SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

気になる広告クリエイティブをPick Up!

「どう広げるかよりも、どう残すか」コンテンツプランナー眞鍋氏に聞いた、これからの広告作り


「何も起こらない」のに「心に残る」動画広告

――眞鍋さんが手がけられたもの以外で、ここ最近一番心が動いた広告コンテンツはなんでしょうか?

眞鍋:ちょっと長くなるかもしれませんが、いいですか?(笑)

――お願いします(笑)。

眞鍋:『ホットペッパービューティー』のWeb動画「春」です。まずは見てください。

『春』(4:15からはメイキング)

――青春ですね……。

眞鍋:この動画のすごいところは、「何も事件が起こらない」ところなんです。人の心を動かすストーリーテリングの基本は、三幕構成と言われています。第一幕が登場人物や物語の設定を伝えるところで、第二幕目でその物語の課題・ゴールが示されそれに向かって進んでいき、第三幕でクライマックスを迎えゴールする。

 広告コンテンツは、通常第二幕から始まるんです。なぜなら、最初にキャッチーに見るべきゴールを示さないと、見てもらえないから。動画なら最初に「これがゴールです」というオチをチラ見せして、それをモチベーションに最後まで見てもらうという作りが王道。まさに、YouTuberの動画の作り方はそうですね。しかし、実は通常カットしてしまう第一幕が、とても大事なんじゃないかと最近気づいたんです

――どういうことでしょうか?

眞鍋:ストーリーより登場人物やその世界を愛せるかどうかで、それが心に残るコンテンツになるかが決まるんじゃないかと。たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも『スター・ウォーズ』でもそうです。作品を見てから時間が経って、細かなストーリーを忘れてしまっても、その映画の存在は忘れないですよね? そして、もう一度観たいと思う。だから、コンテンツが心に残るかどうかは第一幕の効果で決まるんじゃないかと。だから、第二幕から始める広告は、なかなか心に残らない

 もちろん、広告はまず見てもらわないといけないので、最初にわかりやすいゴールを提示して上げるというのは、それはそれで正しい判断なんですけど。でも、この「春」という広告コンテンツは、第一幕だけで完結している。世界観と登場人物のキャラクター、物語へと続く導入部分の会話だけで広告を構成しているのがとても印象的でした。

「広げる」から「残る」広告へ

――1幕だけの広告、というのはこれまでなかったのでしょうか?

眞鍋:過去を振り返ってみると、3年前に紹介したサガミオリジナルの「LOVE DISTANCE」(参考)も、ネット中継という仕組みで、一幕で大事な主人公を知るフェーズをリアルタイムに体験できる仕組みになっていました。でも、一幕をしっかり描いている広告はまだまだとても少ないのではないのでしょうか?

 今回、この広告コンテンツに出会って、僕自身すごく心に刺さったんですよ。SNSでもすごく大きな反響を得ていて、「ああ、ありなんだ」と思いましたね。

――一幕だけの広告、今後挑戦していこうと思いますか?

眞鍋:そうですね、「一幕をどう表現していくか」というところはすごく興味があります。広告は水物なので、「どうしたら広告を残していけるのか」というのは気になる。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

眞鍋:今の話につながりますが、現在、広告は「どれだけ多くの人に見てもらえるか」というところが大事にされています。僕自身もそこにチャレンジしてきた。でも、これからは「どう広げるのか」よりも、「どう残していくか」というところに挑戦していきたいと思っています。

 アドテクの進化でターゲティング精度が向上し、パーソナルなものを提供できるようになりました。であれば、その人に対してどれだけ印象づけられるか、残していけるか。それが、これからの広告コンテンツにとって大事なところだと思います。

――どうもありがとうございました。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
気になる広告クリエイティブをPick Up!連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

福島 芽生(編集部)(フクシマ メイ)

MarkeZine副編集長。1993年生まれ、島根県出身。早稲田大学文学部を卒業後、書籍編集を経て翔泳社・MarkeZine編集部へ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2018/12/28 16:20 https://markezine.jp/article/detail/29755

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング