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ウォルマートのアドレッサブルTV活用事例など、プログラマティック広告最新動向を紹介

マーケターはビジネスをドライブする最適解を模索している

 アドレッサブルTVの増加にともなってテレビCMの定量的な効果測定が可能になってきている一方で、OTT(オーバー・ザ・トップ)も含めた統合的なキャンペーン管理並びに効果測定は将来的に可能になるのでしょうか。

 「Untangling Video Measurement」と題されたパネルディスカッションでは、セルサイド、バイサイドはもちろんのこと、視聴率データの提供や市場分析を行うプレーヤーの視点も含め、統合的な効果測定に関するディスカッションが繰り広げられました。

「Untangling Video Measurement」の様子

 冒頭、モデレーターのRyan Joe氏(写真一番左)からゲストに対して、テレビCM並びにOTT含め共通通貨(Common currency)、すなわち広告枠を購入・提供するにあたっての共通単位や効果測定の導入は可能かという質問がありました。

 テレビの視聴データに基づいたオーディエンス・インサイトを提供するComscoreのCEOであるBryan Wiener氏(写真左から2番目、以下Bryan氏)は、容易ではないが、業界全体で協力すれば実現自体は可能だといいます。

 OTT含めたプレミアム在庫に特化した広告プラットフォームを提供するtrue[x]のリサーチ部門のSVPであるJamie Auslander氏(写真中央)は、共通通貨は標準化によって可能となる一方で、質(Quality)と量(Quantity)は分けて考えるべきだと言います。テレビやOTTにおいてもプレミアム枠とそうでない枠が存在し、それらを一緒くたにすることにより、枠のコモディティ化が発生することを危惧している発言と受け取れました。

 セルサイドにあたるNBC Universalで事業推進・戦略部門のEVPであるKrishan Bhatia氏(写真右から2番目、以下Krishan氏)は、視聴データという共通通貨はあるものの、効果測定という観点では測定ツールを提供するベンダーに依存するところがあり難しいという見解を示していました。

 調査会社のNielsenでプロダクト部門のSVPであるKelly Abcarian氏(写真一番右)は、共通通貨はバイサイドとセルサイド間で設定可能であり、効果測定に関してはベンダーの選定含めマーケターの手に委ねられるといいます。

 では、上記で議論された共通通貨の実現を加速させるためのポイントはなんでしょうか。Bryan氏は、枠を購入する当事者である(Bryan氏の言葉を借りればPurchase powerを持つ)マーケターが鍵となると言い切ります。マーケターはビジネスをドライブさせるための最適解をテレビ・デジタルを問わず模索しており、彼らにとって魅力的であることが重要だといいます。

 Krishan氏も、セルサイドの観点からBryan氏と似た見解をもっており、他のエコシステム、たとえばデジタルにおけるプログラマティック広告と戦っていることを意識しなければならないといいます。テレビ業界の一員として変わっていかなければならないという意識のもと、複数のパブリッシャーを横断して共通のオーディエンスターゲティングを可能にするOpen APへの他企業の参加を促しているといいます。

プラットフォームとしてのパブリッシャーの在り方

 テレビ業界でもパブリッシャーの動きは活発ですが、デジタルの領域でも新たな取り組みが始まっています。Meredith Digitalのデータ・プログラマティックソリューション部門のSVPであるChip Schenck氏(以下、Chip氏)によるセッション「Building The Publishing Platform Of The Future」では、プラットフォームとしてのパブリッシャーの在り方が紹介されました。

「Building The Publishing Platform Of The Future」の様子

 2018年1月にMeredithが大手パブリッシャーのTimeを買収したことは記憶に新しいかと思います。この買収により、同社は米国の2億近いデジタルユーザーを抱える巨大メディアとなり、これはFacebookの北米における月間アクティブユーザー数(MAU)に迫る規模となります。

 Chip氏は、巨大メディアであるだけでは広告主に恩恵を与えることにはならず、新しいアセットの活用こそが重要であることを今回の買収から学んだといいます。そのうえで、アセットを最大限活用したプラットフォームの構想を紹介しました。

 プログラマティック広告に関しては、パブリッシャーはSSPやDMPを介して一部広告在庫やオーディエンスデータを広告主に提供し、広告主はDMPをターゲティングに活用してDSPで買い付けを行います。この場合、パブリッシャーはプラットフォームではなく、あくまでセルサイドという位置づけになるかと思います。

 Chip氏によれば、Meredithは従来のセルサイドからプラットフォームへの転換を今後目指していくとのことです。これによって、広告主はパブリッシャーの保有するアセットやコンテンツを最大限活用することが可能となり、ビジネスの成果を向上することができるといいます。

 一方で、プラットフォーム構想の実現のためにはアドテクベンダーとの協業(もしくは買収)が不可欠で、Chip氏はAT&TのAppNexus買収に触れ、Meredithもこの形を目指していくといいます。AT&Tは既に2018年9月に広告プラットフォームXandrを発表しており、AppNexusがXandrのプログラマティック化を進める中核になることは言うまでもありません。

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デジタル広告の成長が地殻変動を起こしている

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この記事の著者

高瀬 優(タカセ ユウ)

アタラ合同会社 コンサルタント。国際基督教大学(ICU)を卒業後、総合電機メーカーで自社製品の法人営業ならびに販売推進業務に従事。その後、自身がリーダーおよびマネジメントを務める音楽バンド活動に専念し、CDの全国流通や全国ツアー等積極的に活動を行う。2016年よりアタラに参画し、国内はもちろん、グローバルに事業を展...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/12/11 07:00 https://markezine.jp/article/detail/29825

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