ただのGeneralistから差別化する方法とは?
廣澤:野口さんは、CDOというと、データのスペシャリストのように見えますが、いかがでしょうか。
野口:どちらかと言えば、自分はGeneralistだと思っています。データを触るようになったのはここ4、5年かつマネジメントの立場なので、あまり直接的に手を動かすことはありません。
Generalistの立場から見ると、Specialistに比べて手に職がないと感じ、それを弱みに思ってしまう人が多いのではないでしょうか。

しかし、Generalistの中にも強みと言える部分があると思っています。それは「本質を見抜く力」や「マネジメント力」です。これらをスキルセットとして描くことは難しいとは思いますが、その2つはどんな職種にでも強みになっていくはずで、Generalistが身に着けやすい能力とも言えます。
廣澤:ここまでの話を受けると、Generalistはただ幅広く何かができるだけではダメで、差別化が必要、ということかと思いました。井上さんは「ここを差別化してきた」という経験はありますか?
井上:皆さんの話に共通しているなと思うのが、前提としてGeneralistとSpecialistのスキルやスタンスはどっちも必要だということです。その上で、私はマーケティングの幅広いスキルとデジタルの深いスキルを掛け算することで差別化を図ってきました。
このように自身のスキルを掛け算することでレアな、ユニークな存在になれるという考え方が軸になっています。自分の中でコアを作り周辺領域へと広げていくことで、自分の強みになるのかなと。
学問から得るか、実務から得るか
廣澤:次に、「Book Smartか、Street Smartか」というテーマで議論したいと思います。
「Book Smart」※というのは体系的知識を学問として習得し、マーケティング知識を突き詰めた上でマーケターになるということです。一方「Street Smart」は、入社して現場でOJTを進めながら知識を習得していくという考え方です。
※”Book Smart”という言葉は本来、「勉強はできるが仕事はできない」という意味で揶揄として使われがちだが、今回は上記の意味合いで議論する。
今の日本では後者の「Street Smart」なマーケターがやや多い気がしています。井上さんよりも上の世代のマーケターとなると、そもそもフレームワークを新たに作っていかないと戦えないような世代だったと思うのですが、僕らの周りには既存のフレームワークやノウハウに満ちあふれています。
こうした環境でマーケターとして突き抜けていくにはどうしていけばいいのでしょうか?
越智:私はマーケターそれぞれが「クリエイティビティ」を持つことが必要だと思っています。マーケティングの伝統的な理論、フレームワークに対し、日々自分なりに考え、「私はこう思う」という意見を持つことで、クリエイティビティは養われていくのではないでしょうか。
井上:私はマーケティングに関してはBook SmartからStreet Smartへ、デジタルに関してはStreet SmartからBook Smartへ移り変わってきました。
P&Gでマーケティングの基礎となる秘伝のノウハウを学んだのではないか、と周りの方からよく言われます。しかし実際には、基本的なフレームワークをまとめ、それを自身のブランドや立場に置き換えた時にどう行動するかという指針を与えているだけでした。絶対的な答えはなく、あくまで軸やフレームがそこにあるだけです。
