「顧客体験」をタッチポイントごとにスコア化
商品・サービスの機能的価値での差別化が難しくなっている現在では、「顧客の状況に応じた『体験価値』をいかに適切に提供できているかが、企業競争力に直結していると言っても過言ではない」と冒頭で述べた小林圭一氏。
この「体験価値」を提供するためには、購入検討から購買までのあらゆる接点で、顧客ごとの思考・行動に合わせたコミュニケーションを設計していくことが必要となる。ここで重要となるのが、カスタマージャーニーマップをもとにした顧客体験の評価だ。
大日本印刷(以下、DNP)は、顧客体験を定量的に評価できるサービス「エモーショナル カスタマージャーニーマップ」を2018年1月にリリース。DNPは、かねてからカスタマージャーニーやペルソナ作成の支援を行ってきたが、同サービスは、各チャネルの顧客体験をスコアリングし、改善すべきポイントを可視化できる特徴を持つ。これによって、「顧客の声をもとに、次に打つべき施策の優先順位を決めていくことができる」と小林氏は述べた。
また、「顧客体験ニーズの傾向として、パーソナライズされた体験を欲している生活者が増え始めている」と小林氏は主張。ある調査では、パーソナライズされたオファーやサービスは、顧客の購買にポジティブに作用するという結果も出ているとのことだ。
「ビジネスを成長させる上で、お客様一人ひとりの体験価値に寄り添うようなパーソナライゼーションをしていくことが非常に重要な要素となってきています。お客様それぞれのコンテキストを捉えた、きめ細やかなコミュニケーションを実行することを目的としたデジタル基盤の整備、というトレンドがさらに加速していくのではないでしょうか」(小林氏)
デジタル基盤を実現する3つのフェーズとは
続いて小林氏は、デジタル基盤構築のためのポイントとして「Input」「Processing」「Output」の3つを挙げた。
1.「Input(データ収集)」
まず、デジタルを考える上で欠かせないのが「Input」、つまりデータの収集だ。ファーストパーティーデータの活用はもちろん、セカンド/サードパーティーデータも活用し、より顧客像をリッチにしていくことが重要だと小林氏は述べた。様々なデータがある中で、小林氏はいくつかのソリューションを紹介した。
1-1.「価値観クラスター」
はじめに小林氏が紹介したのは、DNPが独自開発した「価値観クラスター」を付与するサービス。同サービスでは、「価値観判別アンケート」を用いて、顧客がどのような価値観を持っているのかを導き出し、「価値観クラスター」のセグメントで顧客を分類。それぞれに適したコミュニケーションやクリエイティブデザインでアウトプット(施策)を実行することが可能になる。
ある食品系宅配業では、この「価値観クラスターのプロファイル(価格・健康どちらをより重視しているかなど)」を活用し、顧客それぞれに応じたチラシを送付したことで、結果的に売り上げが向上したそうだ。
1-2.「レシート(購買)データ」
2つ目に紹介されたのは、スマートフォンアプリを活用したデータ収集。DNPの家計簿アプリ「レシーピ!」では、顧客のレシートデータが収集できるため、様々な流通を横断した購買傾向の分析が行える。これによって、「どこで」という情報をもとにした店舗の買い回りを可視化できる。
1-3.自社のドメインをまたいだデータの利活用
その他、最近では、旅行業界横断で旅行者データを保有しているベンダーが登場してきている。こうしたデータを利活用することで自社ドメインを超えた範囲での顧客状況を把握できるため、より的確なコミュニケーションを実現することが可能になる。
「顧客に寄り添ったコミュニケーションを実現するためには、どんなデータを使えばいいか? という視点での思考が大切です」と小林氏は語った。