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Web×マスの仕掛人

ポカリ若返り戦略成功の裏には「走りながら考えられる大塚製薬の柔軟さ」がある

 若返り戦略の成果もあり、売上が好調なポカリスエット。テレビCMとWebを絡めながら、中高生をターゲットにキャンペーンを展開し始めて、今年で4年になる。本稿では、このキャンペーンの仕掛人である電通の3人にインタビュー。これまでの経緯を振り返りながら、成功の要因を探っていく。

ポカリスエットの若返り戦略

【この記事で紹介するキャンペーン】

 大塚製薬がポカリスエットのリブランドを目的に、中高生をターゲットに展開しているキャンペーン。テレビCMと、「#ポカ写」から「#ポカ動」「ポカリスエットガチダンス選手権」へと発展していったデジタル施策を連携しながら展開した結果、売上拡大に成功している。

――はじめに、大塚製薬さんからどのような依頼があって、こういったキャンペーンの実施に至ったのかを教えて下さい。

正親:ポカリスエットのテレビCMは、5年ほど前まで「水よりも、ヒトの身体に近い水。」といったCMコピーに代表されるように、商品の機能をメインに訴求していました。その結果、“風邪の時に飲むもの”“熱中症対策”などのイメージが強くなってしまった。また今の40代は、1988年に宮沢りえさんを起用したテレビCMから始まるポカリスエットのキャンペーンガール路線の黄金時代を経た世代です。ですので、この世代には、昔からのファンがいる。一方、今の若い人達には何もメッセージを発信しておらず、このまま彼らが大人になることへの危機感がありました。

 こうした背景から、「潜在能力を引き出せ。」「自分は、きっと想像以上だ。」といったコピーを打ち出してポカリスエットのブランドイメージを変えるとともに、中高生をターゲットにブランドの若返りを図りました。

電通 CDC 正親篤氏/アートディレクターとして、現場の責任者を担当
電通 CDC 正親篤氏。アートディレクターとして、現場の責任者を担当

――老舗ブランドを若い世代にプロモーションするのは、難しいイメージがあります。

正親:ポカリスエットには“ヒロイン”という昔からの資産があります。それを最大限に活かせば良かったので、そんなに大変ではありませんでしたね。ただ、「昔のテレビCMは良かった……」という声も上の世代でありました。ですが、昔と同じことをやっても今の若い子たちにウケる気がしなかったので、何を足して何を引けば良いのかは考えました。

大塚製薬の懐の深さと柔軟さ

――ここで一連のキャンペーンを順に整理したいのですが、詳しくお話いただけますか?

眞鍋:2015年に中条あやみさんを起用したテレビCMから、今のチームでのキャンペーン展開がスタートしました。僕がデジタル担当としてチームに入った2016年に、八木莉可子さんがイメージガールに抜擢され、同じくして始まったのが#ポカ写というキャンペーンです。

電通 CRプランニング局 眞鍋亮平氏/キャンペーンの中のデジタル施策を担当
電通 CRプランニング局 眞鍋亮平氏。キャンペーンの中のデジタル施策を担当

 テレビCMで「潜在能力をひき出せ。」というコピーを打ち出していたので、「自分の潜在能力が引き出されていると思う写真を投稿してください」と伝えました。このキャンペーンが成功したので、今度は動画でやろうということになり、MixChannelで「#ポカ動 すごい!青春一発動画」を企画しました。投稿いただいた動画の中からいくつかをテレビCMにも採用することで、インセンティブを付けました(下動画が該当)。

 この当時からテレビCMは、ダンスをテーマにしていました。すると、Twitterなどで「ダンスのフルバージョンの音楽・振付を知りたい」という声があり、これはチャンスだと思ったんです。そこで「ポカリスエットガチダンス選手権」を企画。次は、テレビ朝日のミュージックステーションで1回限り放送されるテレビCMに出られるというインセンティブを付けました。テレビCMのテーマをデジタルにつなげ、最後にまたマスへ返すことができたマスとデジタルを一気通貫で立体的に設計することの効果を実感しました

 2年目はダンスがより難しくなった「ポカリ鬼ガチダンス選手権」を、3年目の今年は「ポカリガチダンスFES」というリアルイベントを開催しました。このように「#ポカ写」からずっとつながっているんですよね。

――最初からマス×Webで完璧に設計したというよりは、色々な企画が積み重なって、今のような大きなキャンペーンが創り上げられているんですね。

正親:大塚製薬さんの担当者の皆さんが、すごく懐の深い方たちで。良いと思ったものを走りながら決めてくれるんです。まずテレビCMをやってみて、エゴサーチなんかで反応を見てから、僕らが感じたことや思ったことを提案させてもらえる。非常に柔らかい感じで、進んでいったことが良かったと思います。

眞鍋:そういうクライアントさんでないと、こういったキャンペーンのやり方は中々うまくいきません。特にSNSを絡めたデジタル施策は、人の反応を見てチューニングしていく必要があります。

正親:1ヵ月前の正解が間違っていたりしますからね。この記事を読まれる方は、何か正解を求められているのかもしれませんが、「決め込まない」「走りながら考えることを受け入れる体制」のほうが大事だと思いますよ。

山本:1年のスケジュールをガチっと決めて実行するというこれまでの形式にとらわれた仕事のやり方ではなく、大きな方向を決めた後は、成功している種をいち早く見つけて、それをすぐに企画にしていく。そういう不安定だけれど、柔軟な状態でスピード感を持って仕事をしていくことが、ヒットの確立を上げるうえで、とても大事なんだということを改めて勉強しました。

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この記事の著者

松崎 美紗子(編集部)(マツザキ ミサコ)

1995年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、新卒で翔泳社に入社。新入社員として、日々奮闘中です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/12/05 09:00 https://markezine.jp/article/detail/29649

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