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MarkeZine Day 2018 Autumn

アマゾンにおける「プライスマッチ問題」とは/スリーエム ジャパンが語ったキーワード検索への対策

 「MarkeZine Day 2018 Autumn」の1日目に行われたライトニングトーク。同セッションに登壇したスリーエム ジャパンの杉山開一朗氏は、アマゾンでビジネスを展開する多くの企業が抱える「プライスマッチ問題」について言及。問題解決のためのヒントと、同社が活用するアマゾンのビッグデータ分析について語った。

「プライスマッチ問題」にどう向き合っていくかが成長のカギ

 楽天を抜き、ついに国内でシェアナンバーワンのECサイトとなったアマゾン(「ジェトロ世界貿易投資報告 2017年版」)。アマゾンでどう自社のビジネスを伸ばしていくかは、多くのEC事業者やメーカーにとっての課題だろう。

スリーエム ジャパン株式会社
コンシューマービジネス デジタルコマース部 セールス&マーケティングマネージャー
杉山開一郎氏

 約10年にわたり、スリーエム ジャパンでマーケティング市場の分析を行ってきた杉山氏は、「アマゾンでECなどのビジネスを始める際、多くの人が直面するのが『プライスマッチ』という問題です」と語った。

 「プライスマッチ」とは、商品の価格を比較して自動的に価格が変動される仕組みのこと。アマゾンでの「プライスマッチ」には、具体的に2つのアルゴリズムが働く。1つは、「アマゾンが自分たちで販売する商品の価格が、アマゾンのサイトを借りて販売している商品の価格よりも低いようにする」というアルゴリズム。そして2つ目が、「同じ商品が他のECサイトにおいて、より低価で取り扱われていた場合、その価格に合わせる」というアルゴリズムだ。

「プライスマッチ」によって、他のECサイトが設定した1,270円よりも低価の1,154円に値下げされている(赤枠を参照)

 杉山氏は、同社が販売する「スコッチブライト」を例に挙げた。同商品は定価が2,100円に設定されていた。それを1,500円で売り出していたものの、他のECサイトの設定価格にあわせて価格がさらに低下。現在では44%オフの価格で取引がされている。

 商品価格が下がれば、当然アマゾン側の利益も減少する。すると次第に発注の数は減り、最終的にはその商品がアマゾンで取り扱われなくなってしまう。「アマゾンの市場自体は伸びているのに、自社の商品がなかなか売れないというジレンマを抱えることになります」と杉山氏は話した。

 では、こうしたジレンマから脱却するためにはどうすればいいのだろうか。杉山氏は、「そもそもプライスマッチが起こらないようにすれば良いのです」と語り、問題解決へのヒントを紹介した。

 それが、「専用品の販売」だ。「プライスマッチ」ではJANコードで商品が識別されるため、専用品としての販売であれば価格が自動的に下がるということは起こらない。一方で、この対策を講じた場合、他社の競合製品が価格面でアドバンテージを得るため純粋に売れ行きが見込めなくなる可能性があるという。

アマゾンのビッグデータを分析し商品ごとに戦略をプランニング

 杉山氏は続いて、同社が設定する売り上げのKPIについて述べた。

 ECの売り上げは通常、「IMP(インプレッション)×CVR(コンバージョン率)×ASP(平均販売価格)」で導き出される。一方同社では、IMPをUU(ユニークユーザー)に置き換え、「UU×ASP×CVR×RR(リピート率)」を売り上げの方程式としている。

 UU獲得には、「アマゾンのサイト内広告の最適化が最も効果的だと感じています」と杉山氏は語った。アマゾンの利用者の多くは、GoogleやYahoo!などの検索流入ではなく、アマゾンサイトの検索結果から流入するためだという。アマゾンサイトの検索結果からの流入割合は、約80%にものぼるそうだ。

アマゾンのキーワード検索のランキングがどれだけ購入につながっているかを表している

 杉山氏はそれでも、検索結果で上位にあがることが売り上げにつながるとは限らないと指摘。

 アマゾンのサイト内でキーワード検索を行うと、売り上げのランキングデータにもとづく結果が表示される。キーワード検索の結果がどれだけ購入につながっているかを1位から順に表したのが上のグラフだ。検索結果で1位となっている商品では約3割が購入まで至る。しかし、その割合は2位で3%と急激に落ち、3位であってもわずか1%しか購入につながらないという。つまり、どれほどインプレッションが増加しても、キーワード検索において1位にならない限りは、大きな売り上げの伸びが期待できないということだ。

 セッションの後半で杉山氏は、アマゾンにおける同社の戦略モデルを紹介した。同社では、キーワード検索ランキングの結果を把握した上で、アマゾンの「ARA(Amazon Retail Analytics) Premium」を活用し分析を行う。買い物かごデータやリピートなどの詳細を確認し、各商品をそれぞれ「コンペティター(競合)」「クロスマーチャンダイズ」「カテゴリー」を意識した戦略を立てるという。

 たとえば、テープの商品であれば他社が販売する類似したテープの商品が「コンペティター」にあたる。「クロスマーチャンダイズ」はテープから連想される「梱包」「ダンボール」などだ。また、「カテゴリー」は「テープ」という全体的な分類のことを指す。こうした戦略をすべての商品に当てはめ、広告を打ちだしていく。

 杉山氏は最後に、「弊社では、こうした戦略を進めながらPDCAを回しております。継続的に自社商品のキーワード検索結果をモニタリングしながら、アマゾンが公開するビッグデータを上手に活用することが重要です」と語り、セッションを閉じた。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/01 09:00 https://markezine.jp/article/detail/29464

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