深く理解しなければならない。

 同社は購買データの分析はしていたものの、「先手を打つような体制、仕組みづくりが整備されていなかったため、限定的なプロモーションしか行うことができず、チャンスを取り逃がしていた」と樋口氏。

 そこでIBMは、予測分析ソフトウェア「IBM SPSS」を中心とした分析プラットフォームとキャンペーン管理プラットフォーム「IBM Campaign」を連動させた仕組みを構築。これにより、シナリオ分析から施策の実行、効果検証に至るPDCAサイクルの自動化を実現したという。

 具体的には、顧客の興味や関心などの予測分析を行い、その結果をもとにポイントカード会員へレシートクーポンやキャンペーンメールを送信。予測分析から先手を打った施策は成功し、同会員の離反率は約8%も削減された。マツモトキヨシの担当者も満足とコメントした。

個客へのアプローチに必要なデータとは

 次に樋口氏は、“個客”マーケティングを実現する方法について解説した。「一人ひとりの顧客=個客」へアプローチするには、基本となる行動データや属性データ以外のデータを掛け合わせることが求められる。樋口氏は様々なデータがある中で天気予報、位置情報、サイコグラフィックデータの活用が重要だとした。

 まず、天気予報。IBMは2017年にThe Weather Companyを買収し気象データの利活用を進めており、重要なデータと捉えているようだ。

 たとえば全国展開するチェーン店の場合、札幌と那覇の2店舗周辺が同じ15度だったとしても、暑かった日が続いた後の15度、10度が続いた後の15度では、それぞれ「涼しくなった」「暖かくなった」と感じるため、顧客が求める商品も変わってくる。そこで顧客属性に、天気による顧客心理の変化を加えることで、地域ごとに顧客行動を「先読みした」プロモーションの展開が可能になる。

 続いては位置情報。こちらに関してもIBMは、ロケーション・トリガー機能とAIによるターゲティング機能の提供を通じて個客へのアプローチを支援する。

 ロケーション・トリガー機能は位置情報をもとにメッセージ配信ができるもので、たとえば店舗の半径500メートル以内に入ったら、顧客のスマホにメッセージを配信することができる。

 一方、AIによるターゲティング機能では、通知のタイミングをより最適化し、顧客の読みたいコンテンツを読みたいときに配信が可能だ。たとえば、働く20代女性に話題の新作コスメ特集を朝の通勤時間帯に配信したり、ワインのリピーターに対して新着ワイン特集を夕方に配信したりして、最寄りの店舗への来店を促すことも可能だ。

サイコグラフィックデータを活用して顧客に合った情報を

 最後の価値観、ライフスタイル、趣味などのサイコグラフィックデータに関しては、日本航空のバーチャルアシスタント「マカナちゃん」の事例を通じて解説した。

 「マカナちゃん」はチャット形式でハワイのレストランやアクティビティといった様々な現地情報をユーザーに合わせておすすめするサービス。「Watson」の画像認識機能を活用しており、写真からおすすめスポットを提案してもらうこともできる。

 また、旅行サイトの「トリップアドバイザー」とも連携しているため、最新の口コミ情報なども合わせてチェックすることができる。

 同サービスによる高精度な提案を実現しているのは、SNS、コミュニティサイト、チャットボットなどから自然言語を分析して、パーソナリティ(性格)を推定する「IBM Watson Personality Insights」だ。知的好奇心、誠実性、外向性、協調性、感情起伏の性格(Big 5)、現状維持、快楽主義など5つのセグメントを持つ価値観など合計95のセグメント因子で性格を予想する。

ファンケルの機会損失を解消

 次に樋口氏は、オンラインの顧客体験を可視化する「IBM Tealeaf Customer Experience on Cloud」の事例として化粧品・健康食品メーカーであるファンケルの事例を紹介した。

 IBM TealeafはWebサイトやモバイル・アプリのセッション情報を記録し、これを再現することでユーザーがどこで操作につまずいているのかを可視化できる技術だ。ファンケルではこれを、つまずきが多いクレジットカードのセキュリティコード入力で活用した。

 クレジットカードのセキュリティコードは、カードの裏側にある3桁か4桁の数字でコンバージョンまで後一息の決済画面で必要になる。このセキュリティコードだが、どこにあるのか、なんなのかを知らない人も多く、月に約3,000人がセキュリティコード入力でつまずいていたという。

 IBM Tealeafを使って分析してみると、郵便番号や電話番号を入力している顧客がいることがわかったため、セキュリティコードの場所を説明する画像を挿入。これによりエラーが0件になったという。これにより、購買機会の損失を解消することができた。

 別の顧客では、画面遷移の段階でバグにより日付がリセットされ、最初に入力した日時で予約が入っていなかったなど、様々な例を挙げた。いずれも「アクセス解析のGA(Google Analytics)やAA(Adobe Analytics)の定量的な分析ではわからない」と樋口氏。

 顧客サポートに電話をしてきた時、お客様はどのような操作をしたか覚えていないこともあるため、聞き取りは容易ではない。しかし、IBM Tealeafによるリプレイなら問題を再現できることから、コールセンターでも重宝しているという。なお、お客様の個人情報は見えないように予めマスク処理しておくため、安心だ。

チャネルをまたいだ顧客体験を可視化

 続いて樋口氏が紹介したのは、マルチチャネルでのカスタマージャーニーの分析についてだ。顧客行動分析、顧客体験管理、顧客ジャーニー分析などを併せ持つ「IBM Watson Customer Experience Analytics」は、オープンなクラウドベースの双方向のサービス連携を実現する「Universal Behavior Exchange(UBX)」を活用することで、購買に至るまでのジャーニーを可視化する。

 例に取ったのは自動車ディーラーだ。自動車を買うにあたって、通常消費者はスマホで情報を調べる、店頭で相談する、試乗するなどを経て購入に至るが、「購買に至るカスタマージャーニーをどれだけ可視化できているだろうか?」と樋口氏。車検前にパーソナライズされていないメールを送る程度でとどまっている、そんな企業が多いのではないかと指摘する。

 「Customer Experience Analytics」は、様々なチャネルの顧客体験を統合し可視化できる。顧客がどのチャネルで時間を費やしているのか、チャネルごとでどのように行動しているのか、などを把握することが可能で、行動を段階的に掘り下げることもできる。これにより、適切なタイミングでデジタル施策を打つことができるという。

 その結果、たとえばディスプレイ広告から入ってWebを回遊し、来店試乗、その10日後にFacebookで再来店を促すプッシュ通知をすると、2日後に来店して契約というパターンなど、様々な購買パターンが可視化できる。その上、各パターンにおける平均単価、期間、車のタイプ、顧客層などの傾向がわかってくるという。これがあれば、次の施策改善に役立てられる。

 最後に樋口氏は「マーケティング、コマース、サプライチェーンとそれぞれで違う課題を抱えているが、IBMはフロントからバックエンドまでつなげることができ、事業全体を支援できる」と語り、講演を締めくくった。

ファンケルも活用しているIBM Tealeaf、その実力は?

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